C型肝炎ウイルス薬剤耐性変異の迅速・高感度な測定法を開発

平成27年6月22日

C型肝炎ウイルス薬剤耐性変異の迅速・高感度な測定法を開発

研究成果のポイント

  • ウイルス量が極度に低い血清サンプルでなければ、ほぼ全例でC型肝炎ウイルス薬剤耐性変異の有無が判定できる
    *変異型ウイルスの割合が1-2%であっても検出可能である。従来法に比べて、より高感度である

概要

広島大学大学院医歯薬保健学研究院の茶山一彰教授、越智秀典講師らの研究グループは、ジェノタイプ1型のC型肝炎ウイルス治療薬NS5A阻害剤に対する薬剤耐性変異の有無を迅速・高感度に測定できる方法を開発しました。薬物耐性の有無の判定が98.8%の検体で可能となりました。また、変異型ウイルスの割合が1-2%であれば検出でき、従来法に比べて、より高感度になりました。
今回の研究成果は、C型慢性肝炎の内服治療の成否を左右する薬物耐性変異の有無を判定する検査の普及と、精度向上に役立つことが期待されます。この研究成果は米国のオンライン科学誌PLoS One(6月17日付け)に掲載されました。

背景

日本人のC型肝炎に占めるジェノタイプ1型の頻度は70%と推計されています。NS5A阻害剤・ダクラタスビルとNS3阻害剤・アスナプレビルによる経口2剤併用療法は、IFNを使用しない経口薬のみのジェノタイプ1型のC型肝炎に対する治療法として、世界に先駆けて昨年7月に日本で製造販売承認されました。
この経口2剤併用療法では、薬剤投与開始前にウイルスが耐性変異(NS5A領域のY93変異)を有しない場合の治癒率は90%以上に達する一方、耐性変異を有する場合の治癒率は50%未満にとどまっています。経口2剤併用療法で著効が得られなかった場合、高率に多剤耐性変異を獲得することが知られているため、治療を始める前に薬剤耐性の有無を確認することが、極めて重要であるとされています。

研究成果の内容

nested-PCRとオリゴヌクレオチドプローブとフラップエンドヌクレアーゼによるアレル特異的蛍光検出アッセイ系(Invader®法)を組み合わせることによって、血清に含まれるC型肝炎ウイルスのNS5A-Y93変異を高感度、高精度に検出する測定法の開発に成功しました。
これまでに報告されたY93薬剤耐性変異測定法の判定成功率は約90%に留まっていましたが、今回開発した測定法では98.8%の検体で判定できました。また、変異型ウイルスの割合が1-2%あれば検出可能でした。ダイレクトシークエンス法の検出限界(10-20%)に比べて高感度に変異型ウイルスを検出できるようになりました。
これにより、ウイルス量が極度に低い血清サンプルでなければ、ほぼ全例で薬剤耐性変異の有無が判定可能となります。また、大量サンプルを処理するうえでも従来法より優れています。

今後の展開

薬物耐性の有無の判定はC型慢性肝炎の内服治療の成否を左右するとされています。今回の成果は、C型肝炎ウイルスの薬剤耐性変異検査の普及と精度向上に役立つと期待されます。
ターゲットの周辺配列に変異が多く含まれている場合、オリゴプローブによる変異判定は通常困難とされていますが、本法を応用することで解決できる可能性があります。各種薬剤耐性変異測定等に広く応用することができます。

参考資料

《本測定法の概略図》

本測定法の概略図

用語解説

PCR(Polymerase Chain Reaction):プライマー対と酵素によってDNAのある部分だけを選択的に複製増幅させる方法。nested-PCRでは外側のプライマーと内側のプライマーを使って2段階のPCRを行う。

 

Invader(R)反応:野生型と変異型の配列に特異的に結合するプローブを用いて結合状態を認識して切断する酵素(フラップエンドヌクレアーゼ)が2段階に反応することで対応する2種類の蛍光を定量的に発生する系。
 

お問い合わせ先

大学院医歯薬保健学研究院 応用生命科学部門 消化器・代謝内科学
Tel:082-257-5190 FAX:082-255-6220
E-mail:chayama@hiroshima-u.ac.jp
(@は半角に直して送信して下さい。)


up