第25回 薬剤師か?研究者か?薬学に没頭し、進路を模索中!

薬学部6年 荻野 龍平(おぎの りょうへい)
<兵庫県立星陵高等学校出身>

等身大の広大生の声を入学希望の方にお届けするコーナー『広大生の生の声』。第25回は、兵庫県立星陵高等学校出身の薬学部6年・荻野 龍平(おぎの りょうへい)さんです。

薬剤師国家試験に向けて勉学に励むかたわら、陸上部での練習にも力を注いでいる荻野さん。薬学部で充実した日々を送る荻野さんに、受験時代や広大の授業などについてインタビューしました。

なぜ広島大学を選んだのですか?

センター試験の点数が決め手の一つです。センター試験の結果を踏まえて、二次試験の配点比率が大きかった広島大学を選びました。また、広島大学は出身地の兵庫県から比較的近いことも後押しとなりました。

では、薬学部を受験しようと思ったきっかけは?

薬学部に進学しようと決めたのは中学3年生の時でした。両親が福祉関係の仕事をしている影響で、当時は福祉・医療分野に興味がありました。その中で、得意だった化学が生かせて、なおかつ福祉や医療に近い薬学が自分に向いているかなと思い、薬学部を目指すようになりました。実は昔から、薬がうまく飲めなくて嫌いだったんです。それをなんとか改善して、人の役に立ちたいなとも思っていました。

薬学部では「薬学科」と「薬科学科」がありますが、研究者を育成する薬科学科ではなく、薬剤師を養成する薬学科を選んだ理由を教えてください。 

研究職にも憧れはありましたが、薬剤師免許を持っていた方が将来の選択肢が広がるなと思い、薬学科を選択しました。

受験の準備はいつごろから始めましたか? 

部活を引退した高校3年生の7月からです。9月まで試合に出ていましたが、7月から受験を意識して勉強を始めました。

予備校や塾には通っていましたか? 

いいえ。予備校や塾に通わず、家や学校の自習室で勉強しました。僕は、書くだけでは覚えられないタイプ。声に出しながら覚えることが多かったです。周りに人がいる環境だと、声は出せないので、ほとんど家で勉強していました。

受験勉強で大変だったことは何ですか? 

「やる時はやる、休む時は休む」という姿勢でずっと勉強していたので、受験勉強がつらいとはそんなに思っていませんでした。でも、センター試験前は、ご飯が食べられなくなったり、お腹が痛くなったりして、精神的に参っていました。自分でも驚きましたし、落ち込みました。母に不安な気持ちを聞いてもらい、なんとか乗り越えることができました。

受験時代を振り返る荻野さん

実際に広大へ入学してみていかがでしたか? 

広島大学は総合大学。3つのキャンパスに11の学部が集まっているので、学生数がとても多いです。医学、歯学、薬学が全て揃っている大学なので、霞キャンパスにいるだけでも、さまざまな分野の人と知り合うことができるのが良いですね。また、サークルなど授業以外の活動で、他学部の学生と交流する機会も多いですよ。

現在はどんな研究をしているのですか? 

松尾裕彰先生の病院薬剤学研究室で、食物アレルギー関連の研究をしています。研究室では、学生と先生の距離がかなり近く、和気あいあいとした雰囲気です。広大薬学部の学生数は1学年全体で60人と少なく、研究室に配属されるのは1学年あたり多くて5人、少なくて2人です。人数が少ないぶん、コミュニケーションがとりやすいです。実験がうまくいかない時などに相談しやすい環境なので、恵まれていると感じますね。

薬学科は6年制ですが、薬学科の6年間について教えてください。

1年生の授業は教養科目が中心です。英語以外の教養科目を履修します。僕の時はほとんど東広島キャンパスで教養科目を受講しましたが、今年から基本的には東千田キャンパス、2ターム目と3ターム目は半分が東広島キャンパスで行われます。

2年生の前期から専門の授業が始まります。授業は午前中しかないのですが、内容が難しくて、しんどい日も多かったです。

2年生の後期と3年生の前期は、午前に授業、午後は基礎実習があります。基礎実習の授業では、レポートの書き方や、基本的な実験方法などを学びます。

3年生の後期になると、研究室に配属され、卒業論文の研究がスタートします。授業が全くない日も出てきます。授業がない日は研究室で研究の基礎について勉強したり、個々に与えられたテーマで研究したりします。

