視聴者からのQ&A

動画を視聴された皆さまからいただいた質問にお答えします。

「皮膚アレルギーはなぜ起こる?」 

IgE(体の中に異物が侵入した際に作られる抗体)を中和する治療薬とはどんなものでしょうか。

 オマリズマブという名前の薬で、現在、新型コロナウイルスでも話題になっている抗体と呼ばれる蛋白質の一種です。
 これを遺伝子操作技術で大量に生産し、薬として使うものです。4週間毎に皮膚に注射すると、体の中のIgEが中和されて働かなくなり、アレルギーを起こす原因物質(抗原)に曝されてもアレルギー反応が起こりにくくなります。

遺伝子検査をして生まれつきフィラグリン(皮膚の表面で作られ、皮膚バリア機能、保湿機能を担うたんぱく質)の量が少ないことが分かる、とのことですが、「どんな皮膚アレルギーなのか」などを判断する事はできますか。

 魚鱗癬という病気は、フィラグリンがうまく作れないことが原因であることが分かっていました。それが2006年にアトピー性皮膚炎でも高率に見つかることが報告され、以後、フィラグリンがうまく作れない、または作れても量が少ないことが、アトピー性皮膚炎の大きな特徴であることが分かりました。この遺伝子に異常があるとアトピー性皮膚炎になりやすくなりますが、必ずしもすべての人がアトピー性皮膚炎になる訳ではありません。また、今のところ、この蛋白質がうまく働かないことと他の皮膚アレルギーとの関係は明らかでありません。

ステロイド外用薬は、何年前からあるのでしょうか?

 ステロイドが初めて外用薬として用いられたのは1952年のことです。最初は比較的作用の弱いものでしたが、以後、次々と高い効果を持つお薬が開発されました。

「Th2というリンパ球が出す、フィラグリンの合成を抑制したり痒みを生じさせる物質に効果のある薬がある。」と説明していますが、どんな薬でしょうか。病院のみでの処方でしょうか。販売している場合、金額などを教えてください。

 リンパ球にはいくつかの種類があり、体の中における働きが異なります。Th2と呼ばれるリンパ球は、アレルギーの原因物質などにより刺激されると、いくつかTh2細胞に特徴的な物質を作って放出します。これらは2型サイトカインと呼ばれる複数の蛋白質よりなり、中でもインターロイキン(IL)-4、IL-13というサイトカインは、フィラグリンの合成を抑制したり痒みを生じるなど、アトピー疾患で見られる様々な反応を引き起こします。私が紹介した治療薬は、このIL-4とIL-13が結合する受容体と呼ばれる蛋白質に結合して、IL-4とIL-13が結合することを防ぎます。その結果、多くのアトピー性皮膚炎の痒みや皮膚炎が劇的に改善します。

 難点は、2週間毎に何ヶ月もの間注射し続けることが望ましいことと、その費用です。初めの3回を病院で打ってもらって自分で打てるように指導を受けると、以後は自宅でも打てるようになりますが、1回の注射が3割負担で2万円あまりかかります。多くの患者さんは、高額療養費の助成制度を使って負担軽減を受けておられます。この治療は一定の要件を満たした医療機関でのみ受けることが可能です。詳しくは、各医療機関のホームページなどでご確認ください。

 

回答者:

 秀 道広 広島市立広島市民病院 病院長(2021年4月~)(元医学部・医系科学研究科 教授)


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