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【研究成果】肝臓移植後の肝癌再発予防を目指すNK細胞治験を開始! -通常は捨てられる灌流液(かんりゅうえき)から 免疫細胞の「NK細胞」を回収・活性化して活用-

本研究成果のポイント

 広島大学病院は、肝硬変が進み、肝機能が大きく低下した「非代償性肝硬変」(※1)を合併する肝細胞がん患者を対象に、肝移植後の肝癌再発を予防する新たな治療法を目指し「第I相医師主導治験(※2)」を始めます。

 具体的には、通常、移植する肝臓から廃棄される灌流液(肝臓の血管内を洗い流した液体)から、癌細胞などを攻撃する免疫細胞のナチュラルキラー(NK)細胞を回収・活性化し、肝移植後5日目に1回投与する計画です。

 治験の目的は、投与後3か月間の安全性の評価であり、肝細胞がんの再発などの有効性も調べますが、その効果を判断するものではありません。

概要

 広島大学病院 移植外科(治験責任医師:大段秀樹)は、生体部分肝移植を受ける肝細胞がん患者を対象に、ドナー肝臓由来の免疫細胞である「NK細胞」の働きを利用した術後免疫賦活療法(※3)の安全性を調べる、単施設・非盲検(※4)の第I相医師主導治験を計画しています。
 NK細胞は、がん細胞などの異常な細胞を見つけて攻撃する免疫細胞です。今回の治験では、通常は廃棄されるドナー肝の灌流液からNK細胞を回収し、培養して活性化させたうえで、肝移植後5日目の患者へ投与します。
NK細胞の量が異なる2つのグループ(各3例)で、投与後3か月間の安全性を主に確認し、効果についてもあわせて調べます。

社会的背景と研究の経緯

 非代償性肝硬変を合併する肝細胞がんでは、肝移植後も拒絶反応を防ぐための免疫抑制が必要です。免疫抑制薬を使用するため、肝移植後の肝細胞がん再発は進行性で有効な治療手段は確立していません。
 研究グループは、通常廃棄されるドナー肝の灌流液からNK細胞を含むリンパ球を回収し、5日間培養して活性化する方法を研究してきました。過去の臨床研究では、広島大学で24例、米国マイアミ大学で17例の安全性と投与細胞数による成績向上を報告しました(Ohira M, et al. Cancer Immunol Immunother 2022)。今回の治験では、再生医療等製品としての承認を目指して厳密な品質管理の下で調製した細胞について、まず安全性を確認します。

治験の方法

  1. 対象:18歳以上で、生体部分肝移植を受ける非代償性肝硬変合併肝細胞がん患者のうち、所定の適格基準を満たす方
  2. 細胞調製・投与:灌流液から細胞を回収して5日間培養・品質確認し、術後5日目に30分~1時間かけて静脈内へ1回投与
  3. 用量・観察:低用量5,000万細胞または高用量2億細胞(各±25%)。投与後3か月の安全性を主要評価し、肝移植後1年まで観察

今後の展開

 安全性に関する基礎情報が得られた場合、再発予防効果を検証する次段階の試験設計につなげます。現時点で治療効果は確立しておらず、承認された標準治療ではありません。

研究について

 本治験は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)令和8年度 再生医療等実用化研究事業「肝細胞癌に対する肝臓移植後の再発危険群に対するドナー肝臓由来活性化ナチュラルキラー(NK)細胞を用いた術後免疫賦活療法の安全性を検討する第I相医師主導治験」の支援を受けて実施します。

参考資料

資料1:ドナー肝臓由来NK細胞療法の概要
資料2:治験計画の概要
資料3:これまでの研究と今回の治験

用語解説

(※1) 非代償性肝硬変
 肝硬変が進行し、肝臓の機能が大きく低下した状態です。黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、腹水(お腹に水がたまる)、肝性脳症(意識がもうろうとする)などの症状がみられることがあります。内科的な治療だけでは十分な改善が
得られない場合には、肝移植が治療の選択肢となります。

(※2) 第I相医師主導治験
  医師が自ら計画・実施する治験のうち、新しい治療法の安全性や適切な投与量などを主に確認する初期段階の治験です。

(※3) 術後免疫賦活療法
 手術後に低下したり、十分に働かなくなったりした免疫の力を高め、体内に残っている可能性のあるがん細胞などを排除することを目的とした治療です。今回の取り組みでは、がん細胞を攻撃する働きを持つNK(ナチュラルキラー)細胞などの免疫機能を利用し、術後のがん再発を抑えることを目指す治療を指します。

(※4) 非盲検
  患者と医療者の双方が、どのような治療を受けているかを把握した上で行う試験のことです。

【お問い合わせ先】

大学院医系科学研究科 消化器・移植外科学
教授 大段 秀樹
Tel:082-257-5220 FAX:082-257-5224
E-mail:hohdan*hiroshima-u.ac.jp
 

(*は半角@に置き換えてください)


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