巨大な構造転移を伴ったモット絶縁体の金属化に乾電池1個に満たない電圧で成功

平成25年8月27日

国立大学法人 広島大学
国立大学法人 京都大学

巨大な構造転移を伴ったモット絶縁体の金属化に乾電池1個に満たない電圧で成功
~さまざまな低電力動作のデバイス実現に期待~

 

広島大学大学院先端物質科学研究科の中村文彦助教らと、京都大学大学院理学研究科の前野悦輝教授らの研究グループは、電子の集団運動によって絶縁体化した(いわゆる、モット絶縁体状態にある)ルテニウム酸化物に、室温で乾電池1個に満たないわずかな電圧を加えるだけで、巨大な構造転移が引き起こされて、顕微鏡で確認できるほど大きく結晶が縮み、金属化することを発見しました。さらに、わずかな電流を流し続けることによって、電場で金属化した状態(スイッチオンの状態)を低温まで維持することにも成功しました。
これまでに報告されているスイッチ現象の多くは、高電場の印加や、さらに液体ヘリウムなどの寒剤での冷却を必要としました。今回発見された現象は、電子の集団運動がより強い系で、これまでにない大きな体積変化を伴い、2,000~20分の1程度の低電場かつ室温で起こります。
また、このスイッチ現象に必要な電場は低温に向かって急激に増加するため、スイッチオンの状態を低温で実現することは困難でしたが、室温でスイッチ後わずかな電流を流し続けることで低温までオン状態を持続させることにも成功しました。電子に流れを加えた金属状態(非平衡定常状態)では電子が凍った絶縁体状態に戻りにくいという新しい現象の発見といえます。
これらの発見は、低電力で動作するトランジスタなどのスイッチング素子、抵抗変化型メモリー、音波発信器などへの応用につながることが期待されます。
本研究成果は、8月29日、英国Nature Publishing Groupの科学雑誌『Scientific Reports』電子版3巻(DOI:10.1038/srep02536(2013))に掲載される予定です。(http://www.nature.com/scientificreports.)
つきましては、この研究成果について、下記のとおり記者説明会を開催し、ご説明いたします。ご多忙とは存じますが、是非、ご出席いただきたくご案内申し上げます。
 

日 時:   平成25年8月28日(水) 14:00~15:00
場 所:   キャンパス・イノベーションセンター4階 408号室
(広島大学東京オフィス 同センター4階 TEL:03-5440-9065)
出 席 者:     

広島大学大学院先端物質科学研究科 助教 中村 文彦
広島大学大学院先端物質科学研究科 教授 鈴木 孝至
京都大学大学院理学研究科 教授 前野 悦輝
※当日は、モット絶縁体が大きな体積変化を伴ってスイッチする様子を実際にお見せいたします。

会場へのアクセスマップ
本件に関するお問い合わせ先

【研究内容に関するお問い合わせ先】
広島大学大学院先端物質科学研究科 助教 中村 文彦(なかむら ふみひこ)
Tel & Fax: 082-424-7042
E-mail: fumihiko*hiroshima-u.ac.jp
広島大学大学院先端物質科学研究科 教授 鈴木 孝至(すずき たかし)
Tel: 082-424-7040 Fax: 082-424-7044
E-mail: tsuzuki*hiroshima-u.ac.jp
京都大学大学院理学研究科 教授 前野 悦輝(まえの よしてる)
Tel & Fax : 075-753-3783
E-mail: maeno*scphys.kyoto-u.ac.jp
  (*は半角@に置き換えてください)

【報道に関するお問い合わせ先】
広島大学学術・社会産学連携室広報グループ 島原 洋
Tel: 082-424-4657 Fax: 082-424-6040
E-mail: koho*office.hiroshima-u.ac.jp
京都大学渉外部広報・社会連携推進室 進藤 健司
Tel: 075-753-2071 Fax: 075-753-2094
E-mail: kohho52*mail2.adm.kyoto-u.ac.jp
(*は半角@に置き換えてください)


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