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【研究成果】新規脳内因子が過食と脂肪合成を促し肥満を引き起こすことを発見-エネルギー代謝調節に関わる脳内基盤の解明に貢献-

本研究成果のポイント

  • 研究代表者らが発見した脳内因子(Neurosecretory protein GLと命名、略名NPGL)が哺乳類のモデル動物であるラットにおいて、過食や肥満に関わることを世界で初めて発見しました。
  • これまでの研究では、NPGLが食欲調節に関わることまでを明らかにしていましたが、今回の研究では、食欲調節だけでなく、糖質を脂肪に変換し脂肪蓄積を促進するメカニズムに関与していることを解明しました。
  • NPGLは炭水化物摂取を促すため、今後、我々ヒトでの糖質制限の科学的理解や肥満対策の創薬への応用が期待できます。

概要

 広島大学大学院総合科学研究科の浮穴和義教授の研究グループは、米国カリフォルニア大学バークレー校、群馬大学、生理学研究所との共同研究によって、同グループが最近発見した新規脳内因子であるNeurosecretory protein GL(略名NPGL)について、ラットを用いて機能解析を行いました。その結果、以下の点を見出しました。

  1. NPGLは、高カロリー食摂餌下において過食を引き起こし、最終的には肥満に至ること。また、通常食摂餌下の摂食量がそれほど増えない場合においても、白色脂肪組織での脂肪合成を高めること。
  2. NPGLは、炭水化物の摂取量を増加させ、この炭水化物は脂肪合成の原料となること。
  3. NPGLを産生する細胞は、インスリンに応答し、血中インスリン量が低い状態(空腹や糖尿病状態下)でNPGLの発現が上昇し、脂肪蓄積を促進すること。
    ※インスリンも脂肪蓄積に関わる因子として知られている。

 哺乳類のラットから新しい摂食行動や脂肪蓄積を調節する脳内因子が発見されたことから、今後、ヒトの過食や肥満などのエネルギー代謝調節メカニズムの解明に繋がることが期待されます。

 本研究成果は、8月11日に英国の科学誌「eLife」のオンライン版に掲載されました。
 

ラットの脳内視床下部領域にNPGLが多く合成されるように処理すると、高カロリー食摂餌下において、摂食量が増加し過体重になることが分かりました。体重増加は脂肪量が増えたことが原因であり、早期に肥満が惹起されました。

論文情報

  • 掲載雑誌: eLife
  • タイトル: Neurosecretory protein GL stimulates food intake, de novo lipogenesis, and onset of obesity
  • 著者: Eiko Iwakoshi-Ukena*, Kenshiro Shikano*, Kunihiro Kondo, Shusuke Taniuchi, Megumi Furumitsu, Yuta Ochi, Tsutomu Sasaki, Shiki Okamoto, George E. Bentley, Lance J. Kriegsfeld, Yasuhiko Minokoshi, and Kazuyoshi Ukena(責任著者)*同一貢献度
  • DOI番号: 10.7554/eLife.28527.

eLife誌は、英国ウェルカムトラスト、米国ハワードヒューズ医学研究所、独国マックスプランク協会の支援により2012 年に新しく創刊された、生命科学・医学分野を対象とした非営利のオープンアクセスジャーナルです。

お問い合わせ先

広島大学大学院総合科学研究科
教授 浮穴 和義

E-mail:ukena*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)
※9月18日まで在外研究中のため、お問い合わせ先はメールのみとなります。予めご了承願います。


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