心血管病、脳卒中、認知症のリスクの新規有望マーカーの可能性!疾患の時限爆弾の導火線「テロメアGテール」

平成27年6月8日

記 者 説 明 会 (6月9日11時・東京)の ご 案 内

心血管病、脳卒中、認知症のリスクの新規有望マーカーの可能性!
疾患の時限爆弾の導火線「テロメアGテール」

 

ポイント

  1. 染色体の最末端DNA(DNAの一番端)のテロメアGテールは、血管内皮機能が障害されている患者や広範囲な大脳白質病変を有する患者で顕著に短縮する。
  2. テロメアGテール長が、血管内皮機能評価で用いられる血流依存性血管拡張反応(FMD)と相関する。
  3. テロメアGテール長は、頭部MRIで評価した大脳白質病変の重症度に関連する。
  4. テロメアGテール長が心血管病、脳卒中、認知症などの病気の発症リスクを評価する新規バイオマーカーとなる可能性が高く、未病検査として普及すれば医療費の大きな削減につながる可能性がある。

概要

広島大学大学院医歯薬保健学研究院 脳神経内科学(祢津智久特任助教、松本昌泰教授)と細胞分子生物学(田原栄俊教授)の研究グループが心血管リスク因子を有する患者を対象とした横断研究で、白血球テロメアGテール長が血管内皮機能や大脳白質病変に強く関連していることを報告しました。

テロメアGテールとは染色体DNAの末端にあるテロメア領域の最末端部分の一本鎖DNAであり(図1)、染色体の機能維持に極めて重要な役割を示すことが実験では示唆されていましたが、テロメアGテール長の臨床的意義は明らかではありませんでした。本研究では田原教授が開発したテロメアGテールHPA法を用いて(Tahara H et al, Nat Methods. 2005)、患者さんの白血球テロメア長、白血球テロメアGテール長を測定し、同一患者で血流依存性血管拡張反応(Flow-mediated dilation、FMD)を用いた血管内皮機能や頭部MRIで評価した大脳白質病変の重症度との関連性を検討しました。その結果、テロメアGテール長がこれらの因子と強く関連していることが明らかになりました(図2、図3)。

本研究で用いた測定技術は、すでに広島大学発のベンチャーである株式会社ミルテルで臨床実用化されている技術であります。また、昨年には広島大学腎臓内科学との共同研究で、透析患者において白血球テロメアGテール長の短縮が心血管イベント発症に関連することを発表させていただいています(Hirashio S et al, Clin J Am Soc Nephrol. 2014)。

血管内皮機能障害は動脈硬化疾患と強く関連し、心血管病の発症と関連すること、また大脳白質病変は脳卒中の発症や再発、認知症に強く関連することなどから、テロメアGテール長が心血管病、脳卒中、認知症などの病気の発症リスクを評価する新規バイオマーカーとなる可能性が高いと評価され、The Lancet誌とCELL press誌の共同のOpen journalであるEBioMedicineに掲載されることが決まりました。

白血球テロメアGテール長は心血管病、脳卒中、認知症の発症リスクを採血で検査でき、超高齢社会におけるこれらの疾患予防につながる成果として期待できます。

 

図1. テロメア(染色体DNAの末端)とテロメアGテール

図1. テロメア(染色体DNAの末端)とテロメアGテール

 

図2. 血管内皮機能とテロメアGテールの関連
血管内皮機能が障害されている(FMDが低値)患者ではテロメアGテールは短縮している。

図2. 血管内皮機能とテロメアGテールの関連

 

図3. 大脳白質病変とテロメアGテールの関連
大脳白質病変のスコアが高い患者ではテロメアGテールは短縮している。

図3. 大脳白質病変とテロメアGテールの関連

【掲載雑誌】 EBioMedicine

掲載雑誌 EBioMedicine

【論文タイトル】
Telomere G-tail length is a promising biomarker related to white matter lesions and endothelial dysfunction in patients with cardiovascular risk: a cross-sectional study(和訳:テロメアGテール長は、大脳白質病変および血管内皮機能のリスクを評価する有望なマーカーである:横断的研究)

【著者】祢津智久、細見 直永 高橋哲哉、阿武久美子、青木 志郎、嶋本顕、丸山博文、林 奉権 、松本昌泰、田原栄俊

【URL】 http://dx.doi.org/10.1016/j.ebiom.2015.05.025
DOI: 10.1016/j.ebiom.2015.05.025

本研究成果につきまして、下記のとおり、記者説明会を開催しご説明いたします。
ご多忙とは存じますが、是非ご参加いただきたく、ご案内申し上げます。

日 時:平成27年6月9日(火) 11:00~12:00
場 所:キャンパス・イノベーションセンター4階408号室(JR田町駅徒歩1分)
           (広島大学東京オフィス 同センター4階 TEL:03-5440-9065)

会場へのアクセスマップ

出席者:
 広島大学大学院医歯薬保健学研究院 特任助教 祢津智久
 広島大学大学院医歯薬保健学研究院 教授 松本昌泰
 広島大学大学院医歯薬保健学研究院 教授 田原栄俊

研究内容に関するお問い合わせ先

広島大学大学院医歯薬保健学研究院
基礎生命科学部門
薬学分野 細胞分子生物学 教授 田原栄俊(たはら ひでとし)
TEL:082-257-5290
FAX:082-257-5294
E-mail:toshi@hiroshima-u.ac.jp(@は半角に直して送信して下さい)

記者説明会に関するお問い合わせ先

広島大学学術・社会産学連携室 広報グループ 和木光江(わき みつえ)
TEL:082-424-6013
FAX:082-424-6040
E-mail:koho-gl@office.hiroshima-u.ac.jp(@は半角に直して送信して下さい)


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