第28回 ジェナ・シェパードさん(カナダ)

「世界を変える力になりたい」

名前: ジェナ・シェパード
国籍: カナダ
所属: HUSA(セントメリーズ大学 国際開発学専攻)
趣味: ビデオゲーム、日本語の勉強、友だちと出かけること

(2015年1月15日にインタビュー)   

『留学生インタビュー』バックナンバー

        

初めて迎える日本の冬、いかがお過ごしですか。

冬休みには、HUSAプログラムの仲間二人と一緒に大阪に行ってきました。広島県外に出かけたのはこれが初めてでしたが、とても楽しかったです。大阪にもいつか住めたらいいな。滞在したのは大阪コリアタウン鶴橋にあるホテルです。駅から歩いていくと、ずっと韓国風の町並みが続いていて、日本にこういう風景があるのは面白いなと思いました。非常に興味深い体験でしたね。たこ焼きと大阪風お好み焼きにもトライしました。まあまあおいしかったけれど、私はもちろん、広島風お好み焼きの方が好きですよ。

故郷はどんなところですか。

私の故郷はカナダ・ノバスコシア州のシドニーです。「シドニー」というと、まず多くの方はオーストラリアの同名の都市を想像するかも知れませんが、違います。ケープ・ブレトンという島にある小都市です。都会に慣れた人には少し退屈なところかもしれませんが、ケープ・ブレトンはとても美しい島で、私はそこの出身であることを誇りに思います。春、夏、そして秋、いつ訪れても外れなしの素晴らしい所です。島には「カボット・トレイル」と呼ばれるドライブウェイが通っていて、ちょっと日本の山々の風景に似ているかな。とくに秋の移ろいゆく紅葉に彩られた自然豊かな山々を眺めながらのドライブは格別です。

それに、ノバスコシアにはアイルランドとスコットランドが入り交じった独特の伝統があります。住民の多くはその両方の文化の影響を受けています。私自身もそうです。アイルランド、スコットランドいずれのルーツか明らかではありませんが、おそらくはその両方が関わっているでしょうね。

地元の名産というと、正直すぐには思い浮かばないのですが、実はシドニー・クロスビーという超有名なアイスホッケー選手の生誕地がハリファックスなんですよ。それに、巨大な「フィドル」(バイオリンに似た弦楽器)も有名ですし、巡航客船が行き来する港もあります。しかし何といっても、私たち住民の「心」に勝る名物はありません。温かく思いやりのある住民がいつでも皆さんを歓迎しますよ!

カナダの大学では何を専攻していますか。

専攻は国際開発(International Development)です。私がとくに注目している点は、発展途上諸国が今なお現在のような状況に置かれているのはなぜか、アメリカや日本、カナダといった先進国と違い、なぜ発展への道があのように険しいのか。彼らを現状に行き詰まらせている原因を明らかにし、食料不足や水の確保といった諸問題を解決するための道を探ること。これは非常に難しい問題です。

(発展途上国の現状には)様々な要因があります。それらを理解するには、政治、文化そして経済的見解について広く研究する必要があります。さらには気候変動問題、地球温暖化といった環境影響が発展途上国の進路を阻んでいること、その影響の一部は先進諸国が現在に至るまでの発展の過程の中で生じたものであることも忘れてはなりません。つまり一種の因果関係ですね。本来ならばもっと繁栄を享受するべき国々が現状で足踏みせざるを得ないこの状況は、非常に嘆かわしいですね。    

留学先に広島を選んだのはなぜですか。

理由はいくつかあります。一つは、とても評判が良くて印象も良かったこと。二つ目の理由は、広島の歴史や、私の専門である国際開発研究にそれをどう活かせるかなどを考慮し、最初の留学先としては理想的だと思えたからです。例えば、平和を重んじるところですね。未だに摩擦の絶えない国際社会の中で、平和を推進する広島の存在はきわめて重要です。広島にいれば平和についても学べるし、東京のように大きすぎず、私にとって適度な規模の都市であることも魅力の一つでした。そういうわけで、留学するならここだなと思い、ついに人生初のパスポートを手にしたのです。2013年12月のことでした。

東広島の第一印象はどうでしたか。

「ここが日本なんだわ、わーお!」って(笑)。西条のショッピング・モールを歩きながら、期待に胸をふくらませていました。

どんな授業が興味深いですか。

私が楽しいなと思うのは、内容に興味が持てて、しかも先生が私たち学生と密に交流できるような授業です。つまり、ただ一方的に講義を聴くだけの授業よりも、双方向で話し合うほうが好きですね。教科でいうと日本語です。現在は日本語関係の授業を主に取っていますが、次の学期ではもっと別の形式の授業も取りたいなと思っています。

