湖水に溶存するDNAから魚類の生息量を測定する手法を開発

平成24年4月23日

国立大学法人 広島大学
大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所

湖水に溶存するDNAから魚類の生息量を測定する手法を開発
 

広島大学サステナブル・ディベロップメント実践研究センターの高原輝彦(たかはら てるひこ)研究員、総合地球環境学研究所の源利文(みなもと としふみ)上級研究員らのグループは、龍谷大学(滋賀県大津市)との共同研究で、魚類の排泄物などから湖水中に溶け出た、それぞれの魚固有のDNA濃度を測定することで、魚の種類を特定して、生息量(生息する魚の重さや数)を測定できる手法を開発しました。

湖や河川などの環境中には、魚のフンやはがれ落ちたうろこなどから溶け出たDNAが浮遊・存在しています。高原研究員らの研究グループは、コイをターゲットにして、水槽と野外人工池による操作実験を行い、特定のDNAの一部分だけを増幅・定量できる「定量PCR(合成酵素連鎖反応)法」(注1)を用いて、コイの生息量(重さや数)に比例して、水中に溶存するコイに固有なDNAの濃度が高くなることを明らかにしました。

さらに、操作実験で得られた結果が自然環境に適用可能かどうかを検討するために、平成23年2月に滋賀県の伊庭内湖において実施した野外調査によって、採水した2リットルの湖水に溶存するコイのDNA濃度から自然環境中のコイの生息量が予測可能であることを明らかにしました。

水域にどのような種類の魚がどのくらい生息しているのかを調べるためには、これまでは網などで実際に魚を捕まえたりする必要があり、多くの時間や労力などを要しましたが、本研究では、比較的容易に採取可能な、わずか2リットルの水に含まれるDNAの濃度を調べることで、刻一刻と変化する自然環境における魚の生息状況を簡便かつ迅速に推定可能であることを明らかにしました。今後は、本研究によって確立した環境中のDNAを用いた手法を、希少種の保全や外来生物種の侵入状況の把握などへの応用的な研究へ発展させたいと考えています。

(注1)定量PCR法:特定のDNAの一部分だけを選択的に増幅させて経時的に測定することで、DNA量を測定することができる手法。

本研究成果は、平成24年4月27日午前6時(日本時間)発行の科学誌「PLoS ONE」の、オンライン版(http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0035868)で公開されます。

お問い合わせ先

広島大学サステナブル・ディベロップメント実践研究センター 高原輝彦

TEL&FAX:082-424-5732

総合地球環境学研究所 源 利文

TEL:075-707-2333 FAX:075-707-2509


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