第5回 何 資宜(カ・シギ)さん(台湾)

「親切な人々に恵まれている」

名前:何 資宜(カ・シギ)
年齢:29
国籍:台湾
プログラム: 博士課程後期
専攻:総合科学研究科 文明科学部門
趣味:旅行(米国、バリ島、韓国、日本など)

『留学生インタビュー』バックナンバー

留学生Interviewの第5回は、総合科学研究科の文明科学部門、博士課程に在籍されている何資宜さんにお話を伺いました。何さんは、「学問は、最高の遊びである」という広島大学のキャッチコピーそのもののような方で、研究するときもリラックスするときも、いつも本を手にしています。笑顔がステキで明るい性格の何さんは、今、将来台湾で日本語の教師になるという夢に向かって勉強しています。彼女を研究に駆り立てるものは何なのか、また、どんなことが日本での生活の支えになっているのか、聞いてみました。

今日はインタビューさせて頂き、ありがとうございます。何さんは日本に来て何年目ですか?また日本で勉強するようになったきっかけは何ですか?

日本に来てから4年目です。ずっと留学してみたいと考えていたんですが、経済的に難しくて躊躇していました。でも、交流協会の奨学金を得ることができたので、思い切って日本に来ました。日本にした理由は、専門学校や大学生の時からずっと日本語を勉強してきたので、留学するなら日本だと思っていたんです。

なるほど。でもどうして日本語に興味を持ったのですか?

そうですね、中学生の時から語学にすごく興味がありました。英語か、他の言語を勉強したいと思っていて、高校に行かずに外国語専門学校に進学しました。ただ、その時は英語を勉強したかったんですが(笑)。でもその時の私の大変お世話になった先生のご専門が日本語で、それで日本語を勉強しようと決めました。それが一つの縁でしょう。それからずっと日本語を勉強しています。

中学校を卒業してから外国語専門学校に入るということは、とても言語に興味を持っていたんですね。ところで、広島大学を選んだ理由とは?

大学生(東呉大学)の時の先生が広島大学出身で、その先生に勧められて、ほとんど迷いなく広島大学にしました。だからインターネットなどで日本の大学を調べたりはしなかったんです。

日本に来て、どういう印象を受けましたか?

西条は初めてだったので、新幹線で東広島に着いた時に、「あ、田舎だな」と思いました。でも、先生から西条について聞いていたので、予想とおりでした。日本の印象は、個人的に好きです。旅行する時も、ここで勉強や研究していても、色んな人に助けられて…日本の人は本当に親切です。でも、今4年目ですけど、まだ慣れないのが日本の冬ですね(笑)。私の故郷は台湾の中部なので、日本の冬は寒くて、寒くて!去年の冬を乗り越えたのが不思議なくらいですね(笑)。実は日本に来てから初めて雪を見たのです。その時は大はしゃぎで、部屋着のままで外へ飛び出して、「雪だー!」って(笑)。今はさすがに「また雪か!」という気持ちですが・・・。

人生初の雪ってワクワクしますね。広島大学での勉強や生活はどうですか?

ほとんど研究中心の毎日ですね。サークルには入っていません。今はちょうど論文を書いている時期なので結構大変です。目が覚めてから寝るまで論文。そして発表がある日は必死で準備します。だけど、発表がない日はリラックスして、思いっきり自分の好きな本、ジャーナルやエッセイ、漫画、ファッション雑誌なども読んでいます。

今の論文のテーマは?

太宰治の研究をしています。いつも太宰の作品やその作品に関しての論文を読んでいます。新しいことを発見すると、ものすごく達成感があるし、またもう一つクリアできるという喜びもあります。本格的に自分の研究を発表するのは今年からでした。実は12月に東京で学会発表をするので、今はちょっと大変です(笑)。

なるほど。話しが変わりますが、こちらに来てもう4年ですが、一番印象に残った思い出とは?

いっぱいありますね。怪我をしたことがあって、研究室の先輩が病院に連れて行ってくれました。その後、留学生センターのひとりの先生と、研究科の学生支援の先生も病院に駆けつけて、いろんな手続きを協力してくれて本当に感動しました。しかし、びっくりしたのは指導教授が私より先に病院に着いていて、とっても心配してくれていたことです。それに歩けない状態だったので、色んな人が歩くのを手伝ってくれたり、ご飯を買ってきてくれたり、助けてくれました。その時、日本人の優しさがよく分かるようになりました。そういう経験のお陰で自分がどれほどサポートされているかよく分かりました。

辛い思い出からいい思い出が生まれてよかったですね。何さんの周りの大学院生や先生方はどんな風にサポートしてくれていますか?

