令和5年度 秋季学位記授与式

学長式辞 令和5年度秋季学位記授与式 (2023.9.20)

 本日、学位記を受けられる318人の卒業生、修了生の皆さん、誠におめでとうございます。令和5年度の秋季学位記授与式を挙行するにあたり、広島大学を代表して心よりお祝いを申し上げます。

 特に海外からの留学生の皆さんにおかれては、異なる文化、言葉、生活習慣に戸惑われ、不安などを抱えながらも、学業に専念されるなど、多大な努力をしてこられました。心から敬意を表するととともに、拍手を送ります。同時に、ご家族や友人をはじめ、皆さんを支えて下さった多くの方々への感謝の気持ちを忘れずにいただきたいと思います。

 今、皆さんの胸には、広島大学で過ごされた日々が、走馬灯のようによみがえっているのではないでしょうか。新型コロナウイルスの流行により、大きく制限せざるを得なかった大学での学びや生活。すでに1年半も続くロシアによるウクライナ侵攻に、心を痛めている方も多いことでしょう。

 そんな中、本年5月に広島でG7サミットが開催されました。初めての被爆地での開催に加え、ウクライナのゼレンスキー大統領の突然の参加などもあって世界の注目を集めました。サミットの成果をめぐってはさまざまな評価がありますが、「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と本学の雑賀忠義(さいか・ただよし)名誉教授が揮(き)ごうした原爆慰霊碑に各国首脳がそろって花輪をささげ、被爆者の声に耳を傾けて核兵器の悲惨さを直接、肌で感じてもらえたことに、私は一縷(いちる)の希望を見いだしています。

 本学では、G7広島サミットに対し、おもてなしや通訳などに学生の皆さんがボランティアとして多数参加したほか、さまざまなイベントを主催したり、関連行事へ協力・支援したりしました。広島大学に脈々と流れている「平和を希求する精神」を、広く世界に示すことができたと考えております。

 2015年の学長就任以来、私が力を入れてきたのは、平和と並んで、大学改革と国際化です。大学改革では11あった大学院の研究科を4つに集約し、さらにその4研究科が連携し分野を横断的に学べる研究院を設けました。異なる研究領域を学ぶことで視野を広げ、専門領域の研究をより深めることにつながっています。国際化では、海外派遣プログラムを充実させるとともに、東広島キャンパスに米国アリゾナ州立大学サンダーバードグローバル経営学部の広島大学グローバル校が開校しました。海外の大学の日本校誘致は、国立大学では前例のない取り組みとなりました。

 現在、本学には12学部、大学院4研究科、1研究院に約15,000人が学んでいますが、そのうち、留学生は、85カ国・地域から1726人を数えます。また、本学の海外拠点は、15ヵ国・地域に23拠点、大学間の国際交流協定数は56ヵ国・地域402協定に上っています。いずれも私の就任前の2.5倍に拡大しており、さらなる国際化に向かってチャレンジを続けていきます。

 皆さんは、今日から広島大学の同窓生となられます。昨年3月、インドネシアで、同国の同窓生らと、社会課題の解決や新価値創造などに取り組む新しい同窓会「広島大学校友会インドネシア・チャプター」を設立しました。今後はこういった新たな同窓会を国内外へ広げていきたいと考えています。皆さんの地域や母国で同様の活動が始まる際には、ぜひご参加ください。これからも同窓生の皆さんをしっかりサポートしていく所存です。

 18世紀のドイツの詩人ゲーテは、次のような言葉を残しています。「知ることだけでは充分ではない、それを使わないといけない。やる気だけでは充分ではない、実行しないといけない」。知識は使ってこそ価値があり、その知識を生かし実践することが肝要と説いています。広島大学で培った知識と教養は、皆さんが未曽有の難題にぶつかったとき、必ずや血となり肉となるはずです。

 広島大学は、来年の2024年に開学75周年、最も古い前身校である白島学校の創設から150周年の節目を迎えます。そのキャッチフレーズは「漕ぎ出せ 混沌の海に 走れ 創造の彼方へ」です。皆さんは広島大学で学んだことに誇りと自信を持って、「混沌の海」へ、そして「創造の彼方」に向かって果敢に挑んでいただきたいと思います。

 終わりに、「平和を希求し、チャレンジする国際的教養人」として未来へ歩まれる皆さんと手を携え、「100年後にも世界で光り輝く大学」を目指してまい進していくことをお誓いし、私からのはなむけの言葉と致します。
 

令和5(2023)年9月20日
広島大学長 越智光夫


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