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【研究成果】土石流発生リスクを地下水の温度で予測

本研究は、防災・減災研究センター 水文・気象災害グループの河原能久教授、内田龍彦准教授、北特任助教(当時、現(一財)河川情報センター)が東京建設コンサルタントとの共同研究で進めているものであり、詳細は以下の論文に掲載されています。
本研究は、読売新聞(7月5日)、日本経済新聞(8月19日)などでも紹介されています。

ポイント

  1. 平成30年7月豪雨時に、平成26年豪雨で土石流が発生した斜面で地下水位の上昇を観測し、水位上昇時に水温が低下することを明らかにしました。
  2. 豪雨時に基盤から表層斜面に水が供給されることを裏付ける貴重なデータであり、水温観測が崩壊予測に利用できる可能性を示します。

研究概要

防災・減災研究センターの水文・気象災害グループでは平成26年8月豪雨に土石流が発生した斜面において、平成27年から豪雨による土壌水分量や地下水位の時間変化を分析してきました(写真)。

降雨がある程度強くなると、地下水位が上昇するために、地盤内でも下から上に水分が広がっていきますが、通常は地表から地下に降りていく雨水によって地表面の熱が伝わっているために、地下水の温度は上昇します。

ところが、平成30年7月豪雨では地下水位上昇時に水温が急激に低下することが観測されました(図)。

これは、地下深いところにある岩盤内の水圧が高まって、岩盤から表層の風化層に冷たい水が供給されて地下水位が上昇したことを示しており、豪雨時に基盤から表層斜面に水が供給されることを裏付ける貴重なデータとなりました。

これらのことから、表層の水温の急激な低下は、地下深いところから表層にわき出た地下水により、表層の土を押し流して土石流を発生させる危険度を急激に増大させると考えられ、水温観測が崩壊予測に利用できる可能性を示しています。

今後は観測地点を増やして検証を進め、土石流発生メカニズムの解明とその予測につなげていくことが課題です。

(写真) 平成26年8月豪雨に土石流が発生した源頭部

(図) 地表面から30cm、60cm、90cm下に設置された土壌水分計による温度変化の計測値

論文情報

論文題目:土石流危険度予測のための源頭部における豪雨時の雨水浸透過程に関する研究
著      者:小橋力也、北真人、内田龍彦、梶昭仁、宮田英樹、河原能久
掲載雑誌:河川技術論文集、第25巻、pp.669-674、2019年6月

お問い合わせ先

広島大学 工学研究科
准教授 内田 龍彦
TEL:082-424-7847
E-mail:utida*hiroshima-u.ac.jp (注:*は半角@に置き換えてください)


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