HiSIM2 がCMC 標準化を達成

平成23年4月12日

HiSIM2 がCMC 標準化を達成
 

回路シミュレーション用トランジスタモデルの国際標準化機関であるCompact Model Council (CMC)は、HiSIM2 を国際標準モデルとして認定しました。これは、CMC が「次世代MOS トランジスタ標準モデル」のために設定したすべての要求項目をHiSIM2 が満足すること、今後継続して改善を進めることを意味しております。

3月31日、4月1日にサンフランシスコで開催されたCMC 会議で、長期にわたる技術開発の評価結果を踏まえて、Joe Watts 議長はHiSIM2 を次世代MOS トランジスタ標準モデルとして一般リリースすることを提案しました。これを全出席者が承認したことによりHiSIM2 を国際標準モデルとすることが決定されました。

HiSIM2 は広島大学 三浦研究室が半導体理工学研究センター(STARC)との共同研究により開発した完全な表面ポテンシャルベースのMOS トランジスタモデルです。ポアソン方程式をもとに導出された表面ポテンシャルのモデル式を、繰り返し計算で解くことによりチャネル内の電荷の振る舞いを精度よく求めています。この結果、チャネル長、チャネル幅を変更しても1セットのモデル・パラメータで特性を表現するスケーラビリティを実現しました。さらにドレイン電流・ソース電流の対称性(symmetry)を実現するなど、CMC が次世代MOS トランジスタ標準モデルのために設定したすべての要求項目を満たしました。これにより従来から広く利用されているBSIM4 と比較して、微細トランジスタの物理現象を忠実に表現できます。またS パラメータ、Y パラメータで表現する良好な高周波特性と、多様なノイズモデルを有しており、微細MOS トランジスタのアナログ/RF 用途での利用が期待されます。

広島大学が開発した国際標準モデルとしては、すでに2008 年に高耐圧MOS トランジスタモデルであるHiSIM_HV が認定されております。その後の継続した改善の結果、HiSIM_HV は高耐圧MOS トランジスタモデルとして、すでにIDM、ファンドリーで広く実用されています。今回、HiSIM モデルファミリーのコアモデルであるHiSIM2 が、HiSIM_HV を追う形で国際標準モデルに認定されました。

HiSIM2 の一般リリースの初版としてHiSIM2.5.1 が4 月11 日に広島大学HiSIM 研究センターから一般公開されました。すでにHiSIM2 は評価版の段階からEDA ベンダが提供するモデルパラメータ抽出ツールや回路シミュレータで使用されております。今回「CMC 標準モデル」のお墨付きを得たことにより、HiSIM2 のさらなる導入の加速と利用の拡大が期待されております。

なお、HiSIM2 とHiSIM_HVの開発には、独立行政法人:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの助成を受け、標準化が加速されました。

半導体理工学研究センター(STARC)について

株式会社半導体理工学研究センター(STARC)は、半導体設計技術力の強化を目的とし、日本の主要半導体メーカーの出資で、1995 年12 月に設立されました。STARC は、国内大学の半導体関連研究基盤を拡大するための「大学との共同研究」、半導体設計技術者育成のための「SoC 設計技術者教育」を産学連携で実施し、半導体の微細化に伴う設計の困難さを解決する「設計基盤技術開発」をクライアント企業と共同で実施してきました。これらの活動成果は、クライアント企業へ移転しその事業に寄与している他、技術標準として公開、あるいはパートナー企業へライセンス供与して製品化し、半導体業界で広く役立てていただいています。詳しい情報については http://www.starc.jp/index-j.html のウェブサイトをご覧ください。

取材等に関するお問い合わせ先

広島大学大学院先端物質科学研究科
教授 三浦道子
TEL:082-424-7659


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