私は、研究は好きなのですが、たまには気分転換も必要です。そんな時、周りの院生とお喋りして、癒されますね。例えば雪が降った日なんか、先輩が「ちょっと雪を見に行こう」と誘ってくれて、気遣ってくれたこともあります。また日本語のチェックは本当に助かります。実は今、先輩がほとんどいないため、先生が私の日本語を丁寧にチェックして下さいます。しかも文法だけではなく、論文の立て方も丁寧に見て下さり、アドバイスもして下さいます。「とても親切な先生に恵まれている」とよく思います。周りの院生も勿論そうです。

よかったですね!今は論文で大変だと思うけれど、卒業したら、どういった仕事に就きたいですか?

台湾に帰って、できれば日本語の教員になりたいです。研究すればするほど、自分がまだまだ知らないことがたくさんあると感じます。先生や院生から質問されて、自分が見えていない点を実感できます。「厳しく質問された方が成長する」と先輩も励ましてくれました。Q&Aが終わると、「もっと調べておけばよかった」といつも思うけれど、逆にそれがモチベーションになります。

いい話ですね!でも、どうして先生になりたいのですか?

自分の日本語の勉強を振り返ってみると、自然に身についていたというのがあります。専門学校での授業はすべて日本語で行われたので、他の学生のように、文法から勉強を始めることはなくて、ただなんとなく日本語を使ったり、理解したりという感じでした。だから、日本語を教えてみると、自分の知らないことが明らかになって、逆に刺激になりました。自分がなんとなく理解しているので、何かを説明するのが難しいのです。文法について質問されて、それについて調べると「なるほど」と自分の中に再確認ができるし、勉強にもなります。私にとっては、学ぶことも、教えることもすごく刺激になります。楽しくて仕方がないです(笑)

「学問は最高の遊びである」ってことですね(笑)

そうです(笑)

でも、勉強ばかりじゃないですよね。友達とはどのように知り合うのですか?

同じ研究室の院生と友達になったり、台湾の人と友達になったりすると、友達がまた新しい友達を紹介してくれて自分の友達の輪を広げました。台湾の留学生は少ないですが、みんなとても仲がいいです。イベントがあるたびに集まったりします。例えば、毎年西条の酒祭りで屋台を出しています。正確に言うと「台湾留学会」が屋台を出します。そこで焼きビーフンとかお茶卵を作って、売っています。今年なんかも、後輩と三日ぐらいかけてお茶の卵を作りました。結構大変でしたが、作った卵はとても好評ですぐ売り切れたので、本当によかった。(笑)

台湾留学会はよくイベントを開催するのですか?

忘年会もありますし、歓迎会もあります。ホームページも開設していますので、広島大学に入学を希望する台湾の人がホームページを見て、色々と問い合わせをしてくれます。台湾の人はよくインターネットを使っているので、ホームページがあることはとても便利です。もともとホームページは広大の台湾在学生が情報交換をするために作られました。例えば、帰国する前にホームページを利用して家電や家具を売ったり、そして新入生のサポートやイベント情報を提供したりするためです。広大情報を検索している台湾の人が、偶然に私達のページに辿り着いたみたいです。

では、留学会のネットワークがあったから、これまで寂しい思いをすることはなかったですか?

実は、日本に来た時は、留学会はまだなかったんです。でも、台湾の人は年に1〜2回集まるので、みんなファミリーみたいな感じです。たまに理由がなく落ち込んだりする後輩がいると(自分もたまにそういう時がある)、研究室に来てもらって、後輩の話を聞いてあげます。特に自分の母国語で話すので、気持ちを100%伝えることが出来ます。同じ台湾人だからこそ真正面からぶつかるという気持ちになります。

ネットワークが色んな場面でサポートしてくれるみたいですね。

ネットワークだけではなく、日本の友達も先輩も、先生も、台湾の人もサポートしてくれて、なんだか大きなファミリーみたいですね。むしろこういうサポートネットワークがあるからこそ、自分も研究生活を楽しめるんです。

楽しい研究生活から卒業すると寂しくなると思いますか?

きっとそうです。帰国した先輩はみんな寂しいと言います。でも年に1〜2回ぐらい日本に来る先輩がいます。なので、台湾に帰国しても広大とのつながりはまだまだ続きます。ネットワークはとてもしっかりしていますからね。

よかったですね。何さんも是非また広島大学に戻ってきてくださいね。もうそろそろ終わりですが、広島大学で勉強したい学生に何かアドバイスありますか?

留学生生活に楽しいこともいっぱいありますが、そればかりではなくて、大変なこともあります。だから自分の生活スタイルに合ったストレス解消法を見つけた方がいいと思います。例えば友達をたくさん作って、一緒に喋ったり、旅行したり、スポーツしたり、色んなストレス解消法がありますけど、その中で自分に一番合う方法を見つけてください。その日のストレスをその日に解消するとストレスは溜まりません。私の場合は歌を歌ったり、旅に出たり、そして研究とは関係のない本を読んだりします。

とてもいいアドバイスですね。ありがとうございました。今日はお忙しい時期にインタビューさせて頂き、誠にありがとうございました。論文頑張ってくださいね。そして来年のお酒祭りにお茶卵食べに行きますから、よろしくお願いします(笑)。

はい!(笑)ありがとうございます。

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