本研究で対象としたSTAT1遺伝子の機能が過剰になる遺伝子変異(GOF変異)は、先天的な免疫の病気である慢性皮膚粘膜カンジダ症(CMCD)の主要な原因であることが知られています。STAT1-GOF変異を持つ患者では、真菌の仲間であるCandida albicans (C. albicans) に繰り返し感染し、治癒しにくいことが知られています。
また、C. albicans以外の病原体にも容易に感染すること、自己免疫性疾患を合併すること、一部の重症例の予後が不良であることが分かってきました。そのため重症患者に対して、その病態に基づいた、より安全で効果的な治療法の開発が現在求められています。
この度、小林正夫(広島大学大学院医系科学研究科小児科学名誉教授)、岡田賢(同講師)、玉浦萌(同大学院生)らのグループ、佐藤尚子、大野博司、古関明彦(理化学研究所生命医科学研究センター)らの研究グループ、中山学、小原收(かずさDNA研究所)らの研究グループは、STAT1-GOF変異(R274Q変異)を導入したノックインマウス(GOF-Stat1R274Qマウス)を樹立し、患者の病態解明に有用であることを示しました。GOF-Stat1R274Qマウスは、STAT1のリン酸化亢進、Th17細胞減少およびIL17産生低下、C. albicansの排除障害を認め、患者と同様の特徴を示しました。さらに、これらのマウスでのC. albicansの排除障害に、Th17分化障害が重要な役割を果たすことが明らかになりました。
本研究成果は、「International Immunology」に公開されました。
図: C. albicans感染後のIL-17産生およびRORγt発現の解析
GOF-Stat1R274QマウスではIL-17産生低下とRORγt発現低下を認めた。