平成23年4月19日(火)に開催した講演会Q&A
Q.西条・広島は安全と言えるか?食べ物による影響はないのか?
A.西条・広島に限らず、福島原発から20-30km圏外であれば、安全と言える。食品については、放射能汚染の安全基準をクリアしない食品は市場には出回らない。また、現在の食品の汚染レベルは、年余にわたって毎日大量に食べ続けるなど、極端な想定で初めて健康被害の可能性が出る程度の低さである。
Q.子どもや妊婦への影響について問題ないのか?
A.チェルノブイリでは、特に子供に甲状腺癌が多発していることから、最も注意が必要なのは子どもである。ただし、日本での現時点での数値は心配する必要はない。福島県で、多数の子どもたちを対象に甲状腺の線量測定を行ったが、全員が基準値を大幅に下回り、被曝は認められなかった。
Q.福島原発の事後処理行程が6~9ヶ月かかる予定と報道されているが、これはこのまま安定した状態が続いたときの予測と思われる。安定した状態が続かず、最悪の場合はどうなるのか?
A.福島原発が万が一最悪の事態となっても、福島と広島の距離を考えた場合、広島は安全と言える。
Q.被曝量100mSvが指標とのことであるが、外部被曝と内部被曝での違いはないのか?
A.外部被曝で100mSv以上の一度の被曝で、がんの発生率は確実に上昇する。この事実から、100mSvを基準値として扱っている。100mSv以下の一回被曝ががんの発生率を上昇させるかどうかはわからない。同じ量であれば、一度の被曝の方が長期間にわたる被曝(累積)より危険度は高い。内部被曝は、基本的に長期にわたるものである。
Q.広大では緊急事態の対応について留学生にアナウンスされているか?
A.事故・自然災害等の緊急対策については、大学で危機管理マニュアルにより定められているが、放射能汚染等については定められていないので、今後の大学の課題であると考えられる。
Q.今日の報告内容等を広大のホームページに掲載しないのか?
A.震災・放射能関連のニュースは既に大学のホームページに記載してある。
平成23年4月20日(水)に開催した講演会Q&A
Q.広島で津波の被害に遭う可能性はあるのか?
A.津波は海洋域での地震で発生するため、広島での津波被害の可能性は低いが、完全にないとは言い切れない。東海・南海地震が連動した場合には、広島においても数十名の被害が想定されているので、日頃からの危機管理が大事である。
Q.緊急時の被曝線量限度は100mSvだが、政府は発電所などで働く人の限度を250mSvに上げた。健康に影響はないのか?
A.被曝線量限度が100mSvのままだと作業できないので250mSvに上げた。100mSvまでなら問題ないが、250mSvでは癌発生のリスクが少し上昇する。国際的な基準では1000mSVまでの範囲で各国が定めるよう決められている。これまでは低い限度に設置されていたのを、現状に合わせて緩和したものである。
Q.被曝量と癌発生リスクの関係は?
A.外部被曝で100mSv以上の一度の被曝で、がんの発生率は確実に上昇する。この事実から、100 mSvを基準値として扱っている。100mSv以下の一回被曝ががんの発生率を上昇させるかどうかはわからない。同じ量であれば、一度の被曝の方が長期間にわたる被曝(累積)より危険度は高い。内部被曝は、基本的に長期にわたるものである。
Q.自然界でも放射能があり、それに事故の放射能が加わったときの累積によって近い将来食物等に影響がでることはないのか?
A.インド、イラン、ブラジル等、他の地域より自然の状態の放射能量が数倍以上高い地域がある。そのような地域での癌の発症率は、他の地域に比べて特に高くはない。また、ラドン温泉に人々が好んで行くように、少量の放射線は体に良いと言う人もいるくらいである。その真偽は不明であるが、福島原発事故で、一般の国民が浴びる放射線量はこうした範囲のものである。
Q.留学生は日本に滞在する期間が短いから累積被曝の心配はないが、日本人はどうか?
魚は泳ぎ回っているのだから政府が福島県で採れた魚の出荷を止めても意味がないのではないか?
A.長期にわたる被曝(累積被曝)が一回被曝よりも悪影響が少ないし、現在の汚染度では心配するほどのことではない。大きな魚が小さな魚を食べて濃縮する食物連鎖が心配であるが、泳ぎ回るような大きな魚が汚染するまでにそれなりの日数が必要である。そうこうしているうちに、最も重要であるヨウ素131の半減期は8日間なので、1ヶ月で5%にまで減ってしまう。いろいろなファクターが絡む複雑な話で、一概に言えない。監視体制は敷かれており、マーケットに出回る魚は安全であると考えられる。
Q.汚染されたものかそうでないかを知る手段はあるのか?
A.個人のレベルでは難しい。見ただけではわからないが、放射線測定器を使えばわかる。
Q.半減期を変えることはできるのか?
A.できない。半減期には固有の半減期(物理学的半減期)と、体内に取り込まれた場合、一部は排出されるので、固有の半減期より早く減る。これは生物学的半減期とよばれる。生物学的半減期は物理学的半減期より短い。
Q.福島原発原子炉の現在の状況はどうなっているのか?
A.完全に安全な状況にあるわけではない。原子炉を冷却することが重要であるが、うまく装置が作動していない。しかしチェルノブイリのようにはならないのは原子炉自体の構造が異なるからである。
平成23年4月22日(金)に開催した講演会Q&A
Q.被曝健康上の問題として癌以外で生殖能力等に障害が現れることがあるか?
A.多い量の放射線を目に浴びると、数十年後に目に障害(白内障)が現れることがある。
広島と長崎の原爆の長年の研究で、将来障害が現れないとなっているので、子孫に障害が現れることはないと考えられる。生殖能力が衰えるほどの放射線量を浴びることは、一般人では考えられない。
Q.今朝の新聞で、福島地域で母乳から放射能が検出されたと言うことだが、それについて何かコメントはないか?
A.量が問題なので、それが分からないとコメントできない。放射能は自然な状態でもあり、今もあなたがたも放射線を浴びている。問題は母乳中に放射能が検出されたことではなく、どれだけの量の放射能が母乳に存在したかである。
Q.なぜチェルノブイリと福島が同じレベル7なのか?
A.レベル7は放出された放射能の総計によって決定された。
国際原子力機関 (IAEA) と経済協力開発機構原子力機関 (OECD/NEA) が策定したINES、International Nuclear Event Scaleによると、事故自体がどれだけ深刻であるかであり、環境や人々にどれだけ影響を与えたかではない。福島の事故では、チェルノブイリと同程度の以上の放射能が外部に放出されたということで外部への影響が同じだったということではない。
Q.広島は安全なのか?
A.安全である。
Q.福島では原子炉が完全にコントロールされている訳ではないと報道されている。次の爆発が起こる危険性もあるのではないか?
A.福島での爆発は、圧力容器内部の水素が外に漏れて爆発した水素爆発であり核爆発ではない。圧力容器自体が爆発したのではない。原子炉の冷却システムを維持することが重要である。冷却システムが働かない場合には水素爆発の危険はある。
Q.福島原発付近は立ち入り禁止になったことで、どうやって修復をするのか?
A.チェルノブイリでは、コンクリートで原子炉を覆った。福島でも原子炉をコンクリートで固めてしまう方法は起こりうるが、まず、冷却システムを維持することが重要である。