「地域産学官共同研究拠点整備事業」に採択されました

平成21年12月7日

「地域産学官共同研究拠点整備事業」に採択されました

 

広島大学は、独立行政法人科学技術振興機構(JST)による「地域産学官共同研究拠点整備事業」に、広島県、広島市、(財)ひろしま産業振興機構、県立広島大学、広島市立大学、広島工業大学、近畿大学工学部、広島国際大学、広島国際学院大学および地域企業、中国経済連合会、広島商工会議所と連名で、「ひろしま医工連携・先進医療イノベーション拠点(仮称)」を広島大学霞キャンパス内に設置することを提案し、12月4日付けで採択通知を受けました。

「本事業」は、科学技術による地域経済活性化を図るため、地域からの提案に基づき、産学官の協働研究を推進するために必要な研究機器・設備を整備するもので、平成21年度の文部科学省補正予算(総額263億円)で実施されます。拠点事業の稼働開始時期は、平成22年度中を予定しています。
本採択により、拠点内施設整備および設置する研究設備(8億4千万円)が、JSTにより整備されることになりました。以下(概要、詳細)のような機能を有する拠点形成をとおして、広島県の産学官共同研究を推進します。
なお、広島大学霞キャンパス配置図は別紙1(PDF)のとおりです。

お問い合わせ先

広島大学社会連携・情報政策室
担当:副理事(社会連携担当)藤岡幸男
TEL: 082-424-7112
FAX: 082-424-6189
E-mail:  friji-syakai@office.hiroshima-u.ac.jp
(@は半角@に置き換えた上、送信してください。)

<概要、詳細>

「ひろしま医工連携・先進医療イノベーション拠点(仮称)」

【概要】
広島大学霞キャンパス(広島市)の敷地内に産学官共同研究機能、産業人材育成機能、インキュベーション機能をもった産学官共同研究拠点を整備。

【整備の基本方針】
(1)広島大学霞キャンパス(医学部、歯学部、薬学部、医歯薬学総合研究科、保健学研究科、病院、原爆放射線医科学研究所を有し、日本で最も多職種の医療人材を養成している拠点)の医療研究集積を生かした拠点。
(2)広島県下の他大学、企業、支援機関等が幅広く参加できる「オール広島連携型の拠点」とする。

【対象とする産業分野】
医工連携によるものづくり分野(医療機器、福祉機器、人間工学を応用した自動車等)、細胞治療等先進医療技術分野。

【拠点整備による効果】
医療系研究資源活用をコンセプトに広島県下の産・学・官連携のインターフェイス機能が実現し、拠点施設運営による共同研究、人材育成が推進され、東広島市に位置する広島中央サイエンスパークとの連携効果も相俟って、県下全体の研究開発機能のレベルアップが図られる。
10年後には、次世代高度医療機器、介護ロボット等の研究開発、人間工学自動車研究センター、先端細胞治療再生医療センターの機能を備える中四国の「医療系研究資源活用型の研究拠点」とする。
 

「ひろしま医工連携・先進医療イノベーション拠点(仮称)」の詳細

【目的】
広島市は県内で最も産業集積があり、広島工業大学、広島市立大学、広島県立大学、広島大学医療系学部・大学病院などが立地しているものの、産学官の共同研究拠点が無く、従来から産学官連携拠点施設の整備を望む声が強かった。このため、広島大学霞キャンパス(医学部、歯学部、薬学部、医歯薬学総合研究科、保健学研究科、病院、原爆放射線医科学研究所を有し、日本で最も多職種の医療人材を養成している拠点)に、地域の産学官が緊密に連携し、医療系研究集積を生かした共同研究拠点を設置する。
この共同研究拠点の対象分野としては、広島県は中国・四国・九州地域一の工業県であることから、医療系研究資源を活用した医工連携ものづくり(医療機器、福祉機器、自動車等)、広島大学霞キャンパスの研究シーズを生かした細胞治療等先進医療技術等の共同研究を促進する拠点とする。
この結果、広島県全体の研究機能のレベルアップを図り、将来は中四国の医療系研究資源活用型の研究拠点にすることを目的とする。

