本研究成果のポイント
自然界の4つの力のうち、素粒子原子核実験で見出された3つの力の強さと比べ、重力だけが特別に弱く、その物質との結合の強さは33桁以上乖離しています。重力に感度をもつ宇宙観測から、暗黒物質と暗黒エネルギーが宇宙全体のエネルギー密度収支の95%を占めていることがわかっていますが、これらの暗黒成分はこの乖離した未観測領域に潜んでいる可能性があります。本研究は、この未踏領域を埋められる革新的な観測手法を、科学史上初めて提唱しました。
概要
広島大学大学院先進理工系科学研究科の本間謙輔助教と同大学大学院理学研究科の桐田勇利大学院生は、現代宇宙物理学における最大級の謎である暗黒物質や暗黒エネルギーの源となり得る未知の軽い素粒子群を、2波長の光波から成る強力なレーダーを真空中で混ぜ合わせ、未知素粒子群を介した散乱を誘導することにより、直接的にそれらを生成・崩壊させる実験手法を精密に定量化しました。その上で、この観測手法が従来の素粒子観測手法の弱結合に対する感度を桁違いに更新し、重力よりも弱い素粒子結合領域にすらメスを入れられることを明らかにしました。本観測手法は、今後、宇宙の暗黒成分となり得る重力的に弱く結合する未知の軽い素粒子群を直に検証し得る展望を与えます。
本研究の成果は、欧州の科学雑誌「Journal of High Energy Physics」に掲載されました。
生成用と誘導用の2つのレーダー光波を同軸上で混合集光後、真空中で集光点の辺縁に生成された信号光波を超伝導デバイスで計数する実験セットアップの概念図。
論文情報
- 掲載誌: Journal of High Energy Physics
- 論文タイトル: Stimulated radar collider for probing gravitationally weak coupling pseudo
Nambu-Goldstone bosons
- 著者名: 本間謙輔1,2*、桐田勇利2
所 属: 1広島大学大学院先進理工系科学研究科、2広島大学大学院理学研究科
- DOI: 10.1007/JHEP09(2020)095
謝辞
本研究は、日本学術振興会科学研究費挑戦的研究(萌芽)「暗黒エネルギー源探索へ向けたGHz帯誘導共鳴光子衝突実験実現性の検証(課題番号:19K21880、研究代表者:本間謙輔)」、同新学術領域研究(研究領域提案型)「高強度レーザー場による誘導共鳴散乱を介したeV近傍質量域の暗黒場探索(課題番号:18H04354、研究代表者:本間謙輔)」、同基盤研究(B)「真空内四光波混合によるsub-eV暗黒場の高感度探索(課題番号:17H02897、研究代表者:本間謙輔)」、および、京都大学化学研究所共同利用・共同研究課題提案型研究(課題番号:2019-72、2020-85、研究代表者:本間謙輔)などの支援を受けて行われました。
【お問い合わせ先】
<研究に関すること>
広島大学 大学院先進理工系科学研究科 物理学プログラム
助教 本間 謙輔
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E-mail: khomma*hiroshima-u.ac.jp
(注: *は半角@に置き換えてください)
<報道に関すること>
広島大学 財務・総務室広報部広報グループ
TEL: 082-424-3749
E-mail: koho*office.hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)