令和2年7月

■【生きて再録】賀茂鶴酒造名誉会長だった石井泰行さん(1934-2015)は、1947年に広島高等師範学校附属中(現広島大附属中)に進学し、「自署名簿」とよばれる将来の夢や目標を書く色紙に「大商人になる」「古里の西条を発展させる」と書き実現させた(中国セレクト、7.1)

■1日、広島大は、新型コロナウイルスへの大学独自の警戒レベルを引き下げ、中止していた対面授業を実験や実習などの一部で再開させた(中国、7.2)

■1日、北九州市出身の清水祥平さん(広島大卒)が安芸津町を拠点に活動する地域おこし協力隊員に着任した。清水さんは「子どもが笑顔で過ごせる町づくりを目指したい」と話した(中国、7.2)

■広島大大学院の島田昌之教授らの研究グループは、ビル&メリンダ・ゲイツ財団から3年間で約3億円の助成を受ける。開発した簡便な雌雄の産み分け法で雌牛を繁殖させ牛乳などの動物性たんぱく質を増産し、インド貧困層における食糧問題の解決につなげる(日刊工業、7.2、中国、7.17)

■2日、広島大は今年4月に新設した大学院人間社会科学研究科と先進理工系科学研究科の記念講演会を開催した。昨年のノーベル化学賞を受賞した旭化成名誉フェローの吉野彰さんと、広島市在住の芥川賞作家小山田浩子さんが講演した。吉野さんは新型コロナウイルス感染拡大を受け、東京からリモート出演した(中国、7.3)

■広島大の三浦弘之准教授と東工大の研究グループは、人工知能を活用して災害後に撮影された航空写真から建物の被害を自動判別する方法を開発した(日刊工業、7.3、日経、7.20)

■広島大大学院の坂田桐子教授(社会心理学)が、近所や知り合いの高齢者に「私はもう逃げますね」と自分の方針を伝えることで避難を誘導する効果があると話した(中国、7.5)

■広島大の越智光夫学長が、新型コロナウイルス関連の研究やコロナ禍の大学の対応、ポストコロナ時代の展望などについてインタビューに答えた(中国、7.6)

■広島歴史資料ネットワークは、2001年の芸予地震を機に広島大を事務局として発足し、被災資料を救った。その後大きな災害がないまま休眠状態にあり、2018年の西日本豪雨発生を機に再組織された(中国、7.7)

■広島大は新型コロナウイルス感染拡大を受けて設けた「応急学生支援金」について、OBや一般賛同者、保護者らから約5,920万円の寄付金が寄せられたと発表した(読売、7.7)

■3日、大手菓子メーカーのカルビーで社長・会長を務めた松尾聰さん(広島大工学部卒)が、病気のため84歳で死去した(中国、7.9)

■NPBとJリーグでつくる「新型コロナウイルス対策連絡会議」の地域アドバイザーである広島大感染症科の大毛宏喜教授が、スポーツ観戦時の注意点について解説した(中国、7.10)

■広島県内の医師や看護師らが新型コロナウイルス感染症の第2波、第3波に備えて、人工呼吸器やECMO(体外式模型人工肺)療法の講習会を広島大病院で開催した(産経、7.10)

■【高校人国記(日彰館高校)】広島大名誉教授の位藤邦生さんが卒業生として紹介された(中国セレクト、7.10)

■5日から中国地方で大雨が断続的に続いている。広島大防災・減災研究センターの海堀正博センター長(砂防学)は「これまでの雨が土壌にかなり残っている。今は多くの場所で、何とか崩落せずに持ちこたえている」と指摘した(中国、7.11)

■カイロ大のマーヒル・エルシリビーニー教授が被爆後の広島を生きる少年を描いた漫画「はだしのゲン」をアラビア語翻訳した。1992年に博士号を取得するため広島大大学院文学研究科に留学したことをきっかけに翻訳を始め、2015年1月に第1巻を出版し、今年2月全10巻を出版した(中国、7.14)

■福山市は、築城当時の福山城を再現したCGや仮想現実(VR)映像を制作し、築城400年記念事業実行委員会のホームページで公開した。CGとVRの製作を監修した広島大名誉教授の三浦正幸さんの解説動画も公開されている(中国、7.14)

■【生きて(1)】ヒロシマ史家の宇吹暁さんは、広島県史編さん室(原県立文書館)に勤め「原爆資料編」や「原爆三十年」を手掛け、広島大原爆放射能医学研究所(現原爆放射線医科学研究所)の附属原爆被災学術資料センター、広島女学院大などで勤務した(中国、7.14)

■14日、内閣府は起業しやすい環境の整備を国が重点的に手掛ける「スタートアップ・エコシステム拠点都市」を選んだ。広島県や広島大、県内のスタートアップ企業などでつくる「広島地域イノベーション戦略推進会議」が選ばれた(日経、7.15)

