豊かな生態系は水辺のレジャー利用を増加させることを発見

平成25年8月23日

国立大学法人 広島大学
公立大学法人 兵庫県立大学
国立大学法人 北海道大学

豊かな生態系は水辺のレジャー利用を増加させることを発見
~全国109河川の大規模データ解析により明らかに~

 

広島大学サステナブル・ディベロップメント実践研究センターの土居秀幸(どい ひでゆき)テニュアトラック講師、兵庫県立大学環境人間学部の片野泉(かたの いずみ)准教授、北海道大学大学院地球環境科学研究院の根岸淳二郎(ねぎし じゅんじろう)准教授らの研究グループは、生物多様性が高い河川では、人のレジャー利用(釣り、水辺での遊びなど)が増加することを明らかにしました。

近年、生物多様性の減少により、生態系が提供するサービスが減少していることが危惧されています。ここで言うサービスには、食料供給や水の保持など、環境面において人間が受ける利益のほか、レジャー、観光などの場所を提供する文化的なサービスが含まれます。この文化的サービスは、高い経済的価値を持っており、一例によれば、生態系が提供するサービスの経済的価値のうち、約40%を占めるといわれています。しかし、生物多様性や生息場所の構造など、各生態系が持つ特徴との関係はこれまで明らかにされていませんでした。

本研究では、全国にある109の1級河川全てにおける、のべ約600万人の河川のレジャー利用に関する大規模データ(国土交通省による河川利用実態調査)を解析し、以下のことを明らかにしました。

  • 生物多様性(魚類の種数)が河川水辺のレジャー利用(釣りや水辺での遊び)を増加させること(図1参照)
  • 河川の構造(護岸率、砂州、森林割合など)や水質(懸濁粒子量)、河川周辺の人口なども、河川のレジャー利用に影響を与えること(表1参照)
  • レジャーの種類(釣り、水辺での遊び、散歩、野球などのスポーツ)によって、影響を受ける要因が異なること(表1参照)

以上より、河川の生物多様性、生態系の構造や状態など生態系の様々な特徴が、文化的サービスを決める要因になっていることを証明しました。
本研究成果は、平成25年8月23日(アメリカ時間)発行のアメリカ生態学会の科学誌「Ecosphere(http://www.esajournals.org/loi/ecsp)」のオンライン版で公開されます。
論文タイトル:Effects of biodiversity, habitat structure, and water quality on human recreational use of rivers.
著者:Hideyuki Doi, Izumi Katano, Junjiro N. Negishi, Seiji Sanada, and Yuichi Kayaba

お問い合わせ先

広島大学サステナブル・ディベロップメント実践研究センター 土居秀幸
TEL&FAX:082-424-5732 email:doih*hiroshima-u.ac.jp
兵庫県立大学環境人間学部 片野 泉
TEL:079−292−9354 email:katano*shse.u-hyogo.ac.jp
北海道大学大学院地球環境科学研究院 根岸 淳二郎
TEL&FAX:011−706−2210 email: negishi*ees.hokudai.ac.jp

(*は半角@に置き換えてください。)

図1 全国109河川における魚の種数と釣り人、水辺で遊ぶ人の関係

図1 全国109河川における魚の種数と釣り人、水辺で遊ぶ人の関係

表1 各種レジャーの種類を決める要因
○が付いている要因が最良のモデルで、有意な決定要因として選ばれた。

レジャーの種類 魚の種数 砂州の割合 懸濁粒子量 周辺人口
釣り

 
水辺で遊ぶ(泳ぐ,ボートなど)  
散歩    
スポーツ(野球,サッカーなど)    

 


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