癌細胞の異常な形を理解するヒント!(久米助教・平田教授:Nature Cell Biology)

国立大学法人広島大学(2011年2月16日資料配付)

癌細胞の異常な形を理解するヒント!-DNA複製と形態形成をつなぐ分子経路を発見-

研究成果

癌細胞の異常な形を理解するヒント!(久米助教・平田教授:Nature Cell Biology)

掲載予定論文:Nature Cell Biology オンライン版(2月20日)
Kume, K. et al. “Calcineurin ensures a link between the DNA replication checkpoint
and microtubule-dependent polarized growth.”
共同研究者:広島大学(久米一規、古家野孝行、平田 大)、
英国癌研究所(登田 隆)、独立行政法人酒類総合研究所(金井宗良)

研究概要

癌細胞では、異常な増殖とともに、その形も異常になることが知られていますが、その詳細は不明です(図1)。癌細胞の増殖異常の一要因として、チェック ポイント機構の欠損があげられます。チェックポイント機構は、DNA(染色体)複製に異常が生じた場合、自身の増殖を停止させる、生命維持に必須な機構で す(図2 経路A)。
今回、我々は、ヒトのモデル細胞である酵母を使って、DNA 複製停止に応答するチェックポイント機構と形態形成をつなぐ分子経路を発見しました(図2 経路B)。具体的には、DNA 複製が停止した場合、チェックポイント経路のCds1(Chk2)が、カルシニューリンを活性化し、さらに、カルシニューリンが、 Tip1(CLIP170)を修飾(脱リン酸化)することにより、細胞形態(細胞極性)を制御することを見いだしました。カルシニューリンは、カルシウム により活性化されるカルシウム情報伝達分子で、臓器移植の際に使用される免疫抑制剤の標的分子でもあります。今回の結果は、チェックポイント機構が細胞の 増殖と形の両方を制御すること、また、カルシニューリンがDNA 複製と細胞形態をつなぐ重要な役割を持つことを示します。
今回の発見は、癌細胞の異常な形を理解するためのヒントとなり、また、癌治療薬などの開発にも応用できます。酵母で発見された経路がヒトにも存在するのか、今後の研究に興味が持たれます。

図1、図2
お問い合わせ先

広島大学大学院先端物質科学研究科 酵母細胞プロジェクト研究センター
教授 平田 大(ひらた だい) Tel:082-424-7764(or 7759) Fax:082-424-7045
E-mail:dhirata@hiroshima-u.ac.jp(@は半角@に置き換えた上、送信してください。)
細胞生物学研究室:http://www.hiroshima-u.ac.jp/adsm/bio/saibou/index.html


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