第30回 許 雅琦(キョ ガキ)さん(台湾)

「がんばった自分に、いつか感謝する時がくる」

名前: 許 雅琦 (キョ ガキ)
出身: 台湾
所属: 総合科学研究科(博士課程前期1年)
趣味: 料理、旅行

(2015年7月16日にインタビュー)   

『留学生インタビュー』バックナンバー 

 

台湾では、きびしい夏の暑さをどう乗り切るのですか。

日本と同様、台湾でもアイスやかき氷など冷たい物が人気です。日本には自動販売機が多いですけど、台湾では街を歩くとあちこちにタピオカミルクティーやお茶などの飲み物を売るお店があります。コンビニにいくと、どら焼きにアイスをはさんだようなスイーツも売っています。それに、台湾のかき氷は絶品なんですよ! 日本だと削った氷の上に甘いシロップをかけるでしょう。台湾ではタピオカやナタデココ、緑豆といったトッピングの種類がとても豊富で、その中から好きな4種類を選んで注文すると日本円で120円くらい。安いでしょう?

ちなみに、台湾でも屋内はエアコンが効いていますからけっこう涼しいです。以前、北海道の友だちが台湾にいた時など、部屋ではずっと薄手のジャケットを着ていたくらいです。それに台湾にも冬はありますし、雪も降りますよ。高い山にだけですけどね。 

ふるさとは、どんなところですか。

南の高雄です。小学5年生の時に台北に移り、以来、広島に来るまでずっと台北に住んでいました。

日本を代表する風景といえば、多くの方が富士山を挙げますね。一方、小さな台湾にはたくさんの特別な風景があります。例えば、玉山(台湾の最高峰。富士山よりも高い。日本統治時代には新高山と呼ばれた)、阿里山(日の出が有名な山。檜の産地)、日月潭(台湾で最も大きな湖)、太魯閣(東部の断崖絶壁の奇勝)や、賑やかな夜市(夜店)、それに、なんといっても台湾の優しい人々! これら多くのもので台湾のイメージは構成されています。

夜市というのは、日本の夏祭りのようにたくさんの食べ物屋台が集まったところで、毎日営業しています。だいたい夕方4時か5時に開店して、夜中の1時くらいまでやっています。臭豆腐の屋台も人気です。日本の人は匂いがきつくて敬遠するかもしれませんが、ぜひ試してみてください。おいしいですよ。

日本に留学を決めたのはなぜですか。

私は台湾の大学で4年間日本語を専攻したのですが、やはり実際に日本に来て日本の生活を体験し、テキストからは学べないことを幅広く学びたいと思いました。それで、卒業後も3年間ほどは台湾の観光産業で働きながら勉強を続け、日本の留学試験を受けていました。3回目のチャレンジでみごと合格し、去年の4月から日本に来ることができました。

そもそも日本に興味をもったのは、沖縄に人生初の海外旅行に行った時のことです。沖縄の天候はすごく台湾と似ていますが、沖縄の人が話すのは日本語。それが面白いなと思いました。それに、小さい頃から見ていた日本のアニメの影響も大きかったですね。

台湾ではどんな仕事をしていたのですか。

添乗員と営業です。添乗員としての仕事は台湾人観光客を海外へ連れて行くことでした。行先はタイやマレーシアなどの東南アジアでしたから、仕事中は主に英語や中国語ばかりで日本語を使う機会がほとんどありませんでした。それで、いずれ日本へ留学することも視野に入れ、日本語をもっと活かしたいと思い、日本人向けの旅行会社に転職しました。台湾に来る日本人観光客を案内する仕事です。日本のお客様は礼儀正しくて優しい方ばかりでした。そこで出会って親しくなったお客様とは、今でも連絡を取りあっています。

日本に留学が決まって、その方々も喜んでくださったのでは。

はい。今も親しくしているお客様の中には85歳の女性の方もいて、よく手紙のやりとりをしているんですが、私が3月に東京に行った時などはその方のご自宅に泊まらせていただいたんです。その方のお宅は神奈川県ですが、実はそこから、小さい小さい富士山が見えるんですよ!

それは素敵ですね。ところで、日本に来てホームシックにはなりませんでしたか。

それは大丈夫。日本の生活にもすぐに慣れましたし。私は寮に住んでいるんですが、外国人留学生はもちろん、日本人の学部生の子もいっぱいいて、みんなとはすぐに仲良くなって一緒に料理を作ったりしていました。

専攻について教えてください。

専攻は観光です。具体的には観光学、人文地理学などの基礎知識を学んでいて、私は観光振興やまちづくりにも関心があるので、地域振興に関することも勉強しています。その他にも、地域調査の授業や先輩の調査を手伝いながら、さまざまな地域(しまなみ海道、兵庫県豊岡市、山陰海岸ジオパークなど)へ行って、観光客へのアンケート調査や住民の聞き取り調査をおこない、そこでアンケートやインタビューのテクニックも学びました。これらの活動により、それぞれの地域についてより一層深く認識することができますし、たいへん有意義で興味深い分野です。今の専攻はとても好きです。

広大の授業を受けた印象は?

