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注目される最先端研究の一例 2016

卓越した研究力で、時代を牽引

研究者INTERVIEW 1

観光を多様な角度から見つめ 持続可能なメカニズムを探る

大学院総合科学研究科 教授 Funck Carolin(フンク カロリン)

 

変わりゆく日本の観光事情とその問題点

私は元々地理学を専門にしていましたが、来日後に日独の観光スタイルの違いに興味を持ったことから、観光地理学の研究に取り組み始めました。地域の観光地としての発展に寄与している要因や、観光 客がその土地に抱くイメージなどの調査を行いながら、俯瞰的に地域と観光との繋がりを探っています。日本は国策として2003年頃からインバウンド観光に力を入れ始め、外国人観光客の数はここ数年で急増しました。以前までの考え方が通用しないほど変化が激しく、人 の行動パターンなどはますます多様化の一途をたどっています。

訪れる人と地域が互いに有益になる観光をめざして

持続可能な観光について研究していますが、一つ例を挙げると、近頃はマスツーリズムが広まった1960年代のように団体で行動する旅 行として、大型客船によるクルーズ旅が盛んです。多大な経済効果を 地域にもたらす一方で、クルーズ船が環境に与える悪影響も問題視されています。持続可能な観光は、訪れる人と地域の双方が恩恵を受 けてこそ成り立つもの。こうした課題を解決するためには、造船会社や運営会社の環境への取り組み、寄港先との関わり方など、一つひとつの要素から考えていかなければなりません。私はクルーズ旅の仕組みや地域との関係性を調査し、経済効果のみならず、環境や雇用などあらゆる側面から問題を分析しています。クルーズ旅だけではなく、 多様化する観光に関する諸現象を、広い視点で見渡すための理論構築が急がれます。

PROFILE

ドイツ出身。1998年、フライブルク大学地学部人文地理学研究所博士課程修了。同年より広島大学総合科学部に着任し、2014年より現職。専門は観光地理学。学生時代から合気道をたしなみ、現在は東広島市西条で市民を対象とした道場を開いている。

研究者INTERVIEW2

人間の機能を拡張する インターフェイスの開発に挑む

大学院工学研究科 教授 栗田 雄一

人間の感覚に寄り添うテクノロジー

私の研究テーマはヒューマンインターフェイス。人間の運動と感覚の仕組みを活かした、人間にとって操作しやすい機械を開発するための研究をしています。技術の進歩に伴い、機械の性能は高まる一方です。その複雑な機能を使いこなすために、人間が機械に合わせて操作技術を身につけるということが一般的になっています。しかし、ハイスペックな機械を製造する技術の次に必要とされているのは、人間にとって使いやすい、 わくわくするといった感性的な価値を付与すること。そのためには人間の運動・感覚機能を理解しなければなりません。ある力や刺激に対し、人間 の身体機能がどのように反応し、どのように感じるのか。実験データを基に人間の感性を予測するモデルを構築し、モノづくりに生かしています。

 

身体を動かす喜びを与えるアシストデバイス

コンピューター技術の発展により、だんだんと体を動かさずに生活するような時代の到来も予想されますが、本来、人は体を動かすことに楽しみを感 じるもの。自分の身体を自分で思うように動かして日々生活したい、思う存分スポーツを楽しみたいという想いを持ち続ける人は多いはずです。そこで、人間の運動と感覚の機能を補助・拡張するウェアラブルなデバイスの開発に取り組みました。小さな圧力でも作動する人工筋を用いて、自分の体重による地面反力を利用した電源不要のパワード・スーツの開発に成功。 歩行時の筋負担を約10パーセント軽減でき、筋力が衰えた人の歩行支援や、スポーツ時の運動機能の拡張といった用途が期待されます。今後も研究を通して、機械が人間に寄り添いアシストする社会の実現をめざします。

PROFILE

2004年、奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了。2018年より現職。専門は人の運動と感覚の機能を補助・拡張するアシスト技術の開発。マツダ、コベルコ建機など企業との共同研究や、低侵襲外科手術を支援する機器の開発に取り組む。

注目の最先端研究

[総合生物分野]

人工DNA切断酵素をデザインし、ゲノムを自在に改変する

近年、目的とする遺伝子を狙って切断し改変することが可能な人工DNA切断酵素が開発され、細菌や植物を含むすべての生物に利用可能であることから、さまざまな生命現象の機能解明に利用されると注目されています。私たちの研究チー ムは、2種類の人工DNA切断酵素を独自に開発することに成功し、培養細胞や動物での遺伝子改変を全国の大学や研究機関と展開しています。現在、特に力を入れているのは、人工DNA切断酵素を用いたヒト細胞(iPS細胞など)での遺伝子改変で、疾患遺伝子の改変技術の確立によりさまざまな病気の治療に道を開くことをめざしています。

大学院理学研究科 教授/ゲノム編集研究拠点リーダー 山本 卓

[医歯薬学分野]

先駆的な研究を推進し、ウイルス性肝炎の根絶をめざす

ウイルス性肝炎やこれによって起こる肝臓がんの原因を、ウイルス側およびヒト側の遺伝子を解析することにより解明し、その治療法を見出そうとしています。ヒトの肝細胞を移植し、マウス肝臓がヒト肝細胞に置き換えられたキメラマウスは、肝炎ウイルスの感染が可能となり、このマウスを用いた実験は、広島 大学でしかできない最先端研究です。世界の研究者との共同研究も積極的に進めており、ウイルス性肝炎の病態、抗ウイルス薬の効果および副作用、C型肝炎からの肝がん発症などに関与する遺伝子を発見するなどの成果が出ています。今後も成果を重ね、肝炎ウイルスの根絶をめざします。

大学院医歯薬保健学研究院 教授/広島肝臓プロジェクト研究センターリーダー 茶山 一彰

 


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