【達成目標】
拠点施設設置から数年後は、医療系研究資源活用をコンセプトに広島県内の産学官が現在取り組んでいる、あるいは計画中の共同研究のテーマについて、本拠点の機能を活用し共同研究の加速化、事業化、起業化を図る。
医療機器の技術開発については、広島大学、広島市立大学、広島国際大学等の情報技術等と医工連携により開発を促進し、本拠点発の「次世代医療機器」を数件程度製品化する。霞キャンパスの先進医療技術である細胞治療を中心とする再生医療については、地域の病院、企業に広く開放する細胞培養センター・幹細胞バンクを整備し、細胞治療による再生医療技術の研究成果を積み重ねるとともに、西日本三次被ばく医療拠点機関としての緊急被ばく対応幹細胞バンク(被ばく対応幹細胞バンク)の設置を行う。また、自動車メーカー、部品メーカーでは、事故防止に加え、高齢者の安全運転支援、人間の五感・生理等の感性評価に基づいた未来型自動車づくりを目指しており、共同研究を本拠点で医療系研究資源を活用して実施し、実用化に向けた研究・実証を行う。
10年後には、中四国の「医療系研究資源活用型の共同研究拠点」として、広域の共同研究拠点となることを目的とする。具体的なイメージとして、(1)世界に通用する次世代医療機器、介護ロボット等福祉機器の研究拠点、(2)人、特に高齢者に優しい安全運行可能な自動車の要素技術が次々と提供できる「人間工学を応用した自動車共同研究センター」、(3)中四国の病院、企業と連携した「先端細胞治療等再生医療センター」及び「被ばく対応幹細胞バンク」としての機能、を有する拠点を目指す。
また、高度な共同利用機器を利用した中堅・中小企業の技術者の養成、医工情報異分野の研究者の交流による融合研究人材の育成、国内外のインターンシップ受け入れによる研究人材の育成が図られる。特に、平成21年度に採択となった「医工連携人材育成プログラム(広島大学、広島市立大学、広島工業大学)」(大学教育充実のための戦略的大学連携支援プログラム:平成21~23年度)を足掛かりに、「医療・情報科学・工学融合人材の育成拠点」としての役割も担い、有望な人材の輩出が図られる。また、「先端細胞治療再生医療センター」では、細胞治療に用いる安全で高品質の細胞の調整、培養、加工、凍結保存などの細胞プロセッシング(Cell Processing) 工程に従事する「細胞培養士」を輩出し、より安全な細胞治療の標準化を実現する。

【予測される成果および効果】
医療系研究資源活用型の共同研究をコンセプトに、広く地域の企業、大学、支援機関の連携拠点が実現し、大学シーズの育成・企業化、企業ニーズを踏まえた共同研究が促進される。この結果、10年後には、(1)世界に通用する次世代医療機器、介護ロボット等福祉機器の研究拠点、(2)人、特に高齢者に優しい安全運行可能な自動車の要素技術が次々と提供できる「人間工学を応用した自動車共同研究センター」、(3)中四国の病院、企業とネットワークした「先端細胞治療再生医療センター」、としての機能が備わり、中四国全体の研究開発レベルの機能強化、経済の活性化につながる。

【拠点の事業運営体制】
業運営委員会は、地方自治体(広島県・広島市・(財)ひろしま産業振興機構)、大学(広島大学・県立広島大学・広島市立大学・広島工業大学・近畿大学工学部・広島国際大学・広島国際学院大学)及び地域企業(マツダ(株)・三菱重工業(株)広島製作所・(株)東洋高圧・湧永製薬(株)・(株)モルテン・中国経済連合会・広島商工会議所)を構成メンバーとして予定し、拠点の運営計画の策定及び評価等を実施する。

