生活習慣リズムの乱れは肥満や糖尿病に影響

平成22年11月10日

生活習慣リズムの乱れは肥満や糖尿病に影響

研究成果のポイント

  1. 次世代シーケンサーを用いて時計遺伝子の標的分子の網羅的解析を初めて行ったこと。
  2. 時計遺伝子の標的分子に代謝関連分子が多く含まれることが分かり、生活習慣のリズムが生活習慣病の予防に重要であると判明したこと。

1.全体概要

広島大学大学院医歯薬学総合研究科・内匠(たくみ)透教授らの研究グループは、時計遺伝子のすべての標的分子を探索した結果、時計遺伝子が代謝に密接に関係することを明らかにしました。

ヒトを含むほとんどすべての生物は、24時間周期の生物時計をもっています。今回、概日リズムを形成する時計遺伝子群の中でももっとも中心的な役割を担うBMAL1と呼ばれる時計遺伝子の抗体を作製し、次世代シーケンサーを用いて標的分子の網羅的解析を行いました。
コンピューターを利用して、得られた分子群を解析したところ、代謝関連分子が多く含まれることがわかりました。これらは糖尿病や肥満等の病気にも関連するタンパク質であり、睡眠や食事といった生活習慣のリズムがこれらの生活習慣病の予防にも重要であることが証明されました。

本研究成果は、東京大学との共同研究によるもので、平成22年12月10日発行の米科学誌「Molecular Cellular Biology」に掲載されます。

論文タイトル

Genome-wide profiling of the core clock protein BMAL1 targets reveals strict relationship with metabolism.
日本語訳: 時計タンパクBMAL1標的のゲノムワイドなプロファイルは時計分子と代謝との密接な関連を示した
関連URL: http://mcb.asm.org/

2.本研究を始めた社会的背景や経緯

時計遺伝子は概日時計に必須であると考えられていますが、時計遺伝子自体はmRNAが振動するという定義であり、その本当の意味での生理的意義はわかって いません。最近のさまざまな研究で時計遺伝子が代謝に関係している可能性が示唆される報告はありますが、今回その意義をゲノムワイドで網羅的に解析するこ とでその意義を証明しました。

3.研究内容・手法

ゲノム科学の最先端技術の一つである次世代シーケンサー、マイクロアレイ等を組み合わせた網羅的解析によって行いました。

4.本研究成果が社会に与える影響

眠らぬ24時間現代社会において、肥満や糖尿病といった生活習慣病は増加しています。昼夜のない現代社会が生み出した現代病ともいえ、その予防には睡眠や 食事といった基本的な生活リズムが重要であることは認識されてはいるものの、今回の研究でその分子レベルの根拠が示されたことで、社会的啓蒙の意味合いは 大きいものです。

5.今後の展開

睡眠や食事といった基本的な生活リズムの確立が、生活習慣病の予防に役立つかどうかを動物、ヒトのレベルで検討していくことが可能となります。

お問い合わせ先

広島大学大学院医歯薬学総合研究科 教授 内匠 透
Tel: 082-257-5115、Fax:082-257-5119
E-mail: takumi@hiroshima-u.ac.jp
(@は半角@に置き換えた上、送信してください。)


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