4年生になると、授業は少なくなります。4年生の後期に全国の薬科大学・薬学部が共通で利用する「薬学共用試験」と呼ばれる評価試験があるので、その試験に向けて勉強します。薬学共用試験には、オスキー(OSCE)という技能と態度を評価する試験と、シービーティー(CBT)という知識評価の試験があり、薬学共用試験に合格しないと、薬学実務実習に行けません。その試験のための勉強と卒業研究を両立させるため、忙しい時期でもあります。

5年生になると、病院と薬局で各11週間の薬学実務実習があります。実習を終えないと薬剤師国家試験の受験資格を取得できません。薬局での実習時には、指導薬剤師の先生にとてもお世話になりました。すごく情熱的で丁寧に指導してくださいました。実習中は毎日レポートを書いて提出するのですが、先生は毎回そのレポートに長いメッセージを書いてくださいました。

そして、6年生の現在は、卒業論文に向けた研究と、薬剤師国家試験に向けての勉強がメインです。薬学科の卒論発表会は12月にあり、国家試験は2月下旬か3月上旬にあります。卒論発表が終わってから、国家試験の勉強を追い込んでする予定です。

今、国家試験のためにどんな対策をされていますか?

薬剤師の国家試験は全体の65%以上の得点を取ると受かることができるという方式です。試験内容は必須問題、薬学理論問題、薬学実践問題からなり、必須問題は7割取らないと、他の問題でどんなにいい点数をとっても不合格になります。かなり難しいですね。

今は「青本」と呼ばれる参考書を中心に勉強しています。青本は、全部で10冊あり、約7,000ページにもなります。「どの薬がどの受容体にくっついて、どのような作用を起こすか」、「こういう症状の時にはどのような病気が考えられるか」など7,000ページ分の内容を覚えないといけません。

高校で習う物理・化学・生物の内容からはかなり発展していますが、繋がっているものもあるので、基礎がやっぱり大事だと思います。基礎をしっかりと理解しておくことが、強みになると思います。

「青本」を開き、国家試験の対策を語る荻野さん

これまでに参加した実習や行事で印象的だったものは?

一つは、「医学部・薬学部合同早期体験実習」です。1年生の夏休みに、医歯薬合同オリエンテーションキャンプで班を組んだ学生と一緒に、病院やリハビリテーションセンターに行って、それぞれどんな仕事をしているのかを見学する実習です。1年生という早い時期に、チーム医療に対する具体的なイメージができました。

また、「患者志向型合宿勉強会」も印象的でした。3年生の夏休みに二日間の日程で行われるのですが、薬害被害に遭われた方々と直接にお話する機会があります。薬害について事前に調べたことと、薬害被害者の方から実際に聞いた話の相違点をまとめます。自分たちの班のテーマは「陣痛促進剤」でしたが、相違点が多く、貴重な学びとなりました。

そして、薬学部では、アメリカの大学へ毎年学生を派遣しています。一方、留学生の受け入れもあり、僕はほんの少しだけ留学生のサポートをしました。外国の方と話す機会に緊張しました。

部活はしていますか?

陸上をやっています。普段は霞キャンパスの陸上部で活動しており、土曜日は東広島キャンパスの陸上部で練習しています。薬学系の学生が参加する「全日本薬学生対抗陸上競技大会」で、昨年も今年も男子走高跳、走幅跳、三段跳で1位、高跳びは3連覇しました。

部活の試合風景

「全日本薬学生対抗陸上競技大会」での集合写真

それでは、将来の夢を教えてください!

来年から研究員になり、4年間研究を続ける予定ですが、将来はこのまま研究を続けるのか、薬剤師になるのか、今はまだ迷っているところです。研究の世界も魅力的ですが、「地域の人々に貢献できる薬剤師になりたい」という夢もあります。

昨今、「かかりつけ薬剤師制度」が話題になっています。患者さん自身が、信頼できる薬剤師を選び、自分が服用している薬のことを把握してもらい、何かあった場合に相談や適切なアドバイスを受けることが可能な制度のことです。もし薬剤師の道を選ぶとしたら、この制度にしっかり対応できる薬剤師になって、地域の人々に貢献したいです。

最後に、広大への入学を考えている後輩に向けてメッセージを!

広大の入試は、ひねった問題を出すよりは基礎を重視しているように思います。しっかり基盤を固めておくことが大事ですよ。一見ひねった問題のように見えても、実は基礎の理解を確認するための「山」がたくさん連なっているのです。基礎を一つ一つ押さえていけば、解答が見えてくるはずです。

2016年6月21日 記事・写真/広報グループ(G、F)
取材場所/歯学部チュートリアル室、薬学部実験室


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