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【研究成果】希少疾患「RelA異常症」のタイプを見分ける新しい法則の発見 〜重症度の見極めや治療選択の手がかりとなる可能性〜

本研究成果のポイント

  • 免疫や炎症の調整に異常が生じる希少疾患「RelA(レルエー)異常症」において、遺伝子の変異が起きる場所をもとに、症状の特徴を見分ける新しい指標を初めて確立しました。

概要

 今回、岡田賢(広島大学大学院医系科学研究科小児科学 教授)、早川博子(同大学院生)、津村弥来(同研究員)らの研究グループは、RelA異常症で多く認められる、切断型タンパクを生じるRELA遺伝子(注1)の変異に着目して解析を行いました。その結果、RelA-HI(半量不全変異)(注2)とRelA-DN(優性阻害変異)(注3)の分子病態を分ける機能的な境界領域を同定しました。
 本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究支援(原発性免疫不全症の診断率向上に向けたCD45陽性細胞を用いたマルチオミックス解析の開発、網羅的ゲノム解析のデータ二次利用に基づく原発性免疫不全症の広域診断体制構築に直結するエビデンス創出研究)、医学系研究支援プログラム(広島・神戸・熊本 医療革新・研究共同推進イニシアティブ(HK²-MIRAI))、文部科学省・日本学術振興会科学研究費助成事業、地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)のサポートを受けて実施いたしました。
 本研究成果は、2026年3月13日(金)に「Journal of Allergy and Clinical Immunology(Q1)」で公開されました。
 また、本研究成果は広島大学から論文掲載料の助成を受けています。

発表論文

論文タイトル Discovering patterns in the pathological significance of non-missense deleterious variants in RELA
著者 Hiroko Hayakawa、Miyuki Tsumura、Takanori Utsumi、Hiroshi Nihira、Wei-Te Lei、Ryo Ogino、Giorgia Bucciol、Tomohiro Nakano、Kiyoko Amo、Kunihiko Moriya、Seiichi Hayakawa、Yoko Mizoguchi、Shuhei Karakawa、You-Ning Lin、Han-Po Shih、Chia-Chi Lo、Sunita Janssens-Willen、Sien Van Loo、Djalila Mekahli、Dusan Bogunovic、Stephanie Boisson-Dupuis、Kazushi Izawa、Cheng-Lung Ku、Takahiro Yasumi Takaki Asano、Isabelle Meyts、and Satoshi Okada*
*Corresponding Author(責任著者)
掲載雑誌 Journal of Allergy and Clinical Immunology
DOI番号 10.1016/j.jaci.2026.01.020

背景

  RelA異常症は、体の免疫や炎症の調整がうまくいかなくなる病気です。世界でも報告数が少ない希少疾患で、これまでに17家系45人が確認されています。
 私たちの体では、感染や炎症が起こると、NF-κBシグナル経路(注4)という細胞内の情報伝達の仕組みが働き、免疫や炎症の調整が行われます(図1)。RelAは、このNF-κBシグナル経路で重要な役割を担うタンパク質の一つです。
 RelA異常症は、RelAをつくるRELA遺伝子に変異が起きることで、RelAが正常につくられなくなり、免疫や炎症の調整がうまくいかなくなる病気です。RELA遺伝子の変異はこれまでに13種類見つかっています。
 RelA異常症には、RelA-HI(半量不全変異)とRelA-DN(優性阻害変異)の2つのタイプがあります。RelA-HIは、異常なRelAが正常なRelAと結合することができないタイプで、慢性的な粘膜の潰瘍や自己免疫疾患が主な症状です。一方、RelA-DNは、異常なRelAが正常なRelAと結合して、正常なRelAの働きを阻害するタイプで、これらの症状に加えて、周期的な発熱、強い皮膚炎や腸炎など、より強い炎症症状を示すため、RelA-HIよりも重篤と考えられています。
 また、これまでの研究から、RELA遺伝子に変異が起きると、多くの場合、短く切断されたRelA(切断型タンパク)を生じることが分かっています。

<図1>NF-κBシグナル経路と、RelA異常症における半量不全変異および優性阻害変異が引き起こす病態

研究成果の内容

 今回、新たに見つかったRelA異常症の患者5家系8人を対象にRELA遺伝子の解析を行いました。その結果と、これまでの報告をあわせて検討したところ、切断型タンパクでは、「切断された位置」によって、RelA-HIとRelA-DNの2つのタイプに分かれる分岐点があるのではないかと推測しました(図2)。そこで、切断型タンパクを人工的にたくさん作り出し、詳細に解析しました。その結果、RELA遺伝子の前半(N末端側)で切れるとRelA-HIに、後半(C末端側)で切れるとRelA-DNとなることが分かりました。さらに、これら2つのタイプを分ける境目は「アミノ酸P290」付近にあることが分かりました(図3)。

<図2>RelA-HIとRelA-DNの分子病態を分ける機能的分岐点の可能性

<図3>RelA-HIとRelA-DNを分ける機能的分岐点の同定

今後の展開

 本研究により、切断型のRelAタンパクを作るRELA遺伝子変異では、「切断された位置」を手がかりに病気のタイプを見分けることができる可能性が示されました。これにより、今後新しく見つかるRELA遺伝子変異の患者さんでも、より早く診断し、その人に合った治療を選びやすくなることが期待されます。

用語解説

注1.    RELA遺伝子:炎症や細胞増殖を制御する NF-κB シグナル経路の重要な因子である、RelA タンパクをコードする遺伝子です。
注2.    半量不全変異:遺伝子の一部が欠損または機能しないことで、作られるタンパクが十分に機能せず、正常に働くタンパクの量が不足することで病気を生じる状態を指します。
注3.    優性阻害変異:遺伝子変異によって生じた変異タンパクが、正常タンパクの機能を妨げることで病気を生じる状態を指します。
注4.    NF-κBシグナル経路:免疫や炎症反応、細胞の増殖や生存を調節するために働く、細胞内の情報伝達の仕組みです。生体防御に不可欠である一方、その異常は自己免疫疾患や炎症性疾患などの発症に関与することが知られています。

【お問い合わせ先】

(研究に関すること)
広島大学 大学院医系科学研究科 小児科学 教授  岡田 賢
Tel:082-257-5212 FAX:082-257-5214
E-mail:sokada@hiroshima-u.ac.jp

(広報に関すること)
広島大学 広報室
〒739-8511 東広島市鏡山1-3-2
TEL:082-424-4383 FAX:082-424-6040
E-mail: koho@office.hiroshima-u.ac.jp


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