特定外来生物ブルーギルの生息を水サンプルから実証

平成25年2月15日

国立大学法人 広島大学
国立大学法人 神戸大学
大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所

特定外来生物ブルーギルの生息を水サンプルから実証
~水域に溶存するDNAに着目~

 

広島大学サステナブル・ディベロップメント実践研究センターの高原輝彦(たかはら てるひこ)研究員と神戸大学(前所属、総合地球環境学研究所)の源利文(みなもと としふみ)特命助教らのグループは、ため池から採取した水に溶け込むDNAの情報を読み解くことで、特定外来生物(注1)のブルーギルが侵入しているかどうかを迅速に評価できる手法の開発に成功しました。
 
高原研究員らの研究グループはこれまでに、魚のうろこや排泄物などから湖沼の水に溶け出ているDNAに着目して、それらDNAを増幅・定量できる「定量PCR(合成酵素連鎖反応)法」(注2)を用いて、魚類の生息量を予測できる手法をモデル生物により確立していました。さらに本研究では、その方法を応用することで、特定外来生物ブルーギルが自然環境へ侵入しているかどうかを評価できるかについて検討しました。広島県内の瀬戸内島嶼などのため池70カ所を対象に調査したところ、目視観察によってブルーギルの生息が確認できた池すべてにおいて、採取した水1リットルからブルーギルのDNAが検出されました(DNAの濃縮方法は下図参照)。このことから、本手法を用いてわずか1リットルの水サンプルにDNAが存在しているかどうかを調べるだけで、その池にブルーギルが侵入しているかどうかを正確に評価できることが実証されました。

池から採取した水1リットルからDNAを抽出する手順

特定外来生物の駆除や防除に関しては、何よりもまず、それらの自然環境への侵入状況を把握する必要があります。しかし、その分布範囲の広さや捕獲の困難さなどから、網などで捕まえて生息を確認する従来の調査には多くの労力や時間を要しました。生物を捕獲する必要がない環境中のDNAに着目した本手法は、それら調査にかかるコストを大幅に削減できる可能性があります。さらに、捕獲方法が未確立の外来生物が侵入した場合には迅速な生息分布調査が可能です。今後は、生態系の管理者や技術者にも簡便に利用される手法として確立していきたいと考えています。

用語解説

(注1) 特定外来生物:もともとその地域にいなかったが人間の活動によって海外から入ってきた外来生物(移入種)のうち、特に生態系等への被害が認められるものとして、外来生物法(2004)によって規定された生物。現在、魚類ではブルーギルを含めて13種が指定されている。

(注2) 定量PCR法:DNAの一部分だけを選択的に増幅させて経時的に測定することで、DNA量を測ることができる手法。

本研究成果は、平成25年2月21日午前7時(日本時間)発行の科学誌「PLOS ONE」の、オンライン版(http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0056584)で公開されます。

お問い合わせ先

広島大学サステナブル・ディベロップメント実践研究センター 高原輝彦
TEL&FAX:082-424-5732

神戸大学大学院人間発達環境学研究科 源 利文
TEL&FAX:078-803-7743


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