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[研究成果]らせん結晶構造を持つ磁石のひねりの数を制御・検出に成功 ~電子デバイスのメモリー密度の飛躍的な向上が期待~



JST戦略的創造研究推進事業において、広島大学大学院理学研究科/キラル物性拠点の井上 克也 教授、大阪府立大学 工学研究科の戸川 欣彦 准教授らは、キラル(対掌性)な磁石単結晶において、数十から数百もの多段階のらせんのひねり構造が現れ、それらを電気的に検出できることを 発見し、12月15日に文部科学省記者会見室で記者説明会を開催しました。

説明する井上教授 記者説明会の様子

【本研究成果のポイント】

1、現在使われている電子デバイスでは、「2進法」に基づいた情報処理を行っている。

2、らせん状の結晶構造を持つ磁石でひねりの数を自在に変化させることで、1つの磁石に多数の情報を埋め込むことに成功した。

3、巨大な情報処理能力を持つ磁気メモリーや磁気センサーなどへの応用が期待される。

【概要】

従来の磁気メモリーや磁気センサーなどの磁石を用いた電子デバイスでは、磁石の向きを利用して“0”と“1”の「2進法」に基づき電気的に情報処理を行っています。本研究では、キラルな結晶構造をもつ新しい磁石で、磁場の強さを変更すると、らせん構造のひねりの数を段階的に1つずつ変えることができ、一つの磁石に多数の磁気情報を埋め込むことに成功しました。さらに、らせん構造がほぐれる様子を、電気信号の変化として検出することに成功し、これまでにない多進数情報を制御できる磁石を実現しました。このような「多進法」による情報処理が可能となれば、磁気メモリーや磁気センサーなどの電子デバイスの情報処理量やメモリー密度が大幅に向上する可能性があります。



本研究成果は、2015年12月17日(米国東部時間)にアメリカ物理学会誌「Physical Review B(Rapid Communication)」のオンライン速報版で公開されました。





キラル磁気ソリトン格子の磁場依存性の模式図



本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。

●戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)

研究領域:「素材・デバイス・システム融合による革新的ナノエレクトロニクスの創成」研究総括:桜井 貴康 東京大学生産研究所 教授

研究課題名:カイラル磁気秩序を用いたスピン位相エレクトロニクスの創成

代表研究者:戸川 欣彦(大阪府立大学 准教授)

研究実施場所:大阪府立大学

研究期間:平成25年10月~平成29年3月

●日本学術振興会/科研費/基盤研究S

研究代表者:井上克也教授(広島大学 教授)

研究課題名:化学制御Chiralityが拓く新しい磁性

●日本学術振興会/頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム

研究代表者:髙橋雅英(大阪府立大学 教授)

事業名:ナノ材料科学における国際的研究コアの形成

●日本学術振興会/研究拠点形成事業/先端研究拠点型

日本拠点機関:広島大学/キラル物性研究拠点

日本側研究代表者:井上克也(広島大学 教授)

研究課題名:スピンキラリティを軸にした先端材料コンソーシアム

●文部科学省/研究大学強化促進事業事業

(事業経費の一部を大学が各インキュベーション研究拠点へ配分)

研究代表者:井上克也(広島大学 教授)

研究拠点名:キラル物性研究拠点





JSTはこの領域で、材料・電子デバイス・システム最適化の研究を連携・融合することにより、情報処理エネルギー効率の劇的な向上や新機能の実現を可能にする研究開発を進め、真に実用化しイノベーションにつなげる道筋を示していくことを目指しています。上記研究課題では、カイラル磁性体において固有に現れる“巨視的スピン位相秩序”を用い、スピン位相エレクトロニクスの創成に取り組んでおります。

【論文タイトル】

“Magnetic Soliton Confinement and Discretization Effects Arising from Macroscopic Coherence in a Chiral Spin Soliton Lattice”

(キラルスピン磁気ソリトン格子の巨視的コヒーレンスにより発現する磁気ソリトン閉じ込めおよび離散化効果)



【研究に関するお問い合わせ先】

広島大学 大学院理学研究科 化学専攻 教授

広島大学 キラル物性研究拠点 拠点リーダー

井上 克也(いのうえ かつや)

Tel:0824-24-7416、Fax:0824-24-7416

E-mail: kxi*hiroshima-u.ac.jp(注:*は半角@に置き換えてください)


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