第18回 アナスタシア・プストフスキーフ(ロシア)

「どんなことがあってもそれは全ていいことになる」

名前:アナスタシア・プストフスキーフ
国籍:ロシア
研究:平和教育
所属:教育学研究科 学習開発基礎専修
趣味:ヨガ、サルサダンス、国際交流、旅行

今日はどうもありがとうございます。ご出身がハバロフスクと聞き、すごく珍しいなと思いました。日本ではまだまだロシアのことは知られていないですからね。いつ日本に来られたのですか?

2009年の4月に来ました。今年の4月でちょうど2年になります。でも、その前に何回も来たことがあります。例えば短期間でしたが、日露学生会議の参加者として、また青森県に子供グループの通訳者として参加したりしました。青森県とハバロフスク地方は友好協定を結んでいて、毎年子供のグループが日本と交流するんです。

広島に来られてどうでしたか?

西条は私にとっては一番いい所ですね。大阪や東京に行くとすごく疲れるので、西条は最高だと思います。広島市内はほんとにハバロフスクに似たところがあります。なんか懐かしいなと思いました。広島は大好きですね。広いし、人も優しいし、散歩をしても一人でも問題ないですね。落ち着くし、私にとってリラックスできる感じです。

ハバロフスク市はどういう街ですか?

モスクワに比べると割と小さい街ですけれど、人口は約60万人ですね。でもハバロフスクはとても綺麗な所です。アムール川という川があって、その岸辺にハバロフスクがあります。川を渡るとすぐ中国になります。国境はアムール川になっています。アムール川はハバロフスクでは幅が2、3キロもあって、ロシアで一番大きい川の一つです。

広い!(地図を見ながら)日本にも近いんですね!

そうです。中国にも日本にも。だから新潟まで2時間しかかからないです。去年から東京までの直行便もできました。だからほんとに日本は近い国なんです。それを言ったらみんなびっくりします。

ハバロフスクには日本の人もいるのですか?

います。日本の会社の支店や総領事館もありますし。あと私が卒業した極東国立人文大学にも毎年日本から先生が来られます。

大学では何を勉強されたのですか?

専攻は日本語と英語の教師だったので、日本語と英語と教育学を学びました。

どうして日本語に興味をもったのですか?

初めて日本に来たのは11歳のころでしたが、ちょうどハバロフスク市と新潟市が姉妹都市なので、交流等のいろいろなプログラムがありました。その参加者として初めて新潟に来ました。当時はロシアと日本のライフスタイルの違いにびっくりして、日本がこんなにすばらしい国だとは知りませんでした。ホームステイもしましたが、日本語は単語を話すぐらいでほとんどできませんでした。だから一言でも理解できた時は嬉しかったです。でもコミュニケーションを取るのは難しかったですね。だから日本語を勉強しようと決めました。11歳から学校や大学で勉強しているのに、まだまだ難しいです。

とても日本語が上手ですよ。11歳から日本語の勉強をされていたということですが、そういう学校があるのですか?

はい。私が通っていた学校では、日本語を勉強することができました。「ギムナジウム」といって、他の学校と指導要領は大体同じだけど、普通の学校は外国語が一つしかないですが、ギムナジウムはもうちょっとレベルが高いです。第一外国語と第二外国語の二つがあり、勉強の幅が広いですね。小・中・高の11年間ずっと同じ建物で勉強しました。

大学の時に通訳で日本に来たりして日本に留学したいと思ったのですか?

自分の国でどんなに勉強していても、やっぱりその国に行く機会がないと外国語というのは習得できないですね。それに日本に何回も行ったことはあるけれど、自分の専門分野を日本で勉強したかったです。しかも日本の文化の知識やイメージは ありましたが、本を読むだけでなく自分で見ないと分からないですよね。今年、友達に誘われて初めて日本風のお正月を経験して、すごく嬉しかったです。おせち料理は聞いたことはあったけど、自分で見て自分で食べてみたら全く違いました。日本に留学することが私の夢でしたので、本当に幸せです。

なぜ広島大学を選ばれたのですか?

