古代湖の食物連鎖の長さが短いことを発見

平成24年5月31日

古代湖の食物連鎖の長さが短いことを発見
~長い進化の歴史による影響か?~

 

広島大学サステナブル・ディベロップメント実践研究センターの土居秀幸(どい ひでゆき)テニュアトラック講師は、アメリカ・ウィスコンシン大学、ドイツ・オルデンブルク大学との共同研究で、古代湖(100万年以上の歴史を持つ湖)では、今まで長いと考えられてきた、食物連鎖の長さが短いことを、発見しました。古代湖での長い進化の歴史によって、食物連鎖が大きく変化していることを示しています。
 
土居講師らの研究グループでは、世界中に分布する古代湖(琵琶湖、バイカル湖、タンガニーカ湖など)と、約1万年前後前にできた湖沼(以下、近代湖)、30−50年前に建設されたダム湖について、文献からデータを収集して比較したところ、古代湖では、近代湖、ダム湖に比べて食物連鎖の長さが短くなっていることがわかりました。食物連鎖の長さを数値で示すと、近代湖などは平均4.6段であったのに対して、古代湖では平均3.8段と1段近い差がみられました。
※食物連鎖:生態系内の「食べるー食べられる」の関係がつながったもの。食物連鎖の長さとは、生産者から一番上位の捕食者までの連鎖の長さ。食物連鎖の長さは一定ではなく、生態系間(例えば湖沼の間)で大きな違いがあることが知られている。
※段の数字が大きいほど食物連鎖が長い(例:植物-植物を食べる昆虫-その昆虫を食べるカエル-そのカエルを食べる鳥という食物連鎖があったときに4段となる)

 
これまで、食物連鎖の長さに生態系間で大きな違いがあることは知られており、その要因としては、生態系の大きさなどの生態学的な仮説が挙げられてきました。しかし今回の研究では、進化の歴史に着目することで、その長い歴史による進化によって食物連鎖の長さが変化していることを世界で初めて明らかにしました。
古代湖は固有種(その場所にしか生息しない種、例:ビワコオオナマズ、バイカルアザラシなど)が多く、生物多様性が高いことから、生物種間の「食べるー食べられる」の関係が複雑であり、食物連鎖の長さは長くなるのではないかと考えられてきました。しかし、本研究では逆に短くなることを発見し、その要因としては、古代湖では湖の長い歴史の中で、固有種など局所的な進化によって、植食性や雑食性の種が増加し、肉食性の種の割合が減少したことから、食物連鎖の長さが短くなっていることが考えられました。
 
本研究成果は、2012年6月7日6時(日本時間)発行の科学誌「PLoS ONE」の、オンライン版(http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0037856)で公開されます。

お問い合わせ先

広島大学サステナブル・ディベロップメント実践研究センター
土居秀幸
TEL&FAX:082-424-5732


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