平成２７年8月21日

記 者 説 明 会（8月25日・東京） の ご 案 内
高脂血症治療薬「スタチン」が日本人の脳卒中再発を予防！
-医師主導の多施設共同大規模臨床試験J-STARSの研究成果-

1. 虚血性脳卒中を有する日本人脂質異常症患者へのスタチン投与は、アテローム血栓性脳梗塞の発症を67％抑制する一方、頭蓋内出血を増やさない。
2. 脳梗塞の再発予防に対するスタチンの有効性がアジア人で初めて確認されたことで、再発抑制療法の向上に寄与する。
3. 長期にわたる医師主導の多施設共同大規模臨床試験のモデルとして、今後の臨床試験のあり方に大きな意義をもたらす。

スタチンの脳梗塞の一次予防効果はすでに示されておりますが、脳卒中再発における二次予防効果は日本人においては明らかにされていませんでした。このため、虚血性脳卒中を発症した日本人を対象として、スタチンによる脳卒中再発予防のエビデンス確立を目的とした医師主導の多施設共同大規模臨床試験J-STARS研究を実施しました。

広島大学大学院医歯薬保健学研究院 脳神経内科学 松本昌泰教授らの研究グループは、高脂血症治療薬スタチンの脳卒中再発予防効果を検証する日本初の医師主導の多施設共同ランダム化比較試験（J-STARS）を、2002年から実施しました（図1）。
全国123施設の協力を得て虚血性脳卒中（心原性脳塞栓症を除く）を有する脂質異常症患者1578人を症例登録し、スタチン投与群とスタチン非投与群（コントロール群）の2群に分けて、その後5年間追跡調査を行いました（図2）。
その結果、本試験における参加者全体の脳卒中再発率は、約2.6%/年と非常に低値でした。
スタチンはアテローム血栓性脳梗塞の発症を67%抑制することが明らかになりました（図3）。また、安全性において、スタチン投与では頭蓋内出血を増やすことはありませんでした。

ご参加くださった患者さんはもとより、支えていただいたご親族や関係者の皆様、また医師、研究者（625人）のおかげをもって、13年という長期にわたる研究を完遂することが出来ました。このような長期にわたる医師主導多施設共同大規模臨床試験を遂行するための実施体制をTRI（公益財団法人先端医療振興財団臨床研究情報センター）の協力により確立できたことは、早期からの先駆的研究として、臨床試験のあり方に大きな意義をもたらすと考えます。

J-STARS研究で得られた結果は、スタチンによる脳卒中再発抑制療法の向上に資するエビデンスとなり、日本の国民福祉の向上となる可能性が高いと評価されて、The Lancet誌とCell 誌共同のOpen journalであるEBioMedicineに2015年8月5日採択されました。

EBioMedicine
URL: www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352396415301006
EbioMedicine. 2015 in press. doi:10.1016/j.ebiom.2015.08.006

The Japan Statin Treatment Against Recurrent Stroke (J-STARS): A Multicenter, Randomized, Open-label, Parallel-group Study

細見直永、永井洋士、郡山達男、大槻俊輔、青木志郎、祢津智久、丸山博文、角南典生、横田千晶、北川一夫、寺山靖夫、高木誠、井林雪郎、中村雅一、折笠秀樹、福島雅典、森悦朗、峰松一夫、内山真一郎、篠原幸人、山口武典、松本昌泰

本研究成果につきまして、下記のとおり、記者説明会を開催しご説明いたします。
ご多忙とは存じますが、是非ご参加いただきたく、ご案内申し上げます。

記

日 時：平成２７年8月25日（火） １１：００～１２：００
場 所：キャンパス・イノベーションセンター４階 408号室
（広島大学東京オフィス 同センター４階 TEL:03-5440-9065）

出席者：広島大学大学院医歯薬保健学研究院 脳神経内科学 教授 松本昌泰
公益財団法人先端医療振興財団臨床研究情報センター 副センター長 永井洋士
広島大学病院 脳神経内科 診療准教授 細見直永