慢性骨髄性白血病(CML)再発を克服する次世代治療薬の共同研究をスタート

平成27年8月20日

慢性骨髄性白血病(CML)再発を克服する次世代治療薬の共同研究をスタート
-カルナバイオサイエンス株式会社と共同研究を実施-

 

広島大学原爆放射線医科学研究所の瀧原 義宏教授、仲 一仁准教授らは、カルナバイオサイエンス株式会社と共同で慢性骨髄性白血病(CML)(*1)幹細胞(*2)に対する新しい治療薬の開発を目指した共同研究契約を締結しました。本研究では、実験動物モデルを駆使して、CMLの再発を克服する次世代のCML治療薬の開発を行う計画です。

CMLは白血病の一種で、治療後の再発が重大な問題となっています。これまでCML患者の特効薬として、世界初の分子標的医薬として知られるチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)(*3)が開発され、治療成績は飛躍的に改善されました。しかし、このTKIをもってしてもCMLは根治せず、再発を起こしてしまうことが明らかになってきました。またTKIは高価なため、近い将来、患者と国家の医療費負担を増大させる一因となることが懸念されています。

近年、CML再発の原因として「CML幹細胞」に注目が集まっています。CML幹細胞は大量のCML細胞を生み出すもととなる細胞です。抗がん剤による治療後にCML幹細胞が残存してしまうと、そこから大量のCML細胞が作り出され、再発が引き起こされます。すなわち、CMLの再発を克服するには、CML幹細胞を根治する新しい治療薬を開発することが重要となります。

原爆放射線医科学研究所の瀧原義宏教授、仲 一仁准教授らの研究グループは、CML幹細胞の維持や抗がん剤抵抗性における先駆的な研究を行ってきました。また、カルナバイオサイエンス社はがん細胞のリン酸化シグナルを標的とする治療薬の研究で世界最高水準の高い技術力を誇るバイオベンチャーです。両者のノウハウを結集し、CML幹細胞を標的とする新世代の医薬品候補化合物の創製を目指します。この新薬とTKIを併用することで、CMLの再発を克服する次世代の治療法となることが期待されます。

次世代のCML治療

用語の解説

*1慢性骨髄性白血病(CML): 成人における骨髄増殖性腫瘍。発症原因とし恒常的チロシンキナーゼ活性を示すBCR-ABL1が知られている。数年の慢性期の後、移行期を経て、急性転化期へと進行するため、慢性期のうちに充分な治療を行うことが重要となる。

*2慢性骨髄性白血病(CML)幹細胞:CML細胞を生み出す供給源となる細胞。正常造血幹細胞が発生起源として知られている。TKIに対して抵抗性を示す。治療後、残存したCML幹細胞が再発を起こす。

*3チロシンキナーゼ阻害剤(TKI):BCR-ABL1の恒常的なチロシンキナーゼ活性を抑制する世界初の分子標的医薬。CML患者の治療を劇的に改善 した。この功績により開発者らはアメリカのノーベル賞と言われるラスカー賞を2009年に受賞している。しかし、治療後の再発が臨床上の重大な問題となっ ている。

お問い合わせ先

原爆放射線医科学研究所放射線災害医療研究センター
幹細胞機能学研究分野  
准教授 仲 一仁(なか かずひと)
Tel/FAX:082-257-5808
E-mail:kanaka55*hiroshima-u.ac.jp(*は@に置き換えてください)


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