先生方の指導はいかがですか。

とても分かりやすいです。日本語のクラスでは、私たちが現在学習しているトピックに役立つような文章を組み立てる手助けを先生方がしてくださいますし、放課後には、その日習ったことを日本の友達との会話で使ってみたりもしています。とても楽しいです。

授業は日本語で行われるのですか。

私は「レベル2」、「レベル3」という二つのレベルのクラスを取っているのですが、レベル2では先生の講義は英語で行われ、私たちが話すのは日本語です。一方、レベル3では、先生方は主に日本語で講義をされるため、内容によっては分かりにくい部分もありますが、何とかついて行っています。

広島は、快適に学べる環境ですか。

とても良い環境だと思います。大学周辺の環境も理想的です。私は物事を先延ばしにする名人で、いつも勉強など後回しにしてしまうんですが、日本では滞在期間も限られていますから、モチベーションを維持しながら頑張っています。

日本の学生の学習態度についてどう思いますか。

私の印象としては、非常にまじめで勉強熱心という感じですね。日本人の友だちからは大学の勉強は気楽なものだと聞いていましたが、実際にはとても真摯に取り組んでいるなと思います。

ESSクラブに所属していますね。活動内容についてお聞かせください。

クラブでの私の役割は、日本人学生に英語のネイティブ・スピーカーとしてのアドバイスを与えることです。メンバーが英語で話したり書いたりする際、そばにいて色々な助言をします。

冬休み前には、私ともう一人のHUSAの友人とでクラブのためにゲームを企画しました。いくつかのグループに分かれ、単語の綴りが正しく言えるか手を挙げて発表するんです。私たちが教える英語をみんなとても楽しんでくれて、大いに盛り上がりました。

スポーツクラブでは、どんな活動をしているのですか。

主にバスケットボールです。中学の頃2年間やっていたのですが、あまり熱心なほうではありませんでした。でもまた日本の仲間と一緒にやるようになって、みんなが上手いねと感心してくれて、またバスケが楽しいなと思えるようになりました。私は長身なので、日本のみんなは私が何かスポーツをやっていたに違いないと思うようですが、実際はそうでもないんですよ。

学食の食事はどうですか。

とてもいいですね! おいしいし安いし、クオリティも高くて、もう感激です。お昼は毎日学食に通っています。ちなみに、カナダの私の大学にはいわゆる学食がありません。寮生だけがミール・プランを買うことができます。私はといえば、あまりそこの食事は好きではありませんでした。高価な上に口にあわなくて。でもここでは安くておいしいものが食べられます。

余暇は何をして過ごしますか。

たいていは友だちと過ごすか、自室で日本語の勉強をしていることが多いですね。あとはYouTubeで動画を見たり、ビデオゲームをしたり。しかし、一人で過ごすよりも友だちと一緒にいることが多いですね。もちろん、勉強は毎日やっています。

ところで、日本の女子のファッションについてどう思われますか。

ファッションですか(笑)? とても素敵だと思います。しかし私から見ると、あらかじめ幾つか決まったパターンがあって、そのどれかをなぞっているといった印象です。たとえば、セーターに色違いのスカートを合わせるとかね。それはそれで可愛いのですが、皆どこか似通っているなと感じます。それに、たいていどのお店にも決まったコンセプトがあって、違ったテイストがほしければ他の店に行く、というような。カナダでは服の品揃えもランダムで、各自どれでも好きなものを組み合わせて選びます。日本のファッションも素敵ですが、あまり私向きではないようですね。

それと、日本の年配の方々はカナダの同年代と比べてセンスがいいなと思います。例えば、私の父くらいの年代の方の着こなしが、父よりもずっと格好良くて。父はあまり服装にこだわるほうではないのですが、日本の方たちはとても気をつかっていて、そのせいか実年齢よりもずっと若く見えます。そういうのはいいなと思いました。私も年を重ねたら、あんなふうになりたいですね。

さて、これから国際化を目指す日本人、ジェナさんの目にはどのように映りますか。

そうですね、私に限って言えば、私がカナダ出身と知ると多くの人が決まって「寒いでしょう」と聞くんです。あまりカナダを知らない人にとっては「年中寒い」というイメージが強いのでしょうね。海外経験のある人ない人、様々でしたが、こういうのは国外での経験値によるところが大きいのかな。それに、メディアが海外を報じる際にも国ごとに特定の概念があるのかなと感じました。カナダといえば「寒い」とかね。しかし実際はそれだけではありません。カナダには春も夏も秋もあります。冬が寒いのは事実ですが、何というか・・・。

思い込み、でしょうか。他にも、カナダの人は皆アイススケートが得意で、誰もが「赤毛のアン」を知っている、とか?

