文学研究科(日本・中国文学語学専攻)

ダルミ カタリン

ダルミ カタリン ハンガリー出身

○2013.4~2014.3 研究生
○2014.4~ 文学研究科博士課程後期

 

1. 広島大学を選んだ理由は何ですか?

私はハンガリーの大学で日本学(日本語、日本文学、日本史や日本文化)について3年間勉強しました。その後、ハンガリーの大学院に進学し、日本学、主に日本文学を研究しました。子供の頃から日本に関心があり、また読書が大好きなので日本文学に興味がありました。ハンガリーでは今でも日本文学の専門書を手に入れることは難しいです。「もっと専門書を読んで日本文学を探究したい!」という気持ちが大きくなり、日本へ留学することにしました。

日本への留学は広島大学以前に2回あります。1回目は2008年。6週間のショートプログラムで、日本語や日本文化の授業を受けました。このときの旅行で、初めて広島を訪れました。2回目は、2010年。大分大学へ1年間の交換留学をしました。大学院(修士)修了後、文部科学省の奨学金に応募し、奨学金を受けて広島大学へ留学することになりました。

広島大学を選んだ理由は、現代日本文化に詳しい有元伸子先生がいらっしゃったからです。有元先生は私の研究対象である村上春樹に関する論文も書かれており、ぜひとも有元先生の下で研究したいと思っていました。「私の指導教員になってください」とメールを出して見ると、優しい返事をいただけました。

2. 研究内容について教えてください。

文献調査を中心に、文学の比較研究も含めつつ、近現代の日本文学について研究しています。具体的には、世界的に注目を集めている作家・村上春樹の文学を研究対象としています。村上春樹は日本だけでなく、海外でも人気が高く、日本の文学や文化を外国に紹介する際に大きな役割を果たしています。村上春樹の文学におけるポストモダニズムやマジックリアリズムの影響について考察しながら、村上春樹の表現する「バブル社会」「個人対社会」「アイデンティティ」の問題について研究しています。これまでは主に初期の作品を中心に研究してきましたが、そろそろ90年代の作品に移りたいと思います。例えば、90年代の大きな出来事であったオウム真理教の信者たちが起こした地下鉄サリン事件のテーマを取り扱っているインタビュー集『アンダーグランド』やその2年前に出版された長編『ねじまき鳥クロニクル』を対象とする予定です。

現在、ハンガリーを含めヨーロッパではこのような研究があまり行われていません。今後、ヨーロッパの学会に参加し、日本での研究成果をヨーロッパでどんどん紹介していきたいです。また、ヨーロッパで行われている研究を日本語に訳し、日本でも紹介したいと考えています。

3. 実際に日本に来てみてどうでしたか?また先生の指導はどうですか?

広島大学に来た当初は、慣れないことが多く、不安もありました。ゼミの発表準備、論文の書き方などがハンガリーのやり方と違っていたので、まず慣れる必要がありました。幸いにも、自分の周りの学生やチューターは優しく、私が困っているとすぐに手伝ってくれました。半年もするうちに、だんだんと慣れ、自分で資料検索や論文を書くことがスムーズにできるようになりました。今でも同じ研究室の仲間が私の日本語をチェックしてくれるので、すごくありがたいですし、恵まれた環境にいると感じています。また、研究生の頃は、日本語の勉強と友達作りをしようと思い、留学生向けの授業も受けていました。

指導教員の有元先生はとても優しい方で、研究はもちろん日々の生活に至るまで大世話になっています。月1、2回程度個人指導や勉強会を開催してくださっています。勉強会では、有元先生以外の日本文学を専門とする教員や学生が集まり、自分の研究について発表します。新しい視点を得ることができ、毎回とても勉強になっています。

先生とは宮島に日帰り旅行へ行った良い思い出があります。山を登り、瀬戸内海のきれいな風景を見て、美味しいアナゴ飯を食べました。広島大学に来たばかりの時でしたので、先生の心遣いがとても嬉しかったです。

4. 研究室の雰囲気はどのような感じですか?

一言でいえば、とてもアットホームな感じです。勉強だけでなく、一緒にコーヒーを飲んだり、お菓子を食べたりもする、心地よい研究室です。中国人の留学生と日本人の学生は半々で、去年の10月までスペイン人の留学生が1人いました。天気の良い日はバーベキューをしたり、クリスマス会なども開催します。もちろん、研究に必要な文献や設備も十分整っています。

5. 将来の目標について聞かせてください!

大学の教員として研究を続けながら、翻訳の仕事もしたいと思っています。日本の本や小説をハンガリー語に翻訳して、ハンガリー人に日本の魅力を紹介したいと思っています。私以外にも、日本に興味がある若者はとても多いので、ぜひ彼らに読んでもらいたいです。今の研究と未来の仕事が関連すれば、素敵ですね。

6. 日本へ留学を考えている後輩たちに、アドバイスをいただけますか?

広島大学は研究に専念するのに、とても適した環境だと思います。留学は、研究だけでなく友達をつくることも大切なことだと思います。日本人はもちろん、できるだけ多くの国の学生と交流を持ち、いろんな文化を経験すれば世界が変わって見えると思います。研究も自分の分野の授業だけでなく、チャンスがあれば日本語の他の分野の授業を受けるのも良いと思います。


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