日本医療研究開発機構 革新的先端研究開発支援事業(PRIME)「画期的医薬品等の創出をめざす脂質の生理活性と機能の解明」に採択

平成27年11月27日

日本医療研究開発機構 革新的先端研究開発支援事業(PRIME)
「画期的医薬品等の創出をめざす脂質の生理活性と機能の解明」に採択

 

平成27年度に新設された日本医療研究開発機構(AMED)革新的先端研究開発支援事業(PRIME)「画期的医薬品等の創出をめざす脂質の生理活性と機能の解明」に、本学原爆放射線医科学研究所 宮本達雄講師の提案した「コレステロールが制御する繊毛機能とその破綻」が採択されました。

採択課題名

コレステロールが制御する繊毛機能とその破綻

研究代表者

広島大学 原爆放射線医科学研究所
放射線ゲノム疾患研究分野 講師 宮本 達雄

研究概要

人間の体を構成するほとんどの細胞の表面に、一次繊毛と呼ばれる数マイクロメートルの1本の毛様に発達する突起構造があります。一次繊毛を包む細胞膜(繊毛膜)には個体発生や組織幹細胞の維持を担う細胞外シグナル分子の受容体が集積しており、一次繊毛は細胞の「センサー(感覚器官)」として機能します。生まれつき繊毛の構造や機能に異常がある場合、多発性腎嚢胞や多指症などの先天奇形に特徴づけられる「繊毛病」(*1)を発症します。

本研究課題は、一連の遺伝性コレステロール代謝不全疾患(*2)が繊毛病を合併することに着目して、繊毛膜に局在するコレステロールが一次繊毛の「シグナルセンサー」機能(*3)の分子実体であることを実証します。

本研究成果は、脂質繊毛学(Lipid Ciliology)という新たな基礎研究領域の開拓につながり、ヒト受精卵からヒトの「かたち」が作られるプロセスにおけるコレステロールの役割を解き明かすことができます。また、繊毛膜には「がん」関連受容体やヒトの行動を制御する神経ペプチドやホルモンに対する受容体が集積しており、繊毛コレステロールは「がん」や「精神・神経疾患」の新たな創薬ターゲットであると考えられます。

本研究ではヒト疾患の遺伝医学、ゲノム編集技術による疾患モデル作製、細胞生物学を統合した独自のアプローチを用いて、コレステロールの新たな生理機能の解明と繊毛コレステロール制御剤の開発を目指します。

※平成27年度 革新的先端研究開発支援事業については、こちらをご覧ください。
http://www.amed.go.jp/news/program/010720150608_kettei.html

用語説明

*1繊毛病
繊毛を作る遺伝子や繊毛で機能する遺伝子が生まれつき壊れている一連の遺伝病。臨床的には、多発性腎嚢胞や多指症、肥満など特徴的な先天奇形を示す。

*2遺伝性コレステロール代謝不全疾患
生まれつきコレステロールを作る遺伝子群が壊れており、体内のコレステロールが欠乏する一連の遺伝病。多彩な先天奇形を伴う。

*3「シグナルセンサー」機能
繊毛膜に集まる分子のなかには、がん細胞の増殖を促す細胞外タンパク質の受容体や、摂食行動などの高次な神経活動を司るホルモンの受容体があり、繊毛が細胞外の情報(「細胞外シグナル」)を受容する「センサー」として機能する。

お問い合わせ先

広島大学 原爆放射線医科学研究所 放射線ゲノム疾患研究分野
宮本 達雄
電 話 : 082-257-5811
e-mail : t-miyamoto@hiroshima-u.ac.jp
(@を半角に置き換えてください)


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