■日本新聞協会は、2020年度の県内のNIE(新聞活用学習)の実践指定校を決めた。県内新規校として広島大附属中・高等学校、県NIE推進協議会独自認定校として広島大附属三原小などが選ばれた(読売、7.15)

■【病院の実力 肺がん】主な医療機関の2019年の治療実績が公表された。広島大病院は、手術が177件、うち区域切除が52件、放射線治療(根治的照射)が48人、薬物療法が99人だった(読売、7.15、7.19)

■15日、広島市は市内で新型コロナウイルスの新たな感染者6人確認したと発表した。うち1人は、帰国後に陽性が判明した知人の外国人医師を広島駅で見送った30代の広島大の学生だった(中国、読売、7.16)

■原爆投下後に広島に降った「黒い雨」を浴び放射線降下物の影響を受けたとし被爆者と認定されることを目指す集団訴訟について、雨の範囲や生じる健康被害など様々な専門家が意見を示してきた。昨年10月、広島大名誉教授の大瀧慈さんも証人として広島地裁に出廷し降雨地域や考えられる健康被害について述べた(朝日、7.16)

■日本脳科学関連学会連合前代表の広島大の山脇成人特任教授は、新型コロナウイルス感染症の流行に伴うメンタルヘルスの悪化への対策が急務とし、脳科学と人工知能の融合を提案した(毎日、日刊工業、7.16)

■【緑地帯(1)】広島大名誉教授の小林芳規さんは、研究の原点となる角筆との出会いについて話した(中国、7.17)

■16日、広島県は県内の労使の各団体と広島大などの大学、行政機関の代表者でつくる県雇用推進会議を4年5カ月ぶりに県庁で開催した。来年春の就職を目指す学生の支援について連携することを確認した(中国、7.17)

■来年設立50周年を迎える広島県理学療法士会会長の甲田宗嗣さん(広島大大学院保健学研究科博士課程修了)が、理学療法の役割や地域での活動について、同会広報局普及推進部長の實延靖さんと対談した(中国、7.17)

■広島大大学院先進理工学研究科の三浦弘之准教授(防災工学)が、高齢者施設の豪雨や土砂災害への対策について話した。ハザードマップ内にあることが分かった施設は移転が望ましいが費用面を考えると難しい、入居スペースを2階以上に移してほしいと話した(中国、7.17)

■【緑地帯(2)】広島大名誉教授の小林芳規さんが紙を押し凹ませて掻いた文字である角筆について、当時どのような呼ばれていたのか、どのような形状の用具が使われていたのか研究した(中国、7.18)

■【病院の実力 肺がん(広島編)】広島大病院の岡田守人副病院長(呼吸器外科)が、がんの中でも早期発見が難しい肺がんについて、手術・薬物療法・放射線治療など最新治療や予防方法について話した(読売、7.19)

■【ニュースの門】広島大は国内最多とされる9校の前身校が統合されて発足し、1950年11月5日、開学式が行われた(読売、7.20)

■【緑地帯(3)】広島大名誉教授の小林芳規さんは、天皇陛下(現上皇さま)に明治天皇の角筆が遺っていないかお尋ねになり、孝明天皇の遺品の竹製角筆、明治天皇ご使用の竹製の角筆2本と象牙製の角筆1本の発見へとつながった(中国、7.21)

■【ニュースの門】広島大の前身校では学生や教員ら多くの原爆犠牲者が出た。前身各校において犠牲者らの慰霊行事が行われ、1949年に誕生した広島大としては長らく追悼式が行われなかった。疑問視する声を受け、1971年に東千田キャンパスに追悼碑が建てられ、1974年に除幕・追悼式が挙行されて以来、毎年8月6日に追悼式が行われている(読売、7.21)

■20日、14日に発生した東広島市河内町宇山の崖崩れで2人が死亡した件で、広島県や広島大のチームが現地調査を行った。広島大防災・減災研究センターの海堀正博教授は「どこの斜面も大量の雨を含み崩れる限界の状態になっていた」と指摘した(中国、読売、7.21、朝日、読売、7.22)

■【緑地帯(4)】広島大名誉教授の小林芳規さんは、日本の角筆が木簡からも見つかっていることから、日本の木簡の源流は中国古代の木簡にあるため、角筆文献の源も中国に違いないと考えた。蒙古の居延の地から見つかった2千年前の木簡「居延漢簡」には100点に1点の割合で凹み文字があるという(中国、7.22)

■民俗学者の新谷尚紀さんは、広島大や早稲田大の哲学科を受験し早稲田大に進学。現実の哲学科が自分の想像と異なり、日本文化史・日本思想史に進んだ(朝日、7.22)

