第6回 Manasseh Emmanuelさん(タンザニア)

「知識は力」

名前:Manasseh Emmanuel (マナセ・エマヌエル)
年齢: 29
国籍: タンザニア
専攻:工学研究科 複雑システム工学専攻
プログラム: 博士課程前期
趣味:音楽、映画、サッカー

『留学生インタビュー』バックナンバー

留学生Interviewの第6回は、博士課程に在籍されているタンザニア出身のManassehさんにお話を伺いました。Manassehさんは日本の技術通信システムに感銘を受け、日常生活を向上させるためのテレコミュニケーション(電気通信)を研究するため来日しました。しかし彼が興味があるのは電気通信だけではありません。Manassehさんはいつか政治にも携わっていきたいと考えています。電気通信と政治はどう繋がっているのでしょうか?早速聞いてみましょう!

今日はインタビューさせて頂き、ありがとうございます。まず、日本で留学するきっかけと、どうして広島大学を希望したのかお聞きしてもいいですか?

母国(タンザニア)では電気通信工学の理学士号を取得して、エンジニアとして2年ぐらい携帯電話の会社で働きました。経験を重ねてきたのですが、電気通信の分野をもっと勉強したいと思って、技術に優れた国で留学しようと思いました。そして日本の文部科学省から奨学金を頂きましたので、日本に行くことにしました。日本は通信にも、技術にも優れて、僕のニーズにぴったり応じた。

また、どうして広大だったのかというと、当時、広島大学で修士号から博士号を取得し、2年間のポスドクを勤めたタンザニアの先輩がいて、「広島大学はとてもいい大学だよ」と薦められました。実は先輩と同じ研究室に行くとこだった!(笑)

Manassehさんの授業は日本語で行っていますか?

はい。授業は日本語ですが、研究は英語で行いますし、先生との会話も英語ですね。困ったのは、大学院生は日本語で行われる授業を受けないといけないことです。日本に来てから日本語の勉強を始めて、日常会話でさえまだマスターしてない僕には、専門用語いっぱいの講義に出るっていうのは簡単なことじゃありません。

来日してどれぐらいですか?

去年の4月に来たので、もう既に1年8ヶ月が経ちますね。

日本や日本での生活についてはどう思われますか?

とてもいい機会ですね。最初は日本語が問題で講義が理解し難かったけれど、今は「問題」というより、「特典」だと思うようになりました。もし他の国に行ったら、タンザニアにいた時と同じで、ずっと英語を使い続けたかもしれません。でも今は新しい言語を学ぶチャンスなんだと思っています。まだマスターはしていないけれど(笑)。外国人の皆ほとんどは日本語を学ぶのが面倒で嫌のようだけど、僕はもっとポジティブに考えることにしました。

日本語の習得には時間がかかりますよね(笑)。さて、話は変わりますが、どのような研究をされているのですか?

簡単にいうと、僕は携帯電話などの移動通信システムのアンテナ選択について研究しています。携帯電話のような小さい移動通信システムにアンテナを増やすと、電波がよくなるということが証明されています。しかし、携帯性から考えてみると、アンテナをたくさん増やすのは難しいです。だから、今の研究課題は最低2本のアンテナを利用して、どうやって最も強い電波が届けられるのか、という課題です。そうすると、通信も、その質も良くなります。

どうして電気通信を勉強しようと思ったのですか?

電気通信技術を勉強しようと思い始めたのは中学生の時でした。その後、テクニカルスクールに進んで、技術やテクノロジーにすごく興味を持つようになりました。そこで土木工学に関するプロジェクトをやってみたんですけど、なんだかその分野は自分には合わなかったので、本当に自分は電子技術や移動通信システムが好きだということに気づきました。 だからタンザニアで大学に入学した時、迷わず電気通信技術を専攻にしました。

今や世界のどこに行っても、仕事や生活はテクノロジーによって簡素化されています。みんなの生活をもっとシンプルで便利にしたいというのが僕のモチベーションです。前は一人で機械やシステムはどうやって動いているか、どういう仕組みになっているんだろうと、よく考えたものです。今は工学を勉強して、その答えは見えてきました。

なるほど。では、広大での研究生活はどうですか?

実は研究者って大変なんですよ!(笑)どんなに頑張っても結果が見えない義務みたいなものですが、結果が見えないからといって、諦めてはいけないのです。ほとんど毎日バタバタして朝から晩まで研究をしますが、僕はいつもみんなと付き合っていられるように気をつけていて、また色々なグループと交流できるよう友達を作ろうとしています。だけど、1日のほとんどは研究室にいらないといけないですね。例えば、最初は授業や研究、日本語の勉強などを同時にしようとしていました。本当に厳しかった。その時はタイムマネージメント(時間管理)が大事でした。

本当に忙しそうですよね。ところで、日本に来る前は、日本についてどんな印象でした?

日本の第一印象はですね、日本製品なんです。タンザニアでは、車のほとんどが日本製(トヨタなど)、ソニー、パナソニック、三菱も日産も…品質のいいものは全部日本企業が作ったものです。なので、日本企業や製品から、日本がどういう国なのか想像できました。だから、僕の印象は「産業や技術の発展した国」でした。しかもその印象はすごく当たっていました。広大にいる間に、マツダなどの企業の工場を見学する機会がありました。工場でのロボティクスシステムによる生産方法を自分の目で見て、僕の第一印象を再確認できることが出来ました。

日本とタンザニアには違いがいっぱいありますか?

