経済学部4年の仁科勝介さんが日本一周の旅を終えました

大学3年生の春休みにスタートした日本一周を、今年1月、最終目的地屋久島で終えた仁科勝介(にしな かつすけ)さん(経済学部4年)。すでに学外でもフォトグラファーとして活躍している仁科さんに、今回の旅についてお話を伺いました。

まずは、日本一周、お疲れ様でした。卒業2か月前に、旅を終えましたね。

大学1年生の夏休み前にふと思い立ち、1人でヒッチハイクに挑戦、九州を一周しました。多くの方に助けていただき、「知らないまちから知らないまちへ」連れて行ってもらった経験は旅を終えても忘れられず、「日本のことを何も知らない」ことを痛感しました。

1年生の終わりに、卒業までにあと一つぐらい何かできたらと考えるようになり、留学や世界一周、いろいろな選択肢を考えましたが、僕にとっては日本を巡るという答えが一番しっくりきていました。できるだけ一つずつまちを巡って、ちゃんと日本についてもっと知りたいと思い、1つ1つのまちへ出かけて行った結果、47都道府県、1741(仁科さん談)ある日本の市町村を巡った形になりました。

在学中の長期にわたるこのプロジェクト、どのように実現させたのでしょう。

3年生の前期までにゼミと卒業論文以外の単位を取得し、4年生の1年間(2018年度の前期・後期)を休学し、2019年度前期に復学しました。復学後も指導教員の先生とやりとりをしながら旅を続け、沖縄県を旅行中に「地域と観光」というテーマで卒業論文を一通り書き終えました。僕自身は休学に対する抵抗はありませんでしたが、進路、学業、安全面…両親はずっと心配していましたね。

旅は2018年3月末~12月、2019年9月末~2020年1月初旬の2回に分けていきました。1回目の旅の費用は大学2、3年時にアルバイトで貯めたお金を切り崩しながら、2回目の旅はアルバイトとクラウドファンディングで支援していただいたお金を資金にしました。アルバイトについては、住み込みのものを3回、更に2年から3年生にかけてもかなり頑張ってお金を貯めていたのですが、2回目の旅の前に行ったクラウドファンディングでご支援をいただかなければ、この旅を最後まで終えることは不可能でした。支援していただいた皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。

原付(バイク)で旅をされたとか。 

交通手段の9割以上は原付(スーパーカブ110)での移動です。旅の初日に原付でスリップして、右膝に大怪我を負いました。診察してくれた医師の方から、救急車を呼ばなかったことを怒られるほどの怪我で、全治3ヶ月といわれました。結局、怪我をして2週間は公共交通機関を利用して旅をし、そのあとは前より一層注意して、再び原付に乗りはじめました。旅の最終段階では離島をひたすら巡ったので、船やバス、車、飛行機などあらゆる交通機関を駆使して、バックパッカーのように移動しました。

その日どこで寝るか、どのようなルートで進むかは数週間前から計画を立て、各市町村の具体的にどの場所へ訪れるかは数日前〜前日に決めていました。最も効率よく、最短で巡ること、またその日の最終目的地での宿泊についても考慮しながら、ルートを決めていきました。観光地として有名なスポットはなるべく巡るように、そうでなければ町の雰囲気が味わえるよう中心部などを通るようにしていましたね。
 

多くの人との出会いもあったようですね。印象的な出会いは。

旅行中の主な宿泊先は、ゲストハウスや知り合いの家でしたが、ネットカフェで仮眠をすることもありました。1回目の旅では9ヶ月のうちきちんとしたホテルに泊まったのは1日だけ、60日以上は誰かの家に泊めてもらったので、多くの人と出会うことができました。

印象的だったのは、旅を始めて5ヶ月、8月の誕生日当日に泊まったゲストハウスでの、年配の男性歌手の方によるライブです。精神的にも体力的にも厳しいこともあったそれまでの旅路を思い出して、その熱い歌を聴きながら号泣してしまいました。また、茨城県龍ケ崎市では初めてお会いしたご夫婦のお家に1ヶ月半ほど滞在させてもらいました。関東を巡る拠点となったのですが、「好きなだけいていいよ」と言ってくださり、人の温かさに心から感激しましたね。

三重県亀山市のゲストハウスにて

三重県亀山市のゲストハウスにて

かつおゲストハウスさんにて

自分のインスタグラムアカウント名と同じ、高知の「かつお」ゲストハウスさんにて

突然ですが、旅で出会った忘れられない景色ベスト3をお願いします。

3位は北海道斜里町の知床です。予報ではずっと雨だったのですが、訪問予定日前日に晴れマークに変わりました。訪れた時期は熊の活動期で、知床観光のメインである5つの湖「知床五湖」を巡る散策路へ入るにはガイドの事前予約が必要でした。当日思い切って訪れて見たところ、1人分だけ偶然空いていて、知床五湖を散策することができました。晴れた知床の景色は本当に感動しました。

第1位は2つあります。1つ目は長野県伊那市でみた入道雲。長い長いトンネルを抜けた後、一面に今までで一番大きな入道雲が広がっていました。真っ白な積乱雲と青空のコントラストは本当に美しく、しばらく見入ってしまいました。
もう1つは、鹿児島県屋久島町の彩雲です。旅の最終目的地、屋久島。もののけ姫の舞台となったとされる「白谷雲水峡」へ行った後、夕焼けを見るために「いなか浜」へ向かう途中「彩雲」が出ていることに気づきました。旅の中で初めて見た彩雲。あまりにハッキリと虹色に光るので、口はしばらく開いていたと思います。そもそもこの日は午後から曇り予報、考えるほど不思議に感じられて。無我夢中で写真を撮り、車へ戻る途中、太陽の左側に別の彩雲が出ていることに気づきました。目の前に彩雲が2つあった、ただただ鳥肌が立ちましたね。
 

北海道・知床

北海道・知床五湖

長野県の入道雲

長野県でみた入道雲

屋久島の彩雲

屋久島でみた彩雲(中央右部分)

旅の様子はインスタグラムなどでも発信し、かなりの反響があったようですね。

旅の最中も、終えた後も、温かいコメントをたくさんいただきました。「入院中だけど勇気をもらった」「何年も帰っていない故郷の写真を見て涙が出た」などと言っていただいたことは本当に嬉しかったです。

この旅を通して、仁科さんが感じた変化は。

自分自身の「無知」を実感するようになりました。日本をあちこち旅しましたが、知れば知るほど、知らないことが増えていくという感覚です。
旅をする日々ではただその日その日のベストを尽くすことしかできませんでしたが、実生活においても目の前にある日々を精一杯過ごさないといけないと強く思うようになりました。

この旅の中で本当に多くの方に助けていただいたので、その支えてくださった方々に恩返しできるように、これからも、旅に限らず、自分にできることを追い続けていきたいです。

 

伊平屋島

沖縄県伊平屋(いへや)島

この春卒業。岡山県倉敷市の写真館でカメラマンをされるそうですね。

中学3年生のとき、カメラで撮影をしている人たちを見て「なんだかおもしろそう」と、貯めていたお年玉で一番安いカメラを買いました。高校生から本格的に写真を始め、卒業後も写真を続けていきたいと思うようになりました。今後も、写真であれ、文章であれ、表現をすることをやめずにいたい、多くの方の心に響く何かを届けられるような人になりたいと思います。

 

(2020年1月取材/広報グループK)

【お問い合わせ先】

広島大学広報グループ

TEL: 082-424-6762
E-mail: koho*office.hiroshima-u.ac.jp
(*は半角@に置き換えた上、送信してください)


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