白血病幹細胞の栄養メカニズムを解明

平成27年8月19日

記 者 説 明 会 (8月20日13時30分・広島)の ご 案 内
白血病幹細胞の栄養メカニズムを解明
-再発を軽減する新しいコンセプトの治療法開発に期待-

本研究のポイント

  • 抗がん剤治療後の再発の原因となる細胞として知られている慢性骨髄性白血病(CML)(*1)幹細胞(*2)の維持に必要な栄養源獲得のメカニズムを、動物モデルを使って解明しました。
  • さらに、この栄養補給の阻害剤を既存の抗がん剤治療と併用することで再発を軽減する新しい治療法を考案しました。

概要

CMLは白血病の一種であり、治療後の再発が重大な問題となっています。広島大学原爆放射線医科学研究所の仲 一仁准教授(前金沢大学がん進展制御研究所准教授、平成27年4月1日より現職)、瀧原 義宏教授らは、韓国CHA大学校CHAがん研究所のSeong-Jin Kim教授、金沢大学医薬保健研究域薬学系の加藤 将夫教授らとの国際共同研究を平成22年より行い、CML再発の原因となる「CML幹細胞」の代謝産物を解析し、CML幹細胞の栄養源となる物質を発見しました。さらに、動物モデルを使った研究により、この栄養補給のメカニズムをおさえることで、CMLの再発を軽減する新しい治療法を開発しました(特許出願中)。
この治療法は、CML幹細胞の発生起源である造血幹細胞には作用しないことから、副作用の少ない新しいコンセプトの治療法として期待されます。この研究成果は英国のオンライン科学誌Nature Communicationsに8月20日午後6時(日本時間)に掲載される予定です。

論文情報

掲載誌:Nature Communications
論文タイトル:Dipeptide species regulate p38MAPK-Smad3 signalling to maintain chronic myelogenous leukaemia stem cells.
(和訳) ジペプチド種がp38MAPK-Smad3シグナルの制御によりCML幹細胞を維持する
著者: Kazuhito Naka (仲 一仁) *, Yoshie Jomen (定免由枝), Kaori Ishihara (石原薫理), Junil Kim, Takahiro Ishimoto (石本尚大), Eun-Jin Bae, Robert P. Mohney, Steven M. Stirdivant, Hiroko Oshima (大島浩子), Masanobu Oshima (大島正伸), Dong-Wook Kim, Hiromitsu Nakauchi (中内啓光), Yoshihiro Takihara (瀧原義宏), Yukio Kato (加藤将夫), Akira Ooshima (大島章), Seong-Jin Kim. *
*Corresponding author(責任著者)

本研究成果につきまして、下記のとおり、記者説明会を開催しご説明いたします。
ご多忙とは存じますが、是非ご参加いただきたく、ご案内申し上げます。

日 時:平成27年8月20日(木) 13:30~14:30
場 所:広島大学霞キャンパス研究棟B歯学部大会議室

キャンパスマップ

出席者:原爆放射線医科学研究所 准教授 仲 一仁

用語の解説

*1慢性骨髄性白血病(CML): 成人における骨髄増殖性腫瘍。発症原因として恒常的チロシンキナーゼ活性を示すBCR-ABL1が知られている。数年の慢性期の後、移行期を経て、急性転化期へと進行するため、慢性期のうちに充分な治療を行うことが重要となる。

*2慢性骨髄性白血病(CML)幹細胞:CML細胞を生み出す供給源となる細胞。正常造血幹細胞が発生起源として知られている。チロシンキナーゼ阻害剤に対して抵抗性を示す。治療後、残存したCML幹細胞が再発を起こす。

研究内容に関するお問い合わせ先

原爆放射線医科学研究所放射線災害医療研究センター
幹細胞機能学研究分野
准教授 仲 一仁(なか かずひと)
Tel/FAX:082-257-5808
E-mail:kanaka55@hiroshima-u.ac.jp

記者説明会に関するお問い合わせ先

広島大学学術・社会産学連携室 広報グループ
新藤 季奈(しんどう きな)
TEL:082-424-6781
FAX:082-424-6040
E-mail:koho@office.hiroshima-u.ac.jp


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