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本研究成果のポイント
- 好熱性ホモ酢酸菌に代謝工学を適用することにより、二酸化炭素、合成ガス(※1)を材料としたアセトンの発酵生産に成功。
- 様々な化学原料として使われるアセトンを、廃プラ由来の合成ガスや、再生可能水素と二酸化炭素を原料として合成できるカーボンリサイクル技術。
- ガス発酵による生産と蒸留による回収を一体化したバイオプロセスを構築する基盤となる。
概要
広島大学大学院統合生命科学研究科の加藤淳也特任助教と中島田豊教授の研究グループは、好熱性の化学合成独立栄養細菌の一種を代謝工学により改変し、二酸化炭素や一酸化炭素を炭素源にアセトンを高効率で合成する菌の開発に成功しました。この菌はアセトンの沸点(56℃)よりも高い温度で生育するため、合成したアセトンは発酵生産と同時に蒸留可能です。
発酵生産において、培養槽に投入した基質は微生物により変換されますが、生産物の回収には培養液を回収し精製するプロセスが必要でした。また、培養液中に蓄積した生産物により微生物の生育が阻害されることは高生産プロセス構築において課題の1つです。本研究で開発した菌を用いて高温で発酵生産を行えば、培養を継続したままアセトンを蒸留により回収でき、プロセスを簡易化しつつも高い生産性を保持することが可能です。
本研究成果は国際科学誌「AMB Express」にオンライン掲載されました。
図1 ホモ酢酸菌およびアセトン生産改変株の代謝経路
図2 従来型発酵生産プロセスと蒸留一体型発酵生産プロセス
用語解説
(※1) 合成ガス:
一酸化炭素と水素を主成分とする混合ガスであり、化学原料合成の材料となる。有機廃棄物の高温処理などによっても製造されることから、廃棄物処理・リサイクルへの応用利用開発も進められている。
論文情報
- 掲載誌: AMB Express
- 論文タイトル: Metabolic engineering of Moorella thermoacetica for thermophilic bioconversion of gaseous substrates to a volatile chemical
- 著者名: Junya Kato, Kaisei Takemura, Setsu Kato, Tatsuya Fujii, Keisuke Wada, Yuki Iwasaki, Yoshiteru Aoi, Akinori Matsushika, Katsuji Murakami & Yutaka Nakashimada
- DOI: 10.1016/j.asd.2021.101046
【お問い合わせ先】
大学院統合生命科学研究科
教授 中島田 豊