心臓・血管系の音・振動情報を手軽にモニタリングし、可聴化するシステムを開発

平成26年9月4日

国立大学法人 広島大学
国立大学法人 東京大学

記 者 説 明 会 の ご 案 内

心臓・血管系の音・振動情報を手軽にモニタリングし、可聴化するシステムを開発
―日々の健康管理・体調不良の早期発見に応用―

ポイント

  1. 背部から心臓・血管系の音・振動情報(体表脈波(APW: Aortic Pulse Wave))をモニタリングできるセンシング技術および可聴化技術を開発
  2. APWは、通常の生活をしながら非拘束の状態で計測可能なだけでなく、心電図から得られる心拍変動の時系列情報(RRI: R wave to R wave interval)と高い相関性を持つ
  3. ベッドや椅子、自動車用シートへの設置を目指し、循環器系のモニタリングや日々の健康管理に応用

概要

広島大学大学院工学研究院の辻 敏夫教授、大学院医歯薬保健学研究院の吉栖 正生教授、東京大学大学院工学系研究科の金子 成彦教授らを中心とする研究チームは、株式会社デルタツーリングとの共同研究により、健常者の循環器系の異変を早い段階で捉えるための、生体情報常時モニタリングシステムを開発しました。

平成24年の関越自動車道、平成26年の北陸自動車道における高速バスの事故は、運転手の居眠りや、体調の急変に起因すると思われる疾病による可能性が疑われています。警察庁によると、平成23年に発生した交通事故のうち、運転中の「発作」や「急病」などが原因と思われる事故が少なくとも254件あります。なかでも、心臓病と脳血管障害を原因とする事故件数の合計が5割を占め、てんかんによる事故件数を上回っています。これらを防ぐには、健常者自身が自らの健康状態を知り、特に異常が顕在化しにくい循環器系の異常を早い段階で捉え、医師に相談できるシステムを確立する必要性があります。
循環器系の異変を早い段階で捉えるためには、生体情報を常時モニタリングすることが有効です。これまで、常時モニタリングするためのセンサとして、電力消費が少ない圧電センサが一般的に使用されてきましたが、外乱に対する脆弱性があるという問題点がありました。そこで、ノイズや外乱の少ない音・振動情報を得るため、背中から捉えた場合、筋肉等により20Hz前後の音・振動情報に変換される心音に着目し、マイクロフォンセンサを用いた実験を行い、生体情報常時モニタリングシステムを開発しました。

このたび開発したセンサシステムは、外部振動によって20Hz前後の振動を作る固有振動子を内在しており、背中から入力される20Hz前後の音・振動情報と合成することにより、歪みを含んだ共振波形を作ります。この歪んだ波形を信号処理技術により、RRIとの相関性の高い、1Hz前後のAPWに近似する波形に変換することができます。また、このセンサシステムを椅子等に内蔵し、捉えた心臓・血管系の音・振動情報を可聴化することにも成功しました。
本システムはベッドや椅子、自動車用シートへの内蔵を目指しています。循環器系の生体情報が常時、容易に入手できることにより、日々の健康管理ツールとしての活用に期待できます。

この研究成果は、平成26年11月以降、日本設計工学会の学会誌「設計工学」に掲載される予定です。

【論文タイトル】体幹生体信号簡易センシングシステムの開発
【著者】 小島重行*1、前田慎一郎*1、内川竜一*1、延廣良香*1、青井幸佑*1、小倉由美*1、藤田悦則*1、村田幸治*2、亀井勉*3、辻敏夫*4、吉栖正生*5、金子成彦*6

*1(株)デルタツーリング *2 山陽学園大学大学院看護学研究科 *3 長崎大学産学官連携戦略本部 *4 広島大学大学院工学研究院 *5 広島大学大学院医歯薬保健学研究院 *6 東京大学大学院工学系研究科

本研究成果につきまして、下記のとおり、記者説明会を開催しご説明いたします。ご多忙とは存じますが、是非ご参加いただきたく、ご案内申し上げます。

日時: 平成26年9月8日(月)13:30~14:30

場所: キャンパス・イノベーションセンター5階 リエゾンコーナー
(広島大学東京オフィス 同センター4階 TEL:03-5440-9065)

出席者:
辻 敏夫(広島大学大学院工学研究院 教授)
吉栖 正生(広島大学大学院医歯薬保健学研究院 教授)
金子 成彦(東京大学大学院工学系研究科 教授)
藤田 均(株式会社デルタツーリング 代表取締役社長)

※当日はデモ機を用いたモニタリングの様子をご覧いただけます。

会場へのアクセスマップ
研究内容に関するお問い合わせ先

国立大学法人広島大学 大学院工学研究院
教授 辻 敏夫 (つじ としお)
TEL:082-424-7677 FAX:082-424- 2387
E-mail:tsuji@bsys.hiroshima-u.ac.jp

国立大学法人広島大学 大学院医歯薬保健学研究院
教授 吉栖 正生 (よしずみ まさお)
TEL:082-257-5120 FAX:082-257-5124
E-mail:yos1956oktbh@hiroshima-u.ac.jp

国立大学法人東京大学 大学院工学系研究科
教授 金子 成彦(かねこ しげひこ)
TEL、FAX:03-5802-2946
E-mail:kaneko@mech.t.u-tokyo.ac.jp

記者会見に関するお問い合わせ先

国立大学法人広島大学 学術・社会産学連携室
広報グループ 新藤 季奈(しんどう きな)
TEL:082-424-4518 FAX:082-424-6040
E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp

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