大学を卒業してから日本にくるまで2年間あったけど、日本総領事館の留学生アドバイザーとして勤めたり、大学の夜間学校で日本語を教えたりしました。実は広島大学は日本だけでなく、ロシアでもかなり有名です。広島大学は歴史があり、教育で有名なんです。だから広大にしました。文部科学省のプログラムでしたが、指導教員は自分で探さなければいけなかったので、いくつかの大学にメールを送りました。その中で広大の鈴木由美子先生がすぐに返事を下さって、広大に行けるのならここにしようと決めました!とても嬉しかったです。考えてみるともう2年経ちましたが、先月のことのように思えますね。

今は大学院でどういう研究をされているのですか?

教育学研究科の学習開発基礎専修というところで勉強しています。私の研究は平和教育に関する研究です。広島に来て平和公園や資料館など何回も行ったことあるのですが、平和教育はロシアにほとんどありません。ロシア人の友達に平和教育と言っても理解できないと思います。私も平和教育はロシア語で何と言うのかと悩んでいました。やはり伝えないといけない、という意識になりました。もともとロシアの大学での専門は教育学だから教えたいという気持ちもあり、できればロシアの子供に教える為の教材、平和教材を作りたいと思います。今は教材作成までいかなくても、ワークシートを作るとか何かできればと思っています。やってみると、とてもおもしろいです。最初は予備調査をやって、ロシアの子供と日本人の子供に平和って何だろう?戦争って何だろう?というイメージについて聞きました。やっぱり考え方もイメージも違いますね。同じ点もありますが、大きな差もありました。もしロシアで平和について教えるのなら、日本の平和教育をモデルにしたいですけど、ロシア人の考え方などにその平和教育をどう合わせれば良いか、と今いろいろ考えています。難しいけどおもしろいです。

どう違いますか?ロシアと日本の子供の意識はどうですか?

例えば平和のイメージだと、日本の子供は割と具体的な考え方を示しますよね。平和ならハートとか鶴とかといった具体的な物です。でもロシアの子供はもっと一般的な考え方。平和なら愛、尊敬とか、ハーモニーとか。

それはおもしろいですね。

でも意外と似ているところもありますね。私は完全に違うかと思いましたが、同じような愛や家族、青空とかもあります。ただ、それらの割合が違います。なんか講義みたいになってきましたね!(笑)

平和は人の価値観によるものだから先生が教え込むものでもないですよね。そうなると教材とかはどういうものを作るのですか?

ロシアの大学での論文テーマは「自己学習」というテーマでしたから、ワークシートなどを使って、子供に教えこむのではなく考えさせるようにしたいです。たとえば、考えさせる質問や自分の経験とかを思い出して「自分の意見はどうですか?」というように、いろいろ子供たちで話し合って意見を言えるようなものを作りたいです。平和って戦争がないということだけではなくて、もともと小さい頃から持っている平和観を広げるとか、お互いケンカがないというのも平和だよ。というようないろいろな考え方がありますから、それをロシアの子供に考えさせたいです。ロシアでも子供に考えさせる授業というのはあると思いますが、 やはり平和という話はあまりしないでしょう。考え方が完全に違いますね。日本は特に広島県はピースメッセージがありますね。だからみんなは、平和になるために、何をすればいいかとなんとなく分かると思います。しかし、ロシアはまだまだ軍隊もあるので、意識もあまり平和的と言えないかもしれません。たとえ ば、ロシア人の子どもは、世界は平和になるため、軍隊が必要という意識があります。私はそれを変えていきたいですが、難しいです。

そういう日本の平和というのをロシア語に翻訳するのは難しいですか?

翻訳そのものはそんなに難しいことはないと思うけど、考え方に違いがあるからそのまま訳せないと思います。だから自分の民族の考え方に沿っていないと通じない可能性はあります。

それだけ日本語もロシア語もできて、日本の平和の考え方も理解されているので、ロシアでこの考え方をうまく伝えていければいいですね。

できれば!でもまだ勉強中ですから、今は平和を教える自信はないですね。まだあと一年ありますから。最初はマスターだけだと本当に時間が足りないと思ったのでドクターまでいこうかなって思ったけど、今教えていかないと習ったことを忘れるかもしれないという考え方に変わりました。ドクターに行くよりもロシアに帰ったら習ったことを伝え、教えたいと思っています。若いうちに、エネルギーがあるうちに教えないとね!(笑)

研究も忙しいと思いますが、研究以外にも大学生活はどうですか?

