魚類体内での放射性セシウム動態の予測モデルを構築

平成24年1月16日

魚類体内での放射性セシウム動態の予測モデルを構築

 

広島大学サステナブル・ディベロップメント実践研究センターの土居秀幸(どい ひでゆき)テニュアトラック講師らのグループは、魚類体内での放射性セシウム濃度を予測するモデルを構築しました。

土居テニュアトラック講師らの研究は、魚類体内での放射性セシウム(セシウム137)の蓄積と減少が,各魚種の生態学的・生物学的な特性(栄養段階,生息場所,代謝速度など)によって予測できるかを検討したもので、チェルノブイリ原発事故以後の旧ソ連・ヨーロッパでの湖沼・河川の長期観測や野外・室内実験により調査された文献情報から収集したデータ(世界中の58魚種からの260のモニタリング記録)を解析に用いました。

その結果、魚類体内での放射性セシウム濃度が最大になる日にちは、その魚種の栄養段階(注1)が高くなるに従って遅くなり、栄養段階3と4の間で平均で230日程度遅くなることが明らかとなりました。また、放射性セシウム濃度が体内で半分になる日にち(生態学的半減期)と、濃度が減衰する速度は、その種の体重と周囲の水温、つまりそれらで規定されている魚類体内での代謝速度(注2)によって予測できることが示唆されました。

これらの解析結果から、魚類体内での放射性セシウム濃度動態を予測することが可能になりました。ただし、今回解析したデータは湖沼のものがほとんどであるので、本研究成果は特に湖沼での魚類の放射性セシウム濃度を予測するモデルとして有用であると考えられます。

(注1)栄養段階: 食物連鎖の中にある生産者(植物)、それを食うもの(虫,プランクトンなど)、さらにそれを食うもの(鳥,魚など)、のような段階。栄養段階1(例えば,植物プランクトン)->栄養段階2(動物プランクトン)->栄養段階3(魚)->栄養段階4(魚食魚)というように表現される
(注2)代謝速度: 生物の代謝速度は体重と体温(魚は変温動物のため周りの水温で体温が決まっている)の関係式で予測できる。

本研究成果は、2012年1月19日7時(日本時間)発行の科学誌「PLoS ONE」の、オンライン版(http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0029295)で公開されます。

お問い合わせ先

広島大学サステナブル・ディベロップメント実践研究センター
土居秀幸
TEL&FAX:082-424-5732


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