第19回ペスタロッチー教育賞 表彰式・記念講演、記者会見のご案内

平成21年11月1日

第19回ペスタロッチー教育賞 表彰式・記念講演、記者会見のご案内
 

広島大学大学院教育学研究科とペスタロッチー教育賞実行委員会は、優れた教育実践を行っている個人・団体を顕彰する第19回ペスタロッチー教育賞の表彰式及び記念講演並びに受賞者の記者会見を、11月30日(火)に東広島キャンパスで開催しますのでご案内いたします。

受賞者:北陸学院大学人間総合学部 教授 金森(かなもり) 俊朗(としろう) 氏
 

【表彰式・記念講演】     
時間:13:00~14:30
場所:教育学研究科K201講義室
後援:もみじ銀行、中国新聞社

プログラム:
・主催者挨拶   ペスタロッチー教育賞実行委員会委員長(広島大学長)浅原利正、 教育学研究科長 棚橋健治
・祝辞   もみじ銀行頭取 野坂文雄 氏
・表彰状授与及び胸像贈呈
・記念品贈呈   中国新聞社代表取締役社長 川本一之 氏
・記念講演   ペスタロッチー教育賞受賞者 金森俊朗 氏

 
【記者会見】
時間:記念講演終了後、14:35~(15分程度)
場所:教育学研究科 第二会議室

※ これまでの受賞者一覧等は、本学ホームページをご覧願います。
(大学トップページ→教育学研究科・教育学部のページ→ペスタロッチー教育賞)
http://www.hiroshima-u.ac.jp/ed/pestalozzi/index.html

お問い合わせ先

本賞・受賞者に関すること
広島大学大学院教育学研究科教育学講座 担当:丸山
TEL:082-424-6730

表彰式・記念講演に関すること
広島大学教育学研究科支援室 総務担当
TEL:082-424-6708

別紙

第19回ペスタロッチー教育賞 受賞者紹介 北陸学院大学 人間総合学部 教授 金森俊朗(かなもり としろう)

金森俊朗(かなもりとしろう)氏は昭和21年石川県能登に生まれた。昭和44年に金沢大学教育学部を卒業し、平成19年に退職するまでの38年間、石川県内の八つの公立小学校に勤めた。現在は、北陸学院大学の教授として、これから教師になろうとする若者に氏の志を託すべく教鞭を執るとともに、講演・執筆活動を通して、教育に関わるすべてのひとに教育の希望を語り続けている。
金森氏の教育実践は「金森学級」とも「いのちの教育」とも呼ばれ広く知られている。氏の学級を一年にわたり取材したNHKスペシャル「涙と笑いのハッピークラス〜4年1組 命の授業」は多くの視聴者に感動を与え、2003年日本賞グランプリを受賞した。また、妊婦や末期癌患者を教室に招く「本物に触れる教育」は、著書『性の教育・死の教育』や『いのちの教科書』で紹介され、命の教育のモデルとして高い評価を得ている。
そうした金森氏の教育実践は、長年にわたる地道な教育経験に裏打ちされたものであり、教育を良くしたい、子どもを善くしたいとの願いに突き動かされた教員同士の研究会において磨かれたものである。上からの政策ではなく、まず、目の前に日々を生き抜く子どもたちがいる。そうした子どもたちに教えられ、ともに学んだ経験と工夫の積み重ねが、関心を同じくする教員に受けとめられ、全国から参観者が訪れる学級をつくっていったのである。
金森氏が「いのちの授業」に取り組み始めたきっかけはいくつかある。氏がまだ若い教師であった頃、子どもを教室から外に連れ出し、荒れ地を畑に変えて農作物を育てるという実践を行っていた。中学生になったある教え子が、人生でよかったことはこの畑の活動だけだったという言葉を遺して自ら命を絶つ。小学校を卒業後、不良となった別の教え子が暴走族の青年と繰り返した違法行為のために少年院に送られた。金森氏にだけは心をひらき、出所後「今度こそは」と語った子が、暴走族の青年と暴走の末、警官をはね、電信柱に激突して亡くなってしまう。さらに幼いわが子を失い、祖母を亡くし、自らも交通事故で一命を取り留めた経験がここに重なる。氏にとって「いのちの授業」は切実な願いとして始まったのである。
子どもたちに「いのちは大事だよ」と話すだけでは解決にならない。頭では分かっていても、彼らには、別の子と比べられ、勉強が、スポーツが、ピアノができないダメな子だと叱られ、追いつめられている現実がある。表面的には明るく振る舞っていても、孤独に心を閉ざしている子どもは少なくない。自らの生を実感し、これからの人生の拠り所となる「原風景」と出会えるような子どもの時間が奪われている。金森氏は、教師が教えるというスタイルはとらず、子ども自身の体験のなかから、いのちについて考えるきっかけを探る。教室を出て、自然の雨と風をからだで感じ、友とからだをぶつけ合う。死に直面し生きることの意味をぎりぎり問うているひとの姿に触れる。腐敗する動物の死体の観察から、土と食物といのちのつながりを学ぶ。こうした学習に支えられて、子どもたちは心のうちに秘めていた、家族を失った悲しみや自己を肯定できない辛さを友の前で語り始める。このとき学級は、友に心をひらき、共感し支え合う場となり、自分のなかに自尊心や希望を見いだしていく場となる。
昨今、学校教育は批判されることが多い。金森氏の実践は、そうした学校教育にもまだ十分可能性のあることを示してくれている。その姿に、教育現実に真摯に向き合う多くの教師が励まされ勇気づけられてきた。そして、教育は子どもに希望をもたらすものでなくてはならないという氏のメッセージは、ようやく「いのちの教育」として広く受け入れられつつある。氏の長年の功績に対し、第19回ペスタロッチー教育賞を贈呈し、高く顕彰したい。


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