第26回 社会問題を“伝える人”になる

等身大の広大生の声を入学希望の方にお届けするコーナー『広大生の生の声』。第26回は、筑紫女学園高等学校出身の教育学部4年・岩永 奈々恵(いわなが ななえ)さんです。

小学校教員を目指して教育学部に入った岩永さん。授業や教育実習を通して、教養と専門性を深める一方、学生ボランティア団体OPERATIONつながりの代表を務めるなど、キャンパスを飛び出した活躍も光ります。広大に引かれた理由、汗と涙の教育実習、大学生活で挑戦してきたことなど、岩永さんならではの“生の声”をお楽しみください。

岩永さんは、福岡の出身なんですね。

はい。福岡県の筑紫女学園に通っていました。実は、中学生の頃から「広大に行きたい!」と思っていたんですよ。

中学生!そんなに早くから大学のことを考えていたんですか?

中高一貫の学校だったので、私の場合、高校受験はありませんでした。その代わり、「大学どうする?」という話は中学の時からちょこちょこあって。「小学校の先生になりたい!」と先生に相談したら、「教育学部なら、やっぱり広大よね」と。それから自分で調べて、広大を意識し始めました。

中学や高校ではなく、小学校の先生になりたかったのには何か理由が?

小5の時にお世話になった先生がとても人間味のある方で、かなり影響を受けました。その先生は自身の失敗や挫折した経験をよく話してくれて、「もっとこの先生から教わりたい」という気持ちが日に日に高まったのを覚えています。もちろん、中高でも先生には随分と恵まれましたが、その時のインパクトが強かったのかなと思います。

また、私はいろんなことに関心を持つタイプ。1つの教科を専門にするのではなく、全教科教える小学校の先生の方が自分らしいかなと考えていました。

過去の出会いを振り返り、笑顔の岩永さん

広大を受験するのにあたって、広大の何に一番引かれましたか?

キャンパスの雰囲気ですね。広くて緑がきれいで、大きな庭園に来たような感じが好きです。初めて来たときは「ちょっと田舎だな」と正直思ったのですが、「アメリカの大学はこんな感じなのかな?」と自分の中でいいように解釈しました(笑)。その後、他大学にも何校か見学へ行きましたが、やっぱり広大の環境で4年間過ごしたいなと思いました。

それと、学部の数が多いのも魅力的でしたね。同じ志だったり、似たような考えを持ったりしている人たちと接するだけだと、視野が狭くなっちゃうかなと心配していました。だから、なるべく学部も学生数も多い大学の方が良くて。「“教育”を専門的に学べて、個性豊かな“人”にたくさん出会える」これを満たしてくれるのが広大だったのです。

さて、それでは受験時代の話を聞かせてください。広大対策で苦労したことは?

二次試験の英語、特に自由英作文です。英語自体は1・2年生の頃から力を入れて勉強していたので苦ではなかったのですが、英作文を書くことに慣れてなかったので、3年生の夏くらいから本腰を入れて対策を始めました。過去問や広大オープン模試を見て、英作文を書いて学校の先生に繰り返し添削してもらいました。はじめの頃は、辞書を見ながら書きあげるのがやっと。英作文対策の参考書を買って使える表現を覚えつつ、先生からの指導で言われた「一般性を出すように論ずる」を意識して添削を繰り返すことで、少しずつ自信がついてきました。

 

広大の傾向を押さえて勉強していたんですね!その他の科目も計画的に進めていたのですか?

いいえ。細かい計画を立てるのが苦手で(笑)。全ての教科を毎日少しずつ進める学習スタイルは集中力が続かず、自分に向いてなかったんです。だから、わたしはシンプルに、「今日は英語の日」「明日は日本史の日」といった感じでザックリと決めて勉強していました。体育祭ではチアリーディングに熱を入れるなど、青春も忘れていませんでした。私のクラスは文系の人が少なく、他に広大を目指す人もいなかったので、周りに左右されず自分のペースで勉強できていたのが良かったのかなと思います。

次は広大入学後の話を聞かせてください。イメージしたキャンパスライフは送れていますか?

イメージ以上です!キャンパスの中でも、外でも本当に多くの人と出会い、学びました。私の所属している初等教育教員養成コースは、入学後に6つのゼミに自動的に分かれます。1つのゼミは約30人。ちょうど高校のクラスみたいな感じで、和気あいあいとしています。多分、他の大学だとサークルに入って友達作るのだと思いますが、私の場合は自然と友達がどんどん増えていきました。小学校の先生になりたいって人の集まりなので、「人好き」「おせっかい好き」な人が多いせいもあるかもしれませんね。

また、現在はひろしま国際プラザに入居している外国人留学生10数人と、共同生活をしています。レジデンスアシスタントとして、留学生が心地よい生活を送れるようにコミュニケーションしながら、彼らをサポートするのが私の役割です。キャンパス内だけでなく、家に帰ってもグローバルな環境を日々楽しんでいます。

入居している留学生と開いた「ワールドクッキングパーティー

教育学部というと、教育実習に行くイメージがありますが、岩永さんは経験しましたか?

