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【研究成果】新型コロナウイルス検査をスピードアップする検体前処理自動機器の開発に成功~ヒトの手を借りない感染性検体の処理で検査の迅速化と精度をアップ~

本研究成果のポイント

  • あらゆる検査法の前処理工程の自動化を実現する「COVID19(※1)検査前処理自動機」の開発に成功しました。
  • 国内外のあらゆる検査(PCR(※2)検査、変異株解析)のスピードと検査精度を格段に上げることのできる自動機として期待できます。
  • 検体前処理スピードは、検体管理もしながら1検体あたり1分以内で処理することができます。

概要

広島大学大学院医系科学研究科・細胞分子生物学研究室 田原栄俊教授、疫学・疾病制御学 田中純子教授、ウイルス学 坂口剛正教授、移植免疫学・消化器外科学 大段秀樹教授、感染症学 大毛宏喜教授らの研究グループは、新型コロナウイルス検査のボトルネックとなっている検体の前処理の自動化を行う機器として、「COVID19検体前処理自動機」を開発しました。

今回の開発の成功は、国内外で毎日実施されているあらゆる新型コロナウイルス検査の前処理過程をスピードアップさせることができ、臨床検査技師の不足や検査精度管理などの観点からも、大きな社会貢献が期待される成果です。

本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)令和2年度ウイルス等感染症対策技術開発事業プログラム名: 実証改良課題「コロナウイルスを迅速・高精度に診断する自動機器に関する研究開発」より支援を受けている研究成果です。

背景

<ポイント>

  • 検査スピードのボトルネックは、検体の前処理工程が自動化されていないこと。
  • 検査センターに集められた検体は、手作業で検査チューブに移さないといけないので、高速化できない。
  • ヒトが手作業で行うので、検体取り違いやコンタミネーションなどのリスクがある。

全世界で新型コロナウイルスのパンデミックにより、感染者のスクリーニング検査として、膨大なPCR検査などが実施されています。感染性のある検体は安全キャビネット(※3)とよばれる設備で人が手作業で検査に必要な作業をする必要があるため、検査がスピードアップできないことが課題となっています。

新型コロナウイルスの検査の現場では、感染性の高い鼻咽頭スワブ、唾液、血液、糞尿などを扱う場合に、臨床検査技師の感染リスク、検体からの核酸精製やPCR検査を手作業で行うことによる検査精度管理が煩雑となる点が大きな課題でした。PCR検査の機器を増やしても、検体の前処理をスピードアップできないことが、検査の数を増やせないボトルネックだったのです。

そこで、本研究では、検査センターで受け入れた検体チューブをそのまま置くだけで、チューブをピックアップして、フタの開閉を行い、唾液等の検体を採取して検査チューブなどに移す作業が自動でできる機器の開発を行いました。

研究成果の内容

本研究は、人の手がかからない自動化を行うため、既存の機器を流用するのではなく、産業用オートメーションのメーカーであるフェスト株式会社(本社: 横浜市)の部品を用いた自動機開発を行いました。検体をある容器(例えば検査容器)から別の容器に移し替えることを分注といいます。検査に適した容器に移し替えることは、検査を行う上では必須の作業になります。

自動化においては、検体の分注のトラッキング(誰の検体をどこのチューブに入れたか)、自動での検体チューブの開栓と閉栓、自動での検体の分取と分注、検査プレートへの分注が可能なシステムを検討しました。検体のトラッキングは、バーコードリーダを導入しました。また、チューブに入っている検体の量を測定するデバイスも導入しました。チューブも下図に示すデバイスにより開栓および閉栓ができるシステムを導入しました。検体の分注は、自動ピペッターで、正確に検査に必要な検体を採取できるようにしました。検体のピックアップと分注作業などが並列で作動するようなシステムを構築して、1分未満で、一つの検体の分注できる検体前処理自動機を完成させました。クロスコンタミネーション(検体の汚染)が起こりにくい仕組みを導入して、検査のスピードとともに精度向上も実現しています。例えば、株式会社アスカネット(本社: 広島市)が開発した空中ディスプレイ(空中結像技術)を用いた検査制御システムを空中サブモニターASKA3D KC-W1で実現させて、クロスコンタミネーションが起こりにくい制御システムを導入しています。

検査システムは、検体前処理後のPCR検査を効率よく行うために、45検体を「検体前処理自動機」で処理を行い、その後アジレント社(本社: 米国サンタクララ)のBravo分注機で、PCR反応溶液を45検体同時に分注してPCR検査(約50分)を行うものです。これにより、検体前処理プロセスとPCR検査プロセスの時間を効率よく行えるシステムを作成することが出来ました。24時間作動させた場合、1080検体の処理を1日にできる「COVID19検体前処理自動機」を開発することに成功しました。

開発した自動機の自動化プロセス概要

開発した自動機の概要

今後の展開

「COVID19検体前処理機器」は、地方衛生研究所や民間衛生検査所での使用を想定して、安全キャビネット内にインストールして使用できるフォーマットでの開発に成功しました。今後、開発した「COVID19検体前処理機器」を安全キャビネット内に設置した形での実用化を予定しています。部品提供会社はグローバルでの部品提供を行っているため、グルーバルでの実用化も視野に入れています。

用語解説

(※1) COVID19
新型コロナウイルス感染症

(※2) PCR
ポリメラーゼ チェーン リアクションの略。遺伝子を増幅する技術

(※2) 安全キャビネット
新型コロナウイルスなどの感染性の高い検体などを封じ込め、安全な作業環境を実現する設備

【お問い合わせ先】

広島大学 大学院医系科学研究科

教授 田原 栄俊

TEL: 082-257-5290

E-mail: toshi*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)


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