これまでで最も遠い80億年前の活動銀河から超高エネルギーガンマ線を検出

平成25年10月11日

記 者 説 明 会 の ご 案 内
これまでで最も遠い80億年前の活動銀河から超高エネルギーガンマ線を検出
~より遠くの星や銀河の歴史を紐解く手がかりに~

 

広島大学宇宙科学センターの田中康之特任助教、スタンフォード国立加速器研究所の井上芳幸海外特別研究員らを中心とする研究グループは、フェルミガンマ線宇宙望遠鏡を用いて、これまでで最も遠い天体から、超高エネルギーガンマ線を検出しました。この結果は、138億年間の宇宙の歴史の中で、いつ、どのように、星や銀河が誕生し、成長したのかを解明する手がかりを与えるものです。

超高エネルギーガンマ線は、宇宙を飛び交っている背景放射(※)の光子と衝突して消えてしまいます。そのため、はるか遠方からの超高エネルギーガンマ線は衝突して消えてしまう可能性が高くなり、地球まで届くことはありません。これまで、超高エネルギーガンマ線が検出されていた最遠の天体は、現在から50億年前にある活動銀河でしたが、今回はフェルミ宇宙望遠鏡のデータを用いて、現在から80億年前の宇宙に存在する活動銀河 PKS 0426-380 から2発の超高エネルギーガンマ線を検出し、その記録を大幅に更新しました。

また、宇宙には、霧のように広がる背景放射のため、「観測できる限界」が存在します。この「観測できる限界」は、理論的研究により位置を推定されていましたが、今回超高エネルギーガンマ線が検出された活動銀河 PKS 0426-380の位置は、その「観測できる限界」の推定位置とほぼ一致することを発見しました。「観測できる限界」がどこにあるかを調べることで、背景放射の光の量を決めることが可能になります。背景放射は、太陽系内や天の川銀河内の光に邪魔されるため、直接計測が極めて困難でしたが、今回の発見により、超高エネルギーガンマ線を用いて、紫外線領域の背景放射の光の量が、銀河のたしあわせで説明できることを確認しました。

これまで、超高エネルギーガンマ線で探索できるのは、50億年前までの宇宙で、138億年という宇宙の年齢の半分にも満たない領域だけでした。今回の研究成果により、さらに30億年も遠くの天体の検出に成功したことにより、80億年前まで遡って宇宙における星や銀河の歴史を解明できるようになりました。
 

本研究の成果は、米国の学術雑誌Astrophysical Journal Lettersのオンライン版(http://iopscience.iop.org/2041-8205/)に掲載される予定です。

論文タイトル:Fermi Large Area Telescope Detection of Two Very-High-Energy(E>100 GeV)  .F Nc-ray Photons from the z = 1.1 Blazar PKS 0426-380
著者:Y. T. Tanaka, C. C. Cheung, Y. Inoue, Ł. Stawarz, M. Ajello, C. D. Dermer, D. L. Wood, A. Chekhtman, Y. Fukazawa, T. Mizuno, M. Ohno, D. Paneque, and D. J. Thompson

本研究成果につきまして、下記のとおり、記者説明会を開催しご説明いたします。
ご多忙とは存じますが、是非ご参加いただきたく、ご案内申し上げます。

日 時: 平成25年10月15日(火) 13:30~14:30
      
場 所: キャンパス・イノベーションセンター4階 408号室
(広島大学東京オフィス 同センター4階 TEL:03-5440-9065)
      
出席者: 田中 康之(国立大学法人 広島大学 宇宙科学センター 特任助教)、井上 芳幸(スタンフォード国立加速器研究所 海外特別研究員)
※井上海外特別研究員は、インターネット中継での出席となります。

会場へのアクセスマップ
本件に関するお問い合わせ先

【研究内容に関するお問い合わせ先】
国立大学法人 広島大学 宇宙科学センター
特任助教 田中 康之(たなか やすゆき)
Tel: 090-2383-5752
E-mail: ytanaka*hep01.hepl.hiroshima-u.ac.jp
 
【記者会見に関するお問い合わせ先】
国立大学法人 広島大学 学術・社会産学連携室 広報グループ
新藤季奈(しんどう きな)
TEL:082-424-4518 FAX:082-424-6040
E-mail:koho*office.hiroshima-u.ac.jp
 
(E-mailの*は半角@に置き換えてください。)

用語説明

※「背景放射」とは、全宇宙を満たしている極めて微弱な放射です。下の図は、街あかりによって夜空が明るく光っている様子を示しています。例えば、白のボックスで示した領域を観測したとしましょう。星以外にも、街あかりという領域全体を覆うぼやっと広がった「前景」放射が見えています。
この場合と同様に、宇宙を精密に観測すると、何もない領域でも、ぼやっと光っており、それらはほとんどの場合、興味のある天体よりも向こう側にあるので、「背景」放射と呼ばれています。そして、それは宇宙の歴史を通して作られたすべての星からの光です。
しかし、可視赤外線領域の観測では、太陽系内の火星と木星の間にある多量の塵からの光が混入するため、宇宙背景放射の「正確な」観測は非常に難しいという問題があります。

街あか りによって夜空が明るく光っている様子


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