やっぱり大学生活は楽しいですね。ロシアの大学生の頃も楽しかったし、日本に来てまた学生生活に戻れて懐かしいです。学生だからこそいろいろなことが出来ると思います。だからずっといろいろな活動に参加しています。ヨガ、サルサ、小学校に時々行ってロシアを紹介して、ロシアの遊びを一緒にしたりするのでそれも楽しいです。あとテレビのリポーターもやりました。

リポーターはどういう仕事でしたか?

「レッツ東広島」という番組があって、そのなかで東広島のいろいろな場所に行って、お祭りや社会生活など紹介しました。東広島は広いので車がないと普段は行けません。だからこの番組を通して多くの場所に行けたので本当に幸せです。安芸津ならじゃがいもとか牡蠣が有名でしょ。それに広島県に住んでいる人たちと直接関わって広島弁を聞いたり、おじいさんやおばあさんと話したりするのは楽しいですね。普通の学生はこんなチャンスはないと思います。(自分の)日本 語ができるかどうかも心配だったんですけれど、みんな本当に優しいからすぐ親しくなって打ち解けました。私もいろんな人に出会うことが大好きですから、毎回「ああ今日もすばらしい日になるといいな。今日も誰か新しい人に会えるかな。」という考え方でいます。不思議でしょう。(笑)

すてきですね!こちらまで幸せになりそうです!

私の性格で、ロシアでもいつも同じところにずっといるのは苦手でした。だからハバロフスクでも交流プロジェクトに参加しました。日本に来る時は、何か参加できる活動があるかなとちょっと不安でしたけど、日本ではとても活動的な生活ができています。時間があればバスとか安い方法で旅行に行きます。日本にいる間にいろんな所に行きたいですね。

こんなに日本を楽しんでくれると嬉しいですね。留学を考えている人へのアドバイスはありますか?

私も日本に来た時は一週間くらいホームシックで、もう生活できないかなって思ったんです。でも一番大事なことはやはり心を広げること。そうすれば友達もすぐ出来るし、生活も楽しくなります。(留学の期間が)3ヶ月でも半年でも1年でも3年でもあまり関係ない。留学に来た時は楽しんでください、というのが私のアドバイスです。チャンスを活かして多くの人と関わっていろいろな所に行って、「日本の生活は楽しい」「幸せ」「日本に来てよかった」という意識を持ってほしいです。もちろんそれは日本だけではなく、留学生はどこでもそうなんですけど。特に日本はこんなにすばらしい文化もあり、子供から大人までどこに行っても皆優しく、笑顔で親切にしてくれます。だから日本に留学できることは幸せだと思ってほしいですね。

今、日本人は日本でも十分楽しめるからとか、就活活動を控えて不安だとか、内向きだと言われているのですが。そういう日本の学生にメッセージはありますか?

その気持ちはよく分かります。私も卒業してすぐ仕事に就いて、これで安定、安全という意識がありましたが、日本に行くと決まった時はこれからどうなるのか、日本から帰ってきて仕事があるのかいろいろ心配でした。それは当たり前のことだと思います。でも自分の国の文化は自分の国に住んでいるから全部知っていると考えるかもしれませんが、外国に行くとまだまだ(自分の文化について)知らないことに気づかされます。私も初めて日本にこんなに長く滞在して、いろいろな国の人に「ロシアってどうですか?」とか「ニュースで見たけど、これは本当ですか?」などいろいろな分野の質問をされました。やはり私の文化や国についてまだまだ知らないということが分かりました。留学で新たな経験、生活を楽しめますし、自国と留学先とで比較できると改めて気づくことがあります。自分の文化のいい点だけでなく、もっと良くなってほしいことなど、海外に出て比較しないと分からないですからね。だから、どんなに不安でも留学に行った方がいいと思います。ロシア語にはよく使われる、私も大好きなあることわざがあって、「どんなことがあってもそれは全ていいことになる」というものです。だから必ずもっといい経験ができる、もっと良い方向に進む。という意識を持てば何でも出来ると思います!

本当にステキなアドバイスとメッセージをありがとうございました。こちらまで幸せな気分になりました。

いえいえ。ありがとうございました。

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