ブラジル留学生活レポート(第5回)

社会科学研究科法政システム専攻
神代貢志

 7月。大学のセメスターも終了したので、そろそろ帰国する日本人留学生たちも出てきました。私も二か月と少々の後には帰国することになります。去年の今頃は応募した奨学金(http://www.tobitate.mext.go.jp/)に合格し、留学の準備を始めたころだったかと思いますが、本当につい最近のことのように思います。

日本祭り

 先日、サンパウロでは海外最大規模の日本祭りが開催されました。主催は県連。ブラジルには移民の方々が設立した日本全国47の都道府県人会が存在しますが、この各県人会を束ねる組織がこの県連です。日本祭りのフードエリアでは各県人会がそれぞれの県の特産品(本当に特産品か?と首をひねるようなものもありましたが)を売る屋台を出店します。私が食べたのは大分県人会の鶏飯と団子汁。日本で食べるものと変わらないのではないかと思ったほどのクオリティでした。人参の飾り切りもしていて見た目にもきれいです。

 会場中心部に設けられたステージでは、日系人団体による太鼓の演奏や空手の演武、筑波大学剣道部によるデモンストレーション等も行われました。会場奥のホールでは、歌や音楽の演奏に加えてコスプレのコンテストやミス日系コンテストも行われました。

 その他の各エリアには、約200の日本または日系企業・団体のブースが設置されました。日本企業としては、トヨタをはじめとした自動車メーカーや、キリン、味の素といった食品メーカー、スポーツ用品のアシックス等が出展していました。農林水産省、JETRO、JICAのブースもあり、それぞれワークショップやデモンストレーション等により日本文化を発信していました。現地の団体としては、様々な現地食品メーカーが醤油や味噌を売っていたり、以前私がその歴史本の翻訳に携わったサンタクルス病院(第4回参照)が最新の設備を展示したりしていました。

 会場の規模も巨大でしたが、来場者も18万人を超えたとのこと。見たところ、非日系の方のほうが多かったようでした。地球上の対遮地であるブラジルで、これほどの大きな祭りが開催できるほど日本という国が受け入れられている事実には感動を覚えます。109年前に移民を開始してから、想像を絶する苦難を乗り越え、文字通り未開の地を切り拓いて開墾し、各地に持ち込んだ作物を育て、現地に定着させ、ここまでの祭りを築き上げた日系移民の方々には畏敬の念を禁じ得ません。慣れない土地にも関わらず私が不自由ない食生活を遅れているのも、彼らのおかげですね。

 ただ、近年は日本に移住してきた世代が高齢になり、実際の日本を知らない日系人も多いことから、現地日系団体が今後正確な日本文化を発信できなくなるのではないかとの懸念があるそうです。今後は本土と現地との間の協力体制を更に強化し、両国間の人材交流を促進することが求められています。

  写真上:日本祭り会場の様子

写真上: 大分県人会の鶏飯と団子汁

写真上:トヨタのブース。初代カローラの展示が人気でした。

ブラジルでの住まい

 初めての留学が決まった際、不安だったのは住居の問題でした。はじめは現地の受け入れ教授の方に交渉してもらい、大学の寮に入ることになりました。寮費は無料とのことで安心しましたが、インターネットを使ってもこの寮の写真やこれから住むというときに欲しい情報を得ることはできませんでした。私としては、設備は多少古くても良いしシャワーやキッチン等は共同でもいいので個室が欲しいところでした。実際に行ってみると、なんと入り口はオートロック。開錠は指紋認証。これは期待できると思いドアを開けたところ、2段ベッドが8台並び、あとはロッカーと冷蔵庫のみが備え付けられた部屋でした。個室どころの話ではありません。ベッド間には仕切りすらないプライバシーゼロ空間です。しかも、共同のシャワーは温水が出ません。到着したのは8月で、南半球に位置するブラジルは冬でした。ドライヤーもなかったため髪を乾かすこともできず、すぐに風邪をひいてしまいました。この時すぐに引っ越しを決意し、一か月後に寮を出ました。

 言葉の通じない国で住居を探すのは大変なことですが、サンパウロで暮らす日本人には強い味方がいます。前項に登場した県人会です。いくつかの県人会は自前の宿泊施設を有していて、日本人や日系人に安く貸してくれます。個室もありますし、なにか問題が発生すれば日本語で対応してくれる人もいます。私は広島県人会の個室に入居することができました。シャワーやトイレも個人用です。時々停電もありましたが、おかげさまで快適に過ごすことができました。

 今回の留学では、家に帰ってもポルトガル語を話すことができる環境を作るために、Facebookの住まい探しグループや、Easyquartoというサイトを使って部屋を探し、ブラジル人と住居をシェアすることに決めました。今住んでいるのは、地下鉄の駅からほど近い一軒家の個室で、トイレ・シャワー・キッチンは共同。5人のブラジル人、1人のアルゼンチン人、1人のコロンビア人とシェアしています。部屋はとても狭いですが、治安のいいエリアに位置していて、近くには日本食も購入できるスーパーがあったり、とんかつや中華のレストランもあったり、さらに最近は牛丼のすき家もできたので、立地としては最高です。

 他の日本人滞在者の話を聞くと、共同エリアの使用をめぐってトラブルになったり、人間関係がうまくいかなかったりして悩むことも多いようです。上記のサイトに情報が載っている物件の多くは、その日に入居することも逆に好きなタイミングで転居することも可能なので、実際に住んでみて気に入らなければすぐに引っ越すこともできるのは利点ですね。私も一度色々あって家主が信用できなくなった家から引っ越しています。


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