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【研究成果】乳児期に抗NMDAR脳炎を発症したIRAK4欠損症を発見~早期発症の抗NMDAR脳炎と、遺伝的な免疫異常との関連性を示唆~

本研究成果のポイント

  • 抗NMDAR脳炎(※1)を発症したIRAK4欠損症(※2)症例を、世界で初めて同定しました。
  • IRAK4 遺伝子変異が持つ病的意義を簡便かつ正確に検討する方法を世界に先駆けて確立しました。
  • 本研究により、乳児期発症の抗NMDAR脳炎の一部は、先天的な免疫異常に基づいて発症する可能性が示唆されました。

概要

IRAK4はTLR(Toll like receptor)(※3)のシグナル伝達を介在し、宿主の感染防御を担う分子です。IRAK4欠損症はIRAK4 遺伝子の異常によって起こる稀な疾患で、本邦では10家系程度が確認されています。乳児期から肺炎球菌、ブドウ球菌などによる重症感染症を起こし、死亡率が高いため、早期診断と予防投薬を含む感染症対策が極めて重要となる疾患です。

抗NMDAR脳炎は、不安、抑うつ、幻覚妄想などの精神症状を示す脳炎で、発症に自己免疫が関与します。重症例では、痙攣、中枢性低換気、遷延性意識障害などが起こります。若年女性の卵巣奇形腫に伴うことが多く、乳児期の発症は極めて稀です。

岡田賢(広島大学大学院医系科学研究科小児科学教授)、小林正夫(同名誉教授)、西村志帆(同大学院生)らの研究グループは、東京医科歯科大学、岐阜大学、筑波大学、かずさDNA研究所、及び、St. Giles Laboratory of Human Genetics of Infectious Diseases(ロックフェラー大学)との共同研究により、抗NMDAR脳炎を発症したIRAK4欠損症症例を、世界に先駆けて同定することに成功しました。さらに本症例の解析を契機に、IRAK4 遺伝子の変異がIRAK4の機能に及ぼす影響を簡便かつ正確に評価する手法を確立しました。本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業のサポートを受けて実施いたしました。

岡田賢(広島大学大学院医系科学研究科小児科学教授)、小林正夫(同名誉教授)、西村志帆(同大学院生)らの研究グループは、東京医科歯科大学、岐阜大学、筑波大学、かずさDNA研究所、及び、St. Giles Laboratory of Human Genetics of Infectious Diseases(ロックフェラー大学)との共同研究により、抗NMDAR脳炎を発症したIRAK4欠損症症例を、世界に先駆けて同定することに成功しました。さらに本症例の解析を契機に、IRAK4 遺伝子の変異がIRAK4の機能に及ぼす影響を簡便かつ正確に評価する手法を確立しました。本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業のサポートを受けて実施いたしました。

本研究成果は、「Journal of Clinical Immunology」で公開されました。

(図1)  TLR4を刺激するLPSに対する反応性障害の確認
血液細胞(CD14陽性単球)においてLPS刺激によって産生されるTNF-αを測定した。その結果、TNF-α産生の著しい障害が患者細胞(patient)で認められた。

用語解説

(※1) 抗NMDAR脳炎
不安、抑うつ、幻覚妄想などの精神症状を特徴とする脳炎で、重症例は痙攣、中枢性低換気、遷延性意識障害などを発症します。本症は、卵巣奇形腫を認める若年女性に多く認め、発症に際して獲得免疫の関与が強く疑われています。

(※2) IRAK4欠損症
常染色体劣性遺伝形式をとる非常にまれな疾患で、肺炎球菌、ブドウ球菌などによる重篤かつ全身性の細菌感染症を好発します。感染症発症早期から適切な治療をしても救命できない重症例が多く存在することから、早期に診断して細菌感染症を適切に予防することが極めて重要である疾患です。

(※3) TLR
細菌やウイルスなどの特徴的な構造(分子パターン)を見分けるセンサーで、主にマクロファージや樹状細胞などの自然免疫系の細胞が持っています。

論文情報

  • 掲載誌: Journal of Clinical Immunology
  • 論文タイトル: IRAK4 deficiency presenting with anti-NMDAR encephalitis and HHV6 reactivation
  • 著者名: Shiho Nishimura, Yoshiyuki Kobayashi, Hidenori Ohnishi, Kunihiko Moriya, Miyuki Tsumura, Sonoko Sakata, Yoko Mizoguchi, Hidetoshi Takada, Zenichiro Kato, Vanessa Sancho-Shimizu, Capucine Picard, Sarosh R Irani, Osamu Ohara, Jean-Laurent Casanova, Anne Puel, Nobutsune Ishikawa, Satoshi Okada*, Masao Kobayashi
    *Corresponding Author (責任著者)
  • DOI: 10.1007/s10875-020-00874-8
【お問い合わせ先】

<研究に関すること>
広島大学 大学院医系科学研究科 小児科学 
教授 岡田 賢
TEL: 082-257-5212
E-mail: sokada*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)

<報道に関すること>
広島大学 財務・総務室広報部広報グループ
TEL: 082-424-3701
E-mail: koho*office.hiroshima-u.ac.jp (注:*は半角@に置き換えてください)

<AMED事業に関すること>
日本医療研究開発機構(AMED)
ゲノム・データ基盤事業部医療技術研究開発課
難治性疾患実用化研究事業
E-mail: nambyo-r*amed.go.jp (注:*は半角@に置き換えてください)


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