そうです。ちなみに私はその本を読んだことがありません。アイススケートも得意ではありませんしね(笑)。そのような固定概念が色々あって、それらを変えていくことが、他国を正しく理解するためには必要ではないかなと私は思います。それともう一つ。日本では多くの人が私の髪をパーマだと思うようですが、これは天然です。ここでは聞かれるたびにいつも同じ説明をしなくてはならなくて。カナダでは誰も気にしません。「見事なカーリーヘアだね」って、それくらいかな。これが美容院でかけたパーマだと誤解している人は多いようですけどね。

留学を考えている友だちにアドバイスはありますか。

まず日本への留学を考えている人へ。日本語を学ぶにあたって何より大切なことは、自分を同じプログラムの仲間と比較しないこと。自信をなくしてしまいますからね。それからベストを尽くすこと。上達には時間がかかりますが、間違えることを怖がらないで、日本語で積極的に話すよう心がけること。

それから、カナダに来る方へ。ぜひサークルに所属することをお薦めします。私も、カナダと日本の文化交流に積極的に参加するようにしています。そうすれば、間違いなく他の人から話しかけられますから。自分の殻から抜け出して知らない人と交流するのは本当に勇気が要ることですが、カナダでは自分から話しに行けば、人々はちゃんと受け入れてくれます。文化交流のクラブに入ることも大きな収穫につながります。他文化に関心のある人々の集まりですから。積極的な姿勢も大切です。カナダでは社交性のある人は好意的に受け入れられますし、どんどん話しかけられるようになります。カナダは多文化国家ですから、あなたのことをおかしな人だなと思う人もいるかもしれませんが、そう思わない人もいるでしょう。カナダに行けば、色んな人に出会うチャンスが大きく広がりますよ。

ジェナさんの大学や地元は、とくに多様性あふれる環境のようですね。

はい。私の大学のあるハリファックスでは、学生の数も多いですから、シドニーにいるよりもずっと多種多様な文化に触れることができます。私は学内のCaribbean Society(カリビアン・ソサエティ)というクラブのメンバーなんですが、そこにはカナダ、ブラジル、日本、カリブ、韓国と色んな出身の仲間がいます。様々なバックグラウンドの友人と出会う機会がとても多いです。

私はカリビアン・ソサエティに加入して本当に良かったなと思います。というのも、初めて会合に参加した時、まるで一人でポンと外国に行ったような気分だったのですが、嬉しいことにメンバーは私を歓迎してくれました。ここ日本でも同じでした。みんな私に進んで話しかけてくれ、カナダについて質問してくれました。

ジェナさん、将来の夢は何ですか。

それは難しい質問ですね。人生においてやり遂げたいことはたくさんありますので。その中のひとつは国連で働くことです。何だかありきたりに聞こえるかもしれませんが、世界を変える力になりたい。私が思うに、この世界はそうあるべき理想の姿とはいえません。それをより良く変える力になりたいのです。この留学の当面の目標はといえば、日本語力をもっと磨くことです。日本語はカナダで3年間勉強しましたが、ここではもっと上達が早いなと感じています。

日本語力を将来にどのように活かしたいですか。

いつか日本のNGO(非政府組織)か政府組織で働けたらいいなと思っています。まだ漠然とした思いで、具体的ではありませんが。1年後、この留学を終えたら卒業後の進路について真剣に考えたいと思っています。いずれ日本にも戻ってきたいですしね。

本日はありがとうございました。最後に一言お願いします。

私は日本を選んで本当に良かったと思っています。日本に来ることは私の夢で、それがついにかなって幸せです。もちろん、広島を選んだことも、大正解でしたよ!

Photo Gallery

ホストファミリーの皆さん:
「広島県内のご家庭にホームステイさせていただいた時の写真です。ホストファミリーの皆さんと出会えて本当に楽しかった! また、近いうちにお会いしたいですね。」

宮島:
「宮島の絶景を満喫! 広島に住んでよかった!」

広島城:
「日本のお城を訪れるのはこれが初めて。美しさに感動です!」


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