多いですね。日本は先進国で、タンザニアと比べると生活水準がとても高いです。そして日本の人は頑張ろうと決意していることも母国と違いますね。夜中まで仕事をする人の姿を見るのは日本だけでしょうね(笑)。産業界ではどうなのか分からないのですが、産業の発展ぶりから見ると、日本の人はみんな本当に頑張っているだって分かりますね。

日本の人も自分の国のことを本当に想っていますよね。他の国では、自分のことしか考えない人が多いですが、日本の人は日本を良くするため頑張っている気がします。

日本について何か驚いたことがありますか?

びっくりすることはいっぱいありますが、まずは2つのことを述べたいです。一つは日本の人はとてもきちんとしていて、清潔な人ということでした。路上にあるゴミを自ら拾って、ゴミ箱に捨てる人が普通に見える国は日本だけでしょう。それを見て、日本の人は自分のためではなく、環境のために行動しているということが分かって、感動しました。また日本語がまったく分からず来日したばかりの僕が困ったことがあった時、英語が分からなくても一生懸命身振り手振りで色々と手伝ってくれました。日本の人は外国の人に親切だなと感じました。他の国はそうでもない気がします。

そしてもう一つちょっと面白いことですがあります。電車に乗ると、乗客はみんな寝ているのに、自分の駅に着くときちんと起きて、降りるんです!(笑)

では、広島大学はどう思いますか?いいところとか、良くないところとかありますか?

広大のいいところは色んな人がいることですね。今、僕は「すばらごい」というクラブのメンバーで、色んな国からの学生たちや日本の学生と交流したり、楽しいイベントをしたりして、広島に来てよかったと思います。しかし、「出会いは別れのため、別れは出会いのため」ですね。タンザニアでたくさんの友達がいるけれど、日本へと旅立って、みんなとは分かれました。そして広大に来て、新しい友達ができました。つまり新しい出会いがいっぱいありました。だから僕はよく「出会いは別れのため、別れは出会いのため」と言います。新しい友達ができるのはもちろんいいことなんですが、良くないこともあります。それは、友達が卒業して、自分の国に帰ること。いつも支えてくれた大事な友達が帰国すると本当に寂しくなりますが、また新しい学生が入ってきて、新しい出会いのチャンスがあります。

いいフレーズですね。でもちょっと教えてください。「すばらごい」って何ですか?

「すばらごい」は留学生と日本の人とで出来たクラブで、環境問題や生活のことに関して色々ディスカッションします。例えば、環境保護などセミナーを開いて世界的な認識を高めるためのプログラムも行っています。先生や研究家を招聘して、自分の研究を分かりやすく説明してもらうことで、問題認識を高めようとしています。もし僕が講義することになったら、初心者でも分かるような例えを使って(iPodなど)、その商品の特徴や利点をきちんと説明したりしますね。そして学内の学生や先生だけではなく、地域社会の問題認識も高めたいと思います。「すばらごい」のメンバーもよくボランティア活動をしています。

いいですね。修士号の取得後もご予定は?

修士号を取得すると博士課程後期に入って、博士号も取得したいです。もちろん広島大学でね。博士号を取得すると帰国して、いつかは政治家になりたいと思っています。

政治家ですか?今の研究分野と大分違いますね!(笑)どうして政治家になろうと思っていますか?

全然違いますね(笑)でも政治は実際上のことを扱い、指導していくものです。どんな専門性があってもいいと思います。政治家になれば広島大学で得た知識を利用して、テクノロジーの分野で効果的に交渉することができます。政治家はたまに勉強不足で、勝手に色々決めるのですが、正しい知識さえあれば、正しいことをします。広大で得た知識でタンザニアが進歩的に、そして能率的に進むようにしたいです。

政治の世界はとても難しい世界ですが、どんなにいいアイデアがあっても、どんなに善意を持っていても、政治の世界に入らないと、自分のアイデアを実現できません。タンザニアを良くするために努力していきたいので、政治家になって社会が変わる政策を作らないといけません。

「知識は力」ってことですね。

そのとおりです!

日本語を勉強している学生に、何かのアドバイスってありますか?

まずは授業に出ること!そして友達をたくさん作ることです。例えば、研究室にいる大学院生とコミュニケーションが出来ないと思うより、僕は頑張って一緒に喋ろうとします。人に親切にして、そして人を尊敬すると、人は自然に自分の回りに集まり、友達がいっぱい出来ます。だから、研究室の大学院生だけではなく、留学生の友達も、毎週の日曜日に教会で集る日本人の友達もいます。その友達は日本語を教えたりしてくれるので、とてもいい練習になります。(笑)

広大で勉強したいと思っている学生にアドバイスありますか?

まず、広島大学は日本や世界の中で優れた大学の一つです。そして留学を考えている学生や既に留学している留学生に、どんなことがあっても、人生を楽しんで欲しいと思います。周りの人を親切にして、そして尊敬して欲しい。前に言ったように、人に親切にして尊敬すると自然と自分の周りに集ってきて、支えてくれます。例えば、日本語で行われている授業で僕があまり分からないと、他の学生は僕が講義の内容を理解できるよう、英語で説明してくれるし、漢字も説明してくれます。日本に来て初めて人の大切さを知りました。人を尊敬して、大事にすると、自分は必ず愛されます。

とてもいいアドバイスですね。ありがとうございます。そして今日は忙しいところインタビューさせて頂き、誠にありがとうございました。博士号取得に向けて、研究頑張ってくださいね。

ありがとうございます。

学会にて。

BSグループの皆さんと一緒に。


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