■【ニュースの門】GHQによる教育改革で1949年に原則各都道府県名を冠した新制国立大が設立され、広島大も名を連ねた。文部大臣経験者で初代学長の森戸辰男の講演は今も建学の精神として受け継がれる言葉「自由で平和な一つの大学」のもととなった(読売、7.22)

■【緑地帯(5)】広島大名誉教授の小林芳規さんは、2千年前の木簡「居延漢簡」にも凹み文字があるならば中国の紙の文献にもあるに違いないと考え、大英図書館にある敦煌文書を調査し、凹み文字を発見した(中国、7.23)

■【生きて(7)】ヒロシマ史家の宇吹暁さんは、広島大原爆放射能医学研究所(現原爆放射線医科学研究所)の附属原爆被災学術資料センターに勤めていたとき、「原爆と広島大学『生死の火』学術編」のために資料を探し、文書を整えたが編集に名前を出せなかった(中国、7.23)

■広島大病院小児科の岡田賢教授が、子どもの新型コロナウイルスの感染状況や症状、予防について話した(中国、7.23)

■黒い雨訴訟について、広島市と広島県は黒い雨の援護区域拡大を国に求めてきたが、被爆者健康手帳の申請・交付は却下した。広島大名誉教授の田村和之さん(行政法)は「被爆者保護は10割国が負担するため、強く発言できないのかもしれないが、黒い雨被害者が放射能の影響を受けたかどうか県や市が独自の立場で判断することは可能だ」と話した(朝日、7.23)

■【ニュースの門】1956年、大学になくてはならない学章が学生からの公募をもとに制定された。被爆から復興を目指す広島の街と大学の象徴としてフェニックスがデザインされた(読売、7.23)

■【緑地帯(6)】広島大名誉教授の小林芳規さんが、角筆スコープについて話した。凹み文字を解析するために開発された照明具で同大理学部の吉沢康和教授(現名誉教授)が考案した(中国、7.24)

■【生きて(8)】ヒロシマ史家の宇吹暁さんは、広島大原爆放射能医学研究所(現原爆放射線医科学研究所)の助手時代、資料調査を自費でも続け、外務省外交史料館で広島で被爆死した米軍捕虜名簿を見つけた(中国、7.24)

■【ニュースの門】広島大は県内24カ所に及ぶ調査の結果、1973年に当時の飯島宗一学長が東広島市西条町への移転を決めた(読売、7.24)

■29日、原爆投下後に降った「黒い雨」を巡り、国の援護対象外とされた佐伯区や安芸太田町の住民84人が被爆者認定を求めた集団訴訟は広島地裁で判決を迎える。黒い雨が降ったという証言は住民の古い記憶が基になっているとして国は根拠にならないとした。しかし広島大名誉教授の星正治名誉教授の研究では、民家の床下に着目、範囲外の複数地点から自然界の濃度を超える放射性物質が検出された(読売、7.24)

■【緑地帯(7)】広島大名誉教授の小林芳規さんは、同大定年退職後に10年計画で全国の角筆文献探しを行い、47都道府県下で角筆文献が各所に少なからず存在していることが分かった。角筆の方言資料を調査すれば、諸方言の分布の新しい研究が期待できると話した(中国、7.25)

■【生きて(9)】ヒロシマ史家の宇吹暁さんは、広島大霞キャンパスの原爆被災学術資料センター時代、本を寄贈してくださった方々に何かお礼をと考え、1981年から収集した情報を紹介する「資料調査通信」を発刊した(中国、7.25)

■【ニュースの門】昨年、広島大は創立70周年を迎えた。今年は新型コロナウイルスの影響からキャンパスの立ち入りが制限され、アルバイト先の休業で生活に窮する学生の姿など受難の年になっている。学生を支援するため大学が寄付を募ったところ、多くの地域住民から寄付が寄せられた(読売、7.25)

■【ニュースの門】広島大東広島キャンパスには現在は使われていない焼却炉の煙突である広大タワーや多様な生物の住処となっているブドウ池など特徴的な施設、風景がある(読売、7.26)

■広島平和記念資料館館長の滝川卓男さん(広島大経済学部卒)が、今年4月に改修を終え全面オープンした資料館の展示の工夫について話した(読売、7.27)

■8月4日、広島市の松井一実市長が会長を務める平和首長会議は、世界各国の加盟都市の若者たちが平和活動について考える教育セミナーをZOOMを使って開催する。広島大総合科学部国際共創学科の野村ミカエル介さんは、平和記念公園での外国人観光客を案内するユースピースボランティア活動について取り上げる(中国、7.28)

