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[研究成果]日米国際連携による希少がんの本態解明研究 十二指腸乳頭部がんの大規模ゲノム解読を実施 がんゲノムの「進化」も新たな手法で実証



【本研究成果のポイント】

・希少がんである十二指腸乳頭部がん(ファーター乳頭部がん)について、日米の国際連携により大規模なゲノム解読を実施。ゲノム異常の観点から、世界で初めて十二指腸乳頭部がんの本態解明が行われた。

・十二指腸乳頭部がんのゲノム異常を解明し、特徴的ながん関連遺伝子(ELF3)を発見。がんの運動能や浸潤能と関連するがん抑制遺伝子であることを明らかにした。

・組織・形態学的亜型分類に基づく解析の結果、腸型は大腸がんに、膵胆型は膵臓がんに類似したゲノム異常を有していることがわかった。

・十二指腸乳頭部がんの約半数に、治療標的となり得る遺伝子異常を検出。個別化治療への応用が期待される。

・十二指腸乳頭部がんの同一腫瘍内のがんゲノムの不均一性(Heterogeneity)と「進化」を実証した。

広島大学病院 病理診断科 有廣光司 教授、国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:堀田知光、東京都中央区、略称:国がん)研究所・がんゲノミクス研究分野の谷内田真一ユニット長らの研究グループは、希少がんである十二指腸乳頭部がん(ファーター乳頭部がん)について、世界で初めて全エクソン・シーケンス解析*1,2をはじめとする大規模ゲノム解読を行い、特徴的ながん関連遺伝子(ELF3)と治療標的となり得る遺伝子異常を同定し、さらに新技術の導入により同一腫瘍内のゲノムの不均一性とその「進化」を実証しました。

がんゲノムの「進化」とは、ダーウィン的理論にしたがい、発がんから治療に至る時間経過のなかでがん細胞が競合的選択に曝されることで自然淘汰され、抗がん剤が効かなくなる薬剤耐性を獲得するなど同一腫瘍内でも遺伝子異常を蓄積しながら変化し続けることです。

本研究成果は、米国専門誌「Cancer Cell」2月号の掲載に先行し、オンライン版にて公開されました。

【発表論文】

雑誌名:「Cancer Cell」2月号

タイトル:Genomic sequencing identifies ELF3 as a driver of ampullary carcinoma

著者:Shinichi Yachida(責任著者), Laura D. Wood, Masami Suzuki, Erina Takai, Yasushi Totoki, Mamoru Kato, Claudio Luchini, Yasuhito Arai, Hiromi Nakamura, Natsuko Hama, Asmaa Elzawahry, Fumie Hosoda, Tomoki Shirota, Nobuhiko Morimoto, Kunio Hori, Jun Funazaki, Hikaru Tanaka, Chigusa Morizane, Takuji Okusaka, Satoshi Nara, Kazuaki Shimada, Nobuyoshi Hiraoka, Hirokazu Taniguchi, Ryota Higuchi, Minoru Oshima, Keiichi Okano, Seiko Hirono, Masamichi Mizuma, Koji Arihiro, Masakazu Yamamoto, Michiaki Unno, Hiroki Yamaue, Matthew J. Weiss, Christopher L. Wolfgang, Toru Furukawa, Hitoshi Nakagama, Bert Vogelstein, Tohru Kiyono, Ralph H. Hruban, and Tatsuhiro Shibata

DOI:10.1016/j.ccell.2015.12.012

【用語解説】

*1<全エクソン・シーケンス解析>

全ゲノムのうち、エクソン配列のみを網羅的にシーケンス解析する手法である。ヒトゲノムのうち、全エクソンが占める割合はわずかに1〜2%に過ぎないが、エクソンはタンパク質に翻訳される領域であるために機能的に重要である。



*2<シーケンス解析>

ゲノムは染色体DNAの4種類の塩基 [アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)] 配列を合わせたものである。DNAの塩基配列を解読することをシーケンス解析、もしくは単にシーケンスという。ヒトゲノムはおおよそ31億塩基対のDNA にコードされる遺伝情報をもっている。

【お問い合わせ先】

広島大学病院 病理診断科 

教授 有廣光司

TEL:082-257-5590

E-mail:arihiro*hiroshima-u.ac.jp(注:*は半角@に置き換えてください)


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