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本研究成果のポイント
- 反応性の高い「アライン」1を、パズルのピースのように簡単に繋げることに世界で初めて成功しました。
- アリールスズ2の反応性評価法を確立し、「アライン」挿入分子数を当量(加える量)のみで制御しました。
- 今回開発したアリールスタニル化3は、機能性分子4の基幹骨格となる、オルト位連結芳香族化合物5–7の直接合成を可能とします。
概要
広島大学大学院工学研究科応用化学専攻反応設計化学研究室の吉田拡人准教授を中心とした研究チームは、「銅触媒8を用いたアラインの連続的アリールスタニル化反応」を開発しました。これにより、銅触媒存在下、アリールスズに「アライン」を順番に加えるだけで、「アライン」由来の芳香環をパズルのピースのように簡単に繋ぐことができます。通常、高い反応性を有する「アライン」の挿入分子数制御は非常に困難ですが、本反応では、「アライン」の当量のみで挿入分子数を精密制御できます。開発成功の鍵は、アリールスズの反応性評価法を確立できた点にあります。本反応は、機能性分子の基幹骨格である多様なオルト位連結芳香族化合物合成に役立つことが期待されます。
本研究成果は、英国王立化学会「Chemical Communications」オンライン版に掲載されました。
用語解説
1. アライン:
芳香環(芳香族化合物に含まれる環状構造)の炭素–炭素結合の一つが三重結合となった、短寿命化学種。
2. アリールスズ:
アリール基(Ar:芳香環のこと)とスズ(Sn)が結合した分子(Ar–Sn)。
3. アリールスタニル化:
今回開発した反応の名称。アリールスズにアラインを挿入させる反応。
4. 機能性分子:
特定の機能をもつ分子の総称。工業や医療の分野で幅広く用いられる。
5. 芳香族化合物:
ベンゼンを代表とする環状不飽和有機化合物。芳香族化合物は特別な安定性を有する。
6. オルト位:
芳香環において2つの置換基が隣り合う位置。
7. オルト位連結芳香族化合物:
芳香環がオルト位で連結した化合物。
8. 触媒:
化学反応において、それ自身は変化しないが、反応速度を変化させる物質。

図. 銅触媒を用いたアラインの連続的アリールスタニル化
論文情報
- 掲載雑誌: Chemical Communications
- 論文題目: Copper-catalyzed arylstannylation of arynes in a sequence
- 著者: Hideya Tanaka, Hitoshi Kuriki, Teruhiko Kubo, Itaru Osaka and Hiroto Yoshida*
*Corresponding author(責任著者) - DOI: 10.1039/c9cc02738f
- 報道発表資料(548.25 KB)
- 論文掲載ページ (Chemical Communicationsに移動します)
- 広島大学研究者総覧 (吉田 拡人 准教授)
- 広島大学大学院工学研究科応用化学専攻反応設計化学研究室ホームページ
広島大学大学院工学研究科応用化学専攻
准教授 吉田 拡人