平成27年12月18日
国立大学法人広島大学
関東化学株式会社
院内感染の原因菌検出に光明!
6種類のESBL遺伝子型の迅速検出技術の実用化
複数の抗生物質が効かない多剤耐性菌は、健康な人にはすぐに影響を及ぼしませんが、抵抗力が弱い入院患者などへは症状の重篤化を引き起こす危険性があります。なかでも、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)を産生する細菌は、近年急速な増加がみられ、院内感染の原因菌として問題となっています。ESBL産生菌は、適切な薬剤が投与されなければ死滅しないため、早期に特定できなければ薬剤の乱用に繋がり、症状の重篤化やそれに伴う医療費の増加、また更なる多剤耐性菌の出現を引き起こす恐れがあります。
多剤耐性菌の制御法の一つとして、薬剤耐性遺伝子の保有状況を検出する方法があります。これまでの方法では、1遺伝子につき1つの反応で検出する必要があるため、複数種類の遺伝子を検出するためには半日から数日の時間を要しておりました。
ESBL産生菌の薬剤耐性遺伝子の迅速検出技術の確立を目指し、広島大学 院内感染症プロジェクト研究センターの菅井基行教授ならびに鹿山鎭男助教、久恒順三助教らと関東化学株式会社は共同研究を続けた結果、主なESBL遺伝子型6種類を約3時間で同時検出できる技術を開発することが出来ました。
本技術が社会貢献の一助となることを期待し、関東化学株式会社が成果を用いた製品として実用化するに至りました。
本技術は、2種類のマルチプレックスPCR法(*1) を用いて6種類のESBL遺伝子型を同時に増幅し、電気泳動パターンを元に遺伝子型を決定する手法です。
図1 電気泳動例
下記の菌株について解析した電気泳動パターンの実例
100: 100 bp DNA Ladder、P: ポジティブコントロール(試薬E)、1: CTX-M-1型陽性菌株、2: CTX-M-9型陽性菌株、3: TEM型陽性菌株、4: CTX-M-2型陽性菌株、5: CTX-M-8型陽性菌株、6: SHV型陽性菌株、N: ネガティブコントロール
*1 PCR法とはDNAを増幅させる手法の一つです。一般的なPCR法は1組の特異的なDNAを増幅する核酸の断片(プライマー)を使用するのに対し、マルチプレックスPCR法では、複数組のプライマーを使用して複数のDNAを同時に増幅することができます。
平成27年12月21日(月)に関東化学株式会社より「シカジーニアス® ESBL遺伝子型検出キット」として発売されます。