放射線被ばく後に発病する白血病の原因遺伝子を発見

平成25年9月2日

記 者 説 明 会 の ご 案 内
放射線被ばく後に発病する白血病の原因遺伝子を発見

 

広島大学原爆放射線医科学研究所の稲葉俊哉教授と本田浩章教授を中心とする研究グループ(慶應義塾大学医学部の須田年生教授、慶應義塾大学医学部の田久保圭誉講師、公益財団法人がん研究会がん研究所発がん研究部中村卓郎部長ら)は、放射線被ばく後に発病する白血病の原因遺伝子を発見しました。この研究成果により、被ばく後長時間経ってから白血病や骨髄異形成症候群(MDS)(※)が発病する仕組みが分かる可能性が出てきました。

放射線を浴びたことによる白血病やMDSの発病は、広島や長崎などの被爆地で大きな問題となってきました。また、放射線によるがんの治療後にも白血病やMDSが発病することがあり、未解決の問題となっています。

広島大学を中心とした研究グループは、被爆者や放射線治療後の白血病やMDSでは、しばしば7番染色体が失われることに着目し、7番染色体のどの遺伝子が失われることにより白血病が発病するかを調べました。そして、さまざまな根拠からある遺伝子(Samd9L)に注目しました。この遺伝子を人工的に欠損させたマウスを作製したところ、このマウスは加齢とともに白血病やMDSを発病しました。つまり、放射線による白血病やMDSの発病には、Samd9L遺伝子の欠損が重要であることがわかりました。

原爆被爆者は、原爆投下後半世紀以上経った現在でも、MDSやがんの発病が多く、なぜこのような長い期間放射線の悪影響が残るのか、十分に理解されていません。今回の発見は、被爆者や放射線治療を受けたがん患者の体内で、長時間かけて起きる変化のひとつを捉えたと考えられ、白血病やMDSの早期発見や予防に応用できる可能性があります。

本研究成果は、平成25年9月10日午前1時(日本時間)に米国の学術誌「Cancer Cell」オンライン版に掲載されます。

本研究成果につきまして、下記のとおり、記者説明会を開催しご説明いたします。
ご多忙とは存じますが、是非ご参加いただきたく、ご案内申し上げます。

日 時:平成25年9月4日(水) 11:00~12:00
場 所:キャンパス・イノベーションセンター4階 408号室 (広島大学東京オフィス 同センター4階 TEL:03-5440-9065)

出席者:広島大学原爆放射線医科学研究所 教授 稲葉俊哉、広島大学原爆放射線医科学研究所 教授 本田浩章

会場へのアクセスマップ
本件に関するお問い合わせ先

【研究内容に関するお問い合わせ先】
広島大学原爆放射線医科学研究所 教授 稲葉俊哉 (いなば としや)
TEL:082-257-5834
FAX:082-256-7103
E-mail:tinaba@hiroshima-u.ac.jp

 

【記者説明会に関するお問い合わせ先】
広島大学学術・社会産学連携室 広報グループ 岡田智代(おかだ ともよ)
TEL:082-424-6702
FAX:082-424-6040
E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp

用語説明

※ 骨髄異形成症候群(MDS)
高齢者に多い血液疾患。貧血や白血球減少が主症状。
かつては「前白血病」とよばれており、約30%が白血病に進展する。


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