そうですね、日本の授業時間は台湾(50分授業の後に休憩が10分)と比べて長いので、効率が良いぶん、集中力を保つのが大変ですね。

それに、私たち総合科学研究科M1の学生にはコア科目、つまり必ず取らなくてはならない科目があって、各6~7人ぐらいのグループに分かれて協力してレポートを作らなくてはなりません。私たちのグループは台湾人の私の他に中国人学生2人、日本人学生3人という構成ですが、日本人学生たちは詳細なことについて熱心に議論をすることが多いですね。このあいだ一緒にパワーポイント資料の修正をしていた時も、日本の学生たちは前日の授業の細かな内容について延々と討論していて、私たち留学生たちは、ちょっとついていけなくて。日本人学生と私たちは、今何をやるべきか、といった優先順位の感覚が違っているなと思いました。

その授業はディスカッションが多く、いつも同じメンバーで勉強していることもあって、意見の違いから討論になることもありますが、最終的にはお互い理解しあえるようにつとめます。そうすれば大丈夫。もちろん討論するばかりでなく、お互い良い所をほめあったりもしますよ(笑)。資料を作ったらプレゼンもやります。発表は日本語ですが、英語しかわからない方には英語を使用します。

日本人学生と学ぶ機会が多いのですか。

いいえ、私のゼミ室には日本人は少ないです。とくに昨年度は先生もドイツ人で、学生も韓国、ナイジェリア、ベトナム、中国、台湾と留学生ばかりでした。今年の4月からやっと1人日本人学生が仲間入りしたんですが、彼女は留学経験も豊富でプレゼンもとてもレベルが高くて、私も良い意味で刺激をもらっています。

現在の勉強を将来にどう活かしたいですか。

この留学を終えて台湾に戻ったら、観光産業で働きたいなと思っています。できれば観光局のようなところが希望です。

許さんは広島大学台湾留学生会の会長なのですね。

はい。会員は約15人ですが、うち一人はすでに教育学部の先生になっています。主な活動としては、この4月にはいつもお世話になっている社長さんに連れられて錦帯橋へお花見にも行きましたし、今年は新しいメンバーが3人加入したので歓迎会もやりました。他にもライオンズクラブの活動に参加したり、地元の歩く会(ウォーキングのイベント)、それに地元の新聞社の方と一緒に山登りとバーベキューも。この間のゆかたまつりにも参加しました。

イベントの他にも、生活面でお互いに支えあっています。たとえば新入生が来るという情報は広大との提携校、つまり台湾の場合は台湾国立中央大学や国立政治大学などですね、そういった大学の先輩たちが「今度私の後輩がそちらへ行くよ!」と紹介してくれて、紹介された学生はFacebookの秘密のグループに登録してそこで情報交換をするんです。

しかし提携校に先輩がいない学生の場合は見つかりにくいですね。たとえば今年の5月にも、私の中国人の友だちが、英語の授業を彼女と一緒に受けている台湾の学生をひとり見つけてくれたんですよ。その学生は、台湾留学生会の存在をそれまでまったく知らなくて。あともう1人、霞キャンパスの歯学部の学生で、私たちの存在を偶然Facebookで見つけて連絡をしてくれた子もいました。そんなふうに後から発見されるメンバーもいます。メンバー同士の情報交換は主にLINEやFacebookの秘密のグループでおこなっています。

そうやって連絡を密にとれるのは心強いですね。

そうですね。でも、あるHUSA(広島大学短期交換留学プログラム)の学生などは、一年間は絶対台湾へ戻らない!と決心していたのにホームシックになってしまって。それで一時帰国して、台湾でエネルギーを補充してから(笑)広島に戻ってきてくれたんですよ。台湾と日本は近いので、いつでも帰れますから。

我慢しすぎないことも大切ですね。ところで、オフの日には何をしていますか。

友だちと遊んだり、旅行とかですね。東京や北海道、沖縄の他に松山温泉や、城崎温泉にも行きました。城崎温泉の楽しみといえば「外湯」ですから、宿に温泉があってもゆかたを着て外へ出かけるのがいいですよね。私はああいった「温泉郷」の雰囲気が大好きなんです。

留学を考えている後輩へのアドバイスをお願いします。

広島の人々はとても親切で、留学生にも優しいです。たとえば広島県留学生活躍支援センターでは、広島県の留学生たちをサポートしてくれ、就職のためのセミナーなども主催しています。広島県はとても留学生受け入れに力を入れていると思います。そんな環境ですから、ぜひ広島に来てほしいなと思います。留学前の準備としては、できれば日本語をある程度は勉強してきてほしいです。

台湾から持ち込んだほうが良い物は?

それは人それぞれですね。私の場合は、台湾の調味料をたくさん持ち込みました。醤油膏(ジャンヨウガオ)、沙茶醤(サーチャージャン)、甜辣醤(テンラージャン)といった日本では入手しにくい調味料とかね。

観光産業で活躍したいという希望の他に、将来の夢はありますか。

あります!じつは、日本にいる3年間で、国内の47都道府県すべてを訪れたいと思っているんです。さっそく来月(8月)7日には琵琶湖の花火大会に行きますから、これで滋賀県は制覇ですよね(笑)。そんなふうに、各県一か所ずつでもいいから、全ての県を見て回りたいんです。

これまでの恩師の言葉で、心に残っている言葉はありますか。

「現在の自分に優しすぎると、将来の自分に残酷だ。」がんばった自分に、いつか感謝する時がくる。だから、いま努力することが大切なんだよ、という意味です。

厳しくて、しかも愛情にあふれた言葉ですね!最後に何かコメントがあればお願いします。

私が日本に来たときにはあまりカルチャーショックを感じませんでしたが、中には日本で寂しさを感じる留学生もいます。でもそれもまた、青春の過程の一部なんだと思います。その状況を乗り越えて自分の仲間を見つけ、がんばり続けることができれば、いつかその辛かった経験に感謝する日が来ると思います。

留学生活はその人にとってかけがえのない大切な時間ですが、悲しさ、寂しさも自分で乗り越えなくてはなりません。そのすべてを吸収して、将来の自分への糧にできるように、みんなと一緒にがんばっていきたいなと思います。

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