はい。3年生の9月~10月の5週間、広大附属三原小学校へ教育実習に行きました。小学校実習は、国語・算数・理科・社会・家庭・図画工作・音楽・体育、その他道徳、外国語活動、総合的な学習の時間、特別活動を含め全教科の授業をします。生徒が興味を持つ授業にしたいと試行錯誤を繰り返すのですが、授業数が多く、涙が出るくらいハードな日々でした。

実習で使った教科書とファイルの一部を眺める岩永さん

印象に残っている授業やシーンはありましたか?

そうですね、社会科は頑張ったと思います。自分自身が苦手だったから(笑)。「自由民権運動」についての授業では、さまざまな工夫をしました。挿絵の全体をいきなり見せず、一部分を少しずつ見せたり、歴史上の人物になりきって演じてみたり。生徒の「これは何?」「どういうこと?」という気持ちを引き出すことを心がけました。担当の先生にも「いい授業だったよ」と褒めてもらえたので、特に印象に残っています。

授業で使用した教材。生徒への見せ方や出すタイミングを考慮して授業を作ったと話す岩永さん。

岩永さんは、学生ボランティア団体OPERATIONつながりの代表として、学外でも活躍されていましたよね?その活動についても聞かせてください。

最初は「人のために尽くす」という思いはそんなに強くありませんでした。近くにいた先輩がOPERATIONつながりのメンバーだった縁で、「せっかくだから新しい挑戦をはじめてみようかな」くらいの気持ちで入りました。

私は宮城、栃木、熊本へ行き、復興のお手伝いを経験しました。仮設住宅に住む方々にアポを取り、交流会を開催したり、「困っていることはありませんか?」と声かけをしたり。また、広島土砂災害が起きた際には、社会福祉協議会からの要請でボランティアセンターの運営を行いました。さらに、復興支援以外にも、イベントもいくつか企画して開催しましたよ。

栃木県鹿沼市災害ボランティアセンターで行われた報告会の様子

例えば、どんなイベントですか?

日本人学生と留学生がいっしょになって「平和」について考えるワークショップ、被爆体験伝承者をお招きして「戦争や平和」について意見交換をする会、JICA(国際協力機構)とコラボして広大生に海外を身近に感じてもらうイベント…etc. 今は、東広島キャンパスがある地区の住民の方や企業と学生をつなげて、地域を盛り上げられないか企画中です。

「平和」について考えるワークショップで司会をする岩永さん

ワークショップでは模造紙に意見を書き出し、ディスカッションしました

東広島キャンパスがある下見地区の夏祭りでの1コマ

すごい行動力ですね!本当に頼もしいです。もともと何かを企画するのが好きだったのですか?

そんなことはないです。大学に入ってからですね、積極的行動するようになったのは。一つやってみると、「意外にできる!」って感じたんです。もちろん、周りの方のサポートがあってこそですが、企画して、動いて、その結果、人がつながっていくのがすごく楽しいですね。また、チームとして動くことの大切さを痛感しました。大学っていうと、個人でガツガツ専門的な研究をしていくイメージがあったのですが、授業もゼミもサークル活動も、一人では成り立ちません。全部チームとして動いているんだ!というのがわかってきました。

進路は決まりましたか?

はい、NHKのディレクター職に内定をいただきました。これまで小学校教員を目指してきたので、結論を出すまでにかなり悩みました。授業やサークル活動を通して、社会問題への関心がだんだん強くなっていました。だから「社会問題に関われる仕事って何だろう?」という視点で、一からじっくり考えてみたんです。「社会問題を実際に解決する立場の人になる」「解決するための教育をする人になる」など、さまざまなアプローチがあることに気が付きました。そして、「社会問題を伝える人になる」というのが私の出した結論です。

最後に、未来の広大生へメッセージをお願いします!

高校生の時の私は「絶対先生になりたい!」と思っていました。入学後も知れば知るほど教育の魅力にハマり、教員への憧れも強くなりました。でも、実際には教員にはならない選択をしました。「本当にこれでいいのかな?」「他にも何かあるんじゃないかな?」と立ち止まって考えられる時間が大学生にはあります。大学生活は出会いと発見の連続。それらの機会を生かして、“なりたい自分”の答えを見つけてくださいね。
 

2016年7月20日 記事・写真/広報グループ(i、K)
取材場所/la place(マーメイドカフェ広島大学店)


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