【プロジェクトチームの設置】
医工連携によるものづくり(医療機器、福祉機器、自動車等)、細胞治療等先進医療の各分野において、運営組織である「ひろしま医工連携・先進医療イノベーション拠点事業運営委員会(仮称)」(以下、「事業運営委員会」という。)のもと、地域の産学官のマッチングを促進し、企業、大学、公的支援機関がコンソーシアムを組んで、共同利用機器、共同研究室を活用しながら事業化、起業化を見据えた共同研究を実施する。また、拠点を継続的・計画的・発展的に活用していくため、事業運営委員会の下に主要な共同研究分野毎にプロジェクトチームを組織し、PDCAサイクルを回しながら展開する。
主要共同研究分野の一つである「人間工学を応用した自動車共同研究プロジェクト」については、自動車メーカー・関連地域企業、大学(広島大学、近畿大学工学部(自動車技術研究センター)、広島工業大学(自動車研究センター)、広島市立大学(情報科学研究科))、(財)ひろしま産業振興機構(カーエレクトロニクス推進センター)、広島県、中国経済産業局等で組織し、その中から選出したプロジェクトリーダーの下、継続的・計画的・発展的に共同研究を進める。

【設置場所】
霞キャンパス内のボイラー棟、医学臨床棟9階、を改装し整備する(資料1)。

【設置予定の主な研究設備機器】
事故防止に加え、高齢者の安全運転支援、人間の五感・生理等の感性評価に基づいた未来型自動車づくりを行うため、無響音室、簡易電波暗室を装備した研究室を整備し、その中に以下の機器を設置する。

◆NVHシュミレーター
車両の騒音、振動を再現しながら、シミュレーションを行い、人間工学的に最適な部品(シート、操作等)の解析、周辺状況から予測する技術開発を行うための機器(音は20kHzまでのもの)。

◆実車シュミレーター
車両のコックピット領域における「視覚・視認性」、「光の認知」にかかる計測・評価技術及び「ドライバーの反応特性・生体情報」の解析を行うための機器。前方、左右のスクリーンに仮想映像を投影し、シミュレーター用に改造した自動車を使って、「覚醒向上とヒューマンエラー防止」(ドライバー状態計測)、「生体情報測定」(脳波、血流)等、快適・覚醒領域の研究を行うための機器(音は20kHz 以上の非可聴域:ハイパーソニック)。

◆高密度センサー脳波計測システム
脳波の計測

◆光トポグラフィ装置
大脳皮質の血流測定

◆医療機器関係
・並列分散型データベースサーバシステム:多次元かつ高精細な医用画像を大量に蓄積し画像情報および診断情報の高速検索および転送を可能とする高性能コンピュータシステム。
・テレプレゼンスシステム:遠隔医療の研究開発のために高精細動画像のリアルタイム通信や高品質表示を可能とする高速映像伝送ネットワークシステム。
・医用画像情報システム:高度診断支援技術の研究開発のために複数の多次元(立体+時間+マルチモダリティ)画像情報を解析・可視化し診断情報を高速に提示する高性能コンピューターシステム。
・超精密ナノ加工機:これまでにない新発想の外科術具、医療器具などを設計・造形することを目的として金属の超微細マイクロ・ナノ加工を行うために使用。
・三次元力覚フィードバックシステム:手術シミュレーションおよび検査トレーニングのためにテレプレゼンスシステムと合わせて遠隔医療シミュレーションの研究開発サブシステム。

◆細胞治療関係
幹細胞などを用いた細胞治療には、細胞の調整、培養、加工、凍結保存などの細胞プロセッシング(Cell Processing)工程が必要で、これら行程には医薬品の製造と同等の高い安全性と品質管理が求められる。したがって、細胞治療を行うには、Good Manufacturing Practice (GMP)に準拠した細胞プロセッシングセンター(cell processing center :CPC)が不可欠であるため、本拠点にCPCを3室設置する。(CPC設備:室内の空気圧、温度、湿度をコントロールし、HEPAフィルター処理された高度に清浄な空気下で無菌状態を維持するためのシステム。組織、細胞が作業エリア内の空気に直接暴露される作業は、クラス100レベルの安全キャビネット内で作業を行う必要があり、キャビネット内をクラス100レベルに保つためには、キャビネットが置かれているエリアはクラス10,000レベルで維持されなければならない。)

◆凍結保存試料自動ハンドリングシステム
幹細胞バンク用細胞凍結保存大型容器クラウイオライブラリー

◆多光子励起レーザ走査型顕微鏡Tシステム
生細胞の機能を観察・解析するための共焦点顕微鏡。


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