■原爆投下後に広島に降った「黒い雨」について、広島大名誉教授の大瀧慈さんは2008年~10年に広島市原爆被害対策部調査課が被爆前後に安芸太田町や北広島町に住んでいた約3万7千人を対象に行った原爆体験者等健康意識調査を解析した。1,565人が黒い雨を体験した時間や場所を具体的に回答し、回答内容を解析したところ、市の東側と北東部を除くほぼ全域と周辺部で黒い雨が降ったと結論づけた(中国、7.28)

■広島大大学院で地理学を先行する原田歩さんは、八本松駅から東に1.5キロの一帯にあった広島陸軍兵器補給廠八本松分廠の歴史を掘り起こしている。同地は戦後宅地開発され詳細が分かっていない。「加害と結びつく遺構は埋もれがち、 地域の遺構を通して子供たちに戦争への想像力を身に着けてほしい」と話した(中国、7.28)

■【緑地帯(8)】広島大名誉教授の小林芳規さんが今後の角筆研究について話した。中国、韓国の角筆文献と日本の資料の全体像の解明と交流の実態、ベトナムなど他の漢字文化圏への広がりの有無、東西の文明の比較など世界的視野で研究の可能性があると話した(中国、7.28)

■広島平和記念資料館は、被爆75年の節目に合わせ館の歩みを紹介する企画展「礎を築くー初代館長長岡省吾の足跡」を開催している。長岡氏は、広島文理科大(現広島大)で教員として勤務、原爆投下時は山口県に出張していたが2日後に広島市に入り被爆した。爆心地から近い瓦や石を自ら収集した(読売、7.28)

■27日、角筆の研究者で昨年度の文化功労者に選ばれた広島大名誉教授の小林芳規さんが、同大文学部の学生に特別授業を行った(中国、7.29)

■28日、海洋研究開発機構と高知大などは1億150万年前にできた南太平洋海底下の地層で微生物を発見し、約8割が栄養を与えれば増殖できる生存状態にあると発表した。広島大の白石史人准教授(地球微生物学)は「生物の生存圏の広がりを考える上で興味深い研究成果だ」と話した(中国、7.29)

■【生きて(11)】ヒロシマ史家の宇吹暁さんは、ヒロシマを論じる研究者は被爆地でも少なく、広島大原医研の助手の論文であっても歴史学や国際政治学の学会に受け入れられたと話した(中国、7.29)

■29日、原爆投下後に降った放射性物質を含む「黒い雨」を巡る訴訟については、広島地裁は原告84人全員を被爆者と認定する判決を言い渡した。広島大名誉教授の田村和之さんは「原告の証言を基に広く被爆者と認定した点は大いに評価できる、判決を踏まえた新たな基準を速やかに定める必要がある」と話し、同大名誉教授の大瀧慈さんは「判決を機に内部被曝の危険性についても研究成果が見直されるきっかけになる可能性がある」と指摘した。また、同大平和センター長の川野徳幸教授は「黒い雨を浴び健康不安を抱える人たちの大きな光となる」と話した(中国、朝日、読売、7.30)

■29日、広島大は同大原爆放射線医科学研究所が保管している原爆犠牲者の組織標本などをデジタル画像化し、データベースをつくると発表した。事業費350万円をクラウドファンディングで募っている(中国、7.30)

■29日、東広島市の豊栄小の生徒が町内に生息するオオサンショウウオの生態や川の保全について学んだ。広島大総合博物館の清水則雄准教授らが講師を務めた(中国、7.30)

■29日、広島、長崎の市民団体「高校生平和大使派遣委員会」は長崎市内で会見し、23代目の高校生平和大使を発表した。広島大附属高の生徒など計9人が選ばれた(中国、7.30)

■東京大、広島大、愛媛大、物質・材料研究機構との共同で、地球表層の窒素が地球深部へ運ばれる仕組みを明らかにした。窒素は石英層に取り込まれ、下部マントルまで運ばれて蓄積する(日刊工業、7.30)

■【生きて(13)】ヒロシマ史家の宇吹暁さんは、1990年に原爆遺跡保存運動懇談会が結成されると旧広島赤十字病院本館の新築計画について見直しを求めたり、平和記念公園レストハウスや旧広島大理学部1号館の保存を市民団体と一緒に訴えた(中国、7.31)

■読売新聞社と広島大平和センターは共同で被爆者アンケートを実施した。9割の被爆者が核兵器廃絶が進まない状況にあせりを感じていることが分かった(読売、7.31)

■大樹生命厚生財団は第53回医学研究助成20件と第29回医学研究特別助成3件を決めた。医学研究助成の研究課題1「神経免疫疾患の病態と治療」に広島大原爆放射線医科学研究所の神沼修教授らの研究が選ばれた(毎日、7.31)


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