軟骨形成を司るタンパク質を発見

平成25年12月4日

記 者 説 明 会 の ご 案 内

軟骨形成を司るタンパク質を発見
~変形性関節症の治療に新たな道~

 

広島大学大学院医歯薬保健学研究院の今泉和則教授・斎藤敦助教らの研究グループは、軟骨の成長を促すタンパク質を発見し、軟骨が出来上がる仕組みを解明しました。軟骨形成の鍵を握るのは、BBF2H7と呼ばれるタンパク質で、BBF2H7がなくなったマウスでは体のあらゆる部位で軟骨形成が極端に悪くなることがわかりました(図1)。

手や足の骨は、胎児期において骨になる場所に一旦軟骨ができ、あとでその部分を骨に置き換えることで作られていきます。この仕組みは軟骨内骨化と呼ばれ、胎児の発生の段階で精密にコントロールされています。しかし軟骨内骨化が上手くいかない場合には軟骨無形成症になり四肢短縮型低身長などを起こします。軟骨内骨化の仕組みはさまざまなタンパク質が重要な役割を果たしていることが以前から予想されていましたが、詳細な分子機構は良くわかっていませんでした。

今回、軟骨細胞の中から細胞の外に放出されたタンパク質BBF2H7の一部分に軟骨細胞を増殖させる働きがあることを突き止めました。一方、細胞の外に放出されずに細胞内にとどまる部分には軟骨成分(マトリックス)の産生に不可欠な役割を担っていることもわかりました(図2)。この2つの異なった軟骨細胞内での制御機構を同時に作動させることで、BBF2H7は軟骨を成長させ骨に置き換える軟骨内骨化の主役として働くことが解明できました。

軟骨の障害によって起こる病気は、軟骨無形成症以外に大人になってから発症する変形性関節症があります。変形性関節症は筋力低下、加齢、肥満などのきっかけにより膝関節などの関節軟骨の変形、断裂で起きるとされています。大人になった関節軟骨は再生能力が低いため一旦発症してしまうと自力では修復不能で、病状が悪化すれば手術による治療を施すしか手がありません。日本だけでも700万人以上が罹患しているといわれていますが、根本治療法がないため新しい治療薬の開発が待ち望まれています。

BBF2H7は細胞外に放出されて軟骨細胞を増殖させる能力があるため、ダメージを受けた関節軟骨の表面に投与するだけで関節軟骨を再生できる可能性があります。大人の関節軟骨におけるBBF2H7の働きをさらに詳細に解析を進め、変形性関節症の根本治療に結びつけていきます。

本研究の成果は、平成25年12月13日午前2時(日本時間)米国の学術雑誌「Molecular Cell」のオンライン版で公開されます。
論文タイトル:Chondrocyte Proliferation Regulated by Secreted Luminal Domain of ER Stress Transducer BBF2H7/CREB3L2.
著者:A. Saito, S. Kanemoto, Y. Zhang, R. Asada, K. Hino, K. Imaizumi

 

野生型 BBF2H7欠損

図1.BBF2H7欠損マウスの骨格染色

図1.BBF2H7欠損マウスの骨格染色

軟骨(水色)の形成が著しく悪くなっている。軟骨の形成が悪いため軟骨内骨化が障害され、四肢の骨(赤)がほとんど作られない。

図2.BBF2H7の働き

図2.BBF2H7の働き

BBF2H7は小胞体で2つの断片に切り離され、一方(C-末端)は細胞外に放出された後、ヘッジホッグと結合する。さらに周辺軟骨細胞の細胞膜上に存在するPtch1という受容体に結合するとヘッジホッグシグナルが活性化して細胞は増殖を開始する。もう一方の断片(N-末端)は軟骨マトリックスの産生を促進する。

本研究成果につきまして、下記のとおり、記者説明会を開催しご説明いたします。
ご多忙とは存じますが、是非ご参加いただきたく、ご案内申し上げます。

日時: 平成25年12月10日(火) 15:30~16:30
場所: キャンパス・イノベーションセンター4階 408号室
(広島大学東京オフィス 同センター4階 TEL:03-5440-9065)
出席者: 今泉 和則(広島大学大学院医歯薬保健学研究院 教授)

会場へのアクセスマップ
研究内容に関するお問い合わせ先

国立大学法人 広島大学 大学院医歯薬保健学研究院
教授 今泉 和則  (いまいずみ かずのり)
TEL: 082-257-5130
E-mail:imaizumi*hiroshima-u.ac.jp

記者会見に関するお問い合わせ先

国立大学法人 広島大学 学術・社会産学連携室 広報グループ
主査 楠本 記章(くすもと のりあき)
TEL:082-424-6727 FAX:082-424-6040
E-mail:koho*office.hiroshima-u.ac.jp

(E-mail:の*は半角@に置き換えてください。)


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