柿渋の強力な抗ウイルス作用を証明

平成25年2月6日

柿渋の強力な抗ウイルス作用を証明
~柿渋タンニンが種々のウイルス成分を不活性することを検証~

 

広島大学大学院医歯薬保健学研究院ウイルス学の坂口 剛正(さかぐち たけまさ)教授は、アルタン株式会社との共同研究を行い、柿渋が広い範囲の種々のウイルスを強力に不活化できることを示しました。この成果は、近年問題となっているノロウイルスの制御にも役立つ研究です。

ヒトノロウイルスは、培養系がないため、本研究は、ヒトノロウイルスの近縁のウイルスを用いて、実際のウイルスに対する作用として証明したものです。また、12種類のウイルスに対する効果判定、柿渋と他の植物由来のタンニン類(緑茶カテキンなど)との比較を行い、柿渋のみが、調べたすべてのウイルスに対して強い効果をもつことを示しました。

坂口教授らの研究グループでは、ネコカリシウイルス、ネズミノロウイルス、をはじめとしてポリオウイルス、コクサッキーウイルス、アデノウイルス、ロタウイルスの非エンベロープウイルス、ヒトインフルエンザウイルス、鳥インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、水疱性口内炎ウイルス、センダイウイルス、ニューカッスル病ウイルスのエンベロープウイルス、計12種類のウイルスを用いて、柿渋を含む植物由来タンニン7種類の抗ウイルス能を検証しました。その結果、柿渋が唯一すべてのウイルスを完全に不活化しました。緑茶カテキン、ワットルタンニンにも強い抗ウイルス能がありましたが、これらでは効果がないウイルスがありました。また、コーヒー抽出物は全くウイルス不活化能を示しませんでした。

グループはさらに柿渋の抗ウイルス能の作用機構を調べ、ウイルス表面蛋白質に柿渋が結合してウイルスを不活化していることを明らかにしました。また古くなると着色する柿渋について加速劣化試験を行い、2年間の保存に相当する劣化では、柿渋の抗ウイルス作用は失われないことを示しました。

本研究成果は、平成25年1月25日発行の科学誌「PLoS ONE」に掲載されました。(http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0055343)

また、かねてから広島大学大学院生物圏科学研究科 島本 整(しまもと ただし)教授らは、アルタン株式会社と共同研究を行い、柿渋がヒトノロウイルスを不活化する可能性があることを生化学的な方法で検証し、日本特許(共願)が成立しています。(特許第5092145号,平成24年9月28日登録)

お問い合わせ先

広島大学大学院医歯薬保健学研究科
教授 坂口 剛正
TEL:082-257-5157
Email:tsaka*hiroshima-u.ac.jp

(メールアドレスの*は半